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高山都の日々、うつわ。
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#19 花がくれるチカラ。

ふだんはなんとも思わない、日常に溶け込んだ風景。
それがあるとき、大きなチカラをくれる瞬間がある。

たとえば仕事がうまくいかず、自己嫌悪に陥ったとき。
近しい人に、思っているのと違うことを言ってしまったとき。
世の中にうっすらと不安な気配が漂っているときだってそう。

いつもと同じ部屋なのに、どことなく空気が重い。
そんなとき、私はいつも台所の窓辺に目をやる。
行儀よく並んだちいさな花瓶たち。
ほとんどが一輪挿しで、
帰宅途中に花屋で買い求めたものもあるし、
お祝いや打ち上げでいただいたものもある。

どれもさりげない花たちだけれど、
太陽の光を浴びて、すくっと立っている姿を見ると、
くよくよしてないで、今日も頑張ろうという気持ちになる。

#19 花がくれるチカラ。
#19 花がくれるチカラ。

部屋に花を飾るようになったのはここ数年のことだ。
仕事柄、お花をいただく機会が多いけれど、
20代、ちいさなワンルームに暮らしていたあの頃は
花瓶なんて持っていなくて、
せっかくのお花をすぐにダメにしていた。

自分で花を買って生けるのが楽しくなったのは、
やっぱりこの部屋の台所の存在が大きい。
朝はもちろん、夕方にも奇麗な光が入る窓辺は
同じ花でも時刻によって表情が変わって、とてもすてき。

面倒な洗い物の時間も、ふと顔をあげると
季節の花々が咲いていて、
それだけで心が躍ってしまうから不思議だ。

当然のことだけれど、花はいつか枯れてしまう。
それは裏を返せば生きている、ということ。
ささやかな一輪でも部屋に生命がある。
その気配はどこか心強くて、
折れそうになった心をそっと支えてくれる。

#19 花がくれるチカラ。
#19 花がくれるチカラ。

窓辺の一輪挿しは、自然とその数が増えて、
今では花瓶と花瓶の肩が触れ合ってしまいそうなほど。

好きな器屋さんや窯元へお邪魔すると
器の傍らにちょこん、とある一輪挿しが気になって、
いつもたまらず持ち帰ってしまうから。

ほかにも奇麗な形のジャムの空き瓶や、
アンティークの薬瓶なんかもあって、
花瓶の素材や形に合わせて花を選ぶのも楽しい。

最近の日課は、いいことがあった日に
一輪の花を買って帰ること。
それは私の元気のバロメーターみたいなものだ。

窓辺に花がある限り、楽しい日々は続く。
だから私は今日もささやかな「いいこと」を探して、
小さな花を買って帰るんだ。

#19 花がくれるチカラ。

今日のうつわ

文祥窯の一輪挿し

佐賀県に窯を持つ文祥窯は昔ながらの伊万里焼の技法を受け継ぐ数少ない存在。よく見ると釉薬(ゆうやく)の垂れや焼き加減による色ムラがあったりして、作り手の手触りを感じられます。上品で落ち着いた佇(たたず)まいはどんな花も受け入れてくれて、実もの、枝ものとの相性もいい。玄関やトイレなどにさりげなく置いてもすてきなサイズです。

(写真 相馬ミナ 構成 小林百合子)

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