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声優・田中敦子「やっと素子へ寄りかかれるようになった」攻殻機動隊最新作『SAC_2045』へ込めた思い

きっとみんな、草薙素子に恋してる――。

2020年4月23日、アニメ『攻殻機動隊』の最新作が幕を開ける。Netflixオリジナルアニメシリーズ『攻殻機動隊 SAC_2045(以下、SAC_2045)』だ。日本を代表するアニメーション監督である神山健治さんと荒牧伸志さんの2人が“ダブル監督”を務め、気鋭のクリエーターであるイリヤ・クブシノブさんがキャラクターデザインを手掛けた。さらに、アニメーションをフル3DCGで表現。“シリーズ初”となる要素がふんだんに詰めこまれている。

そんな中、変わらない要素もあった。“公安9課”を演じるキャスト陣だ。2002年よりTV放送が開始された神山健治監督による『攻殻機動隊S.A.C.』シリーズのオリジナルメンバーが、再び集結した。

25年以上、主人公の草薙素子を演じてきた声優の田中敦子さんは、今作のオファーを振り返り「また、私のところに素子が戻ってきてくれた」と笑顔を見せた。

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草薙素子を演じる安堵感と緊張感

『SAC_2045』制作決定が発表された時点で、キャストは明らかになっていなかった。新作の情報が少しずつ流れてくる中、田中さんは、アフレコ現場がよく一緒になるという『S.A.C.』オリジナルメンバーの大塚明夫さん(バトー役)、山寺宏一さん(トグサ役)と3人で「今回の公安9課は、私たちじゃないよね、きっと」と言葉を交わしていたそうだ。

キービジュアル第1弾

キービジュアル第1弾(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

田中さんは、公開されたイリヤさんの絵を見た瞬間に「私はキャスティングされないだろうな」と思ったという。

「キャスティングされる前にイリヤさんの描く素子を見ました。とてもキュートで、若さを感じる素子が、本当に素晴らしい。半面、この素子だと自分の声ではないだろうなと、演じることを半ば諦めていました」

だが、この予想は、良い方向に裏切られることになった。オファーが来たときのことを「安堵(あんど)感と緊張感があった」と田中さんは振り返る。収録が始まるまで、そして始まってからの気持ちを教えてくれた。

「素子を演じられることは、素直にうれしくて。ただそれと同時に、感じたプレッシャーも大きかった。でも、現場で神山監督から『またよろしくお願いします』と言っていただいたとき、ふっと緊張が解けました。また神山監督のもとで作品づくりができるんだというワクワク感が勝るようになりました。これまでご一緒してきた公安9課の声を務めるみなさんは、頼れる先輩ばかりです。先輩方に寄りかかって、私なりに素子を表現すれば、きっと受け取って返してくださるだろうと。不安な気持ちはなくなりました」

“新しい”からこそ、“いままで通り”に

昨夏から『SAC_2045』のアフレコ(出来上がった映像に後から音声や効果音を追加する作業)がスタートした。この時点ですでに8割程度のアニメーションが完成していたという。本作はフル3DCGアニメにモーションキャプチャー技術を採用している。そのため、アフレコは、動作を演じた役者の声が入った映像を見ながら行われた。

アニメのアフレコは、まだ絵がない状態で収録が先に行われることも多い。その場合、声優は、見ている画面上にキャラクターの名前が表示されたタイミングで声を当てる手法が使われている。しかし、『SAC_2045』では映像がほぼ完成した状態での収録となった。田中さんは、これまでの洋画や海外ドラマの吹き替えの経験から、素子の“動き”を演じた役者が出した声を聴きながら演じたそうだ。

「画面に素子が映っていないシーンで声を出し始めるタイミングを計るために、聞こえるか聞こえないかくらいの音量でモーションキャプチャーの役者さんの声を聞きながら収録しました。外国映画の吹き替えには慣れていますが、本作は英語ではなく日本語が聞こえてきます。お芝居に引っ張られないように気をつけました」

『SAC_2045』の素子を演じる上で、田中さんが最も重要視したのは「これまでの素子のイメージを崩さないこと」だった。本作は監督、キャラクターデザイン、CGアニメーションなど新しい要素が多いからこそ、声だけはあえて「いままで通り」を選んだ。

「新しい試みがたくさんされている作品で、『S.A.C.』シリーズのオリジナルメンバーがキャスティングされた意味をとても考えました。そして、“素子は素子のままでいい”、そんな意味が込められているのでは、と思ったんです」

声優・田中敦子「やっと素子へ寄りかかれるようになった」攻殻機動隊最新作『SAC_2045』へ込めた思い

左からバトー(cv.大塚明夫)、草薙素子(cv.田中敦子)、トグサ(cv.山寺宏一)(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

ただ、『SAC_2045』では、一つだけ変えた演じ方があったそうだ。それは、アクションシーンでの掛け声だ。

田中さんは、押井守監督による『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(以下、『GITS』)から25年以上一貫して「息づかいを感じさせない」ことを心がけてきた。それは、主人公の素子は、ナノマシンを使って“電脳化”された脳以外は、すべて機械で作られた身体(義体)のサイボーグであることを表現するためだ。生身の人間では不可能な速度で走るシーンや、激しいアクションシーンでも、極力息づかいの音は出してこなかった。そこを変えたのはなぜか。

「今回、3DCGアニメになったことから、視聴者の方は2Dアニメと実写映画の中間くらいの感覚で見るだろうと考えました。そこで、あえてアクションシーンに掛け声を入れるようにしたんです。そこは、これまでの素子とは違う一面が見られるかもしれません」

「背負うのではなく、寄りかかれるようになった」

全身が義体である素子。見た目は若いが、内面は非常に達観している。そんなキャラクターを演じるのは、そう簡単ではないだろう。田中さんは、『GITS』の収録が行われた1994年当時を振り返り「一生懸命素子を演じようとしていた」と話す。草薙素子、そして『攻殻機動隊』という作品を背負うことへのプレッシャーも大きかったそう。それから25年以上が経った今、素子を演じることへの心境について尋ねると、田中さんはうれしそうにこう答えてくれた。

「『GITS』『イノセンス』『S.A.C.』ハリウッド版『ゴースト・イン・ザ・シェル』を経て、いまやっと素子との溝が埋まってきたと感じています」

最初に『GITS』で素子を演じることになったとき、田中さんは押井監督から「世の中を達観した女性」を演じるよう指示されたそうだ。この言葉を意識し続けながら、『GITS』とは違う視点で素子が描かれた『イノセンス』や、もう少しメンバーが若く、熱血漢である公安9課が登場する『S.A.C.』など、作品ごと、監督ごとに少しずつ異なる素子を演じてきた。その結果たどり着いたのが先述の境地だ。

「素子と比べたら、まだまだ世の中を達観して上手に生きられません。だけど、年齢が上がって、いろいろな経験が積み重なってきた分、やっと、素子を背負うのではなく、寄りかかって演じられる。今回は、そう思えるシリーズになりました」

14年ぶりの公安9課メンバー、見どころは「全部」

『GITS』から25年以上、ずっと素子と歩んできた田中さんは、「私にとって、『攻殻機動隊』という作品、そして、草薙素子というキャラクターは本当に大きな存在で、いまの自分があるのも、素子を演じることができたからだと思っています」と語る。

そんな田中さんの最新作『SAC_2045』に対する思い入れはひとしおだ。本作の見どころを伺うと一瞬考えた後「全部です!」と言い切った。

草薙素子とタチコマ(cv.玉川砂記子)

草薙素子とタチコマ(cv.玉川砂記子)(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

これまで、近未来を舞台に、さまざまな社会問題をテーマに、物語を紡いできた『攻殻機動隊』シリーズ。今作でも、「持続可能な戦争(サスティナブル・ウォー)」が起きている2045年の世界で、神山監督と荒牧監督が新しい映像表現で公安9課のメンバーを活躍させる。その内容について、田中さんは「さまざまな時代を切り取っている」と感心している。

いままでにないキュートさを含むイリヤさんのキャラクターデザインと、リアリティーにあふれる3DCGの映像表現が組み合わさり、2006年の『S.A.C.』シリーズの直近作品から約14年ぶりにオリジナルメンバーが声を演じる。確かに、“全てが見どころ”と言っても過言ではないだろう。

田中さんは今作で再び素子を演じられる喜びを嚙(か)みしめながら「私は素子に出会った瞬間から一目ぼれしていた」と話す。それは、『攻殻機動隊』シリーズのファンすべての心の声を代弁しているようだった。

「『攻殻機動隊』が老若男女問わず愛され続けてきたのは、きっと私と同じようにみんな素子に恋してるからだと思います」

『SAC_2045』を見た人は、きっとまた、草薙素子に恋をするに違いない。

(文・阿部裕華)

プロフィール

声優・田中敦子「やっと素子へ寄りかかれるようになった」攻殻機動隊最新作『SAC_2045』へ込めた思い

田中敦子(たなか・あつこ)
11月14日生まれ。群馬県出身。マウスプロモーション所属。主な出演作に「攻殻機動隊シリーズ」(草薙素子役)、「Fate/stay nightシリーズ」(キャスター役)、「BAYONETTA BLOODY FATE」(ベヨネッタ役)など。アニメ作品だけでなく海外作品の吹き替えにも数多く携わる。

『攻殻機動隊 SAC_2045』作品情報

声優・田中敦子「やっと素子へ寄りかかれるようになった」攻殻機動隊最新作『SAC_2045』へ込めた思い

(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会

<キャスト>
草薙素子:田中敦子/荒巻大輔:阪 脩/バトー:大塚明夫/トグサ:山寺宏一
イシカワ:仲野 裕/サイトー:大川 透/パズ:小野塚貴志/ボーマ:山口太郎/タチコマ:玉川砂記子

<スタッフ>
原作:士郎正宗「攻殻機動隊」(講談社 KCデラックス刊)
監督:神山健治 × 荒牧伸志
キャラクターデザイン:イリヤ・クブシノブ
音楽:戸田信子 × 陣内一真
オープニングテーマ:「Fly with me」millennium parade × ghost in the shell: SAC_2045

エンディングテーマ:「sustain++;」Mili
音楽制作:フライングドッグ
製作:攻殻機動隊2045製作委員会

©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会 

公式サイト  www.ghostintheshell-sac2045.jp
公式Twitter twitter.com/gitssac2045(@gitssac2045)
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