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6泊7日の列車生活 世界最長シベリア鉄道ダイジェスト

これまで世界各地を旅してきた旅行作家・下川裕治さん。長年続く連載の中から、今回は2017年のシベリア鉄道の旅を振り返ります。

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

(写真:阿部稔哉)

シベリア鉄道ダイジェスト

新型コロナウイルスの影響で予定していた「沖縄の離島の路線バス旅」の掲載が延期。クリックディープ旅の連載は長年続いている。そのなかから、もう一度見たいシーンや未掲載シーンを、エリアや取材時期を問わずにピックアップしたシリーズを配信します。

今回はシベリア鉄道。世界で最も長い区間を走る超長距離列車だ。鉄道ファンだけでなく、多くの人が一度は乗ってみたい……という列車旅を15枚の写真と動画で紹介します。季節は冬。西に向かって粘り強く走り続ける列車旅の世界に浸ってみてください。

長編動画


シベリア鉄道は6泊7日。車窓風景を録画した長編動画の本数も多い。そのなかからいちばんシベリア鉄道らしい風景が続くイルクーツクの手前の車窓風景を。僕と阿部稔哉カメラマンとのシベリア鉄道話も聞くことができます。

音声はテレワークでよく使われるアプリZoomを利用して録音しました。

短編動画


未発表の動画を軸に再構成しました。車内や停車中のホームの様子を。

Scene01

シベリア鉄道
ウラジオストクとモスクワを結ぶシベリア鉄道。走行距離は9259キロに及ぶ。この路線には多くの列車が走っているが、そのなかで乗り換えなしで一気に走るロシア号を選んだ。隔日運行だ。運賃はクーペと呼ばれる2等寝台で約3万7146円だった。出発は夕方。発車ベルもなく、ロシア号はウラジオストク駅を発車する。

Scene02

食料
乗車を前に、ウラジオストクで買いそろえた食料。パン3袋、カップ麺12個、チーズ、ソーセージ、リンゴ……。列車に乗るのではなく、山に登る感覚で買った。一応、毎日の食料計画を立てた。もちろんこれだけでは足りない。途中駅で買い足していく構え。さてこのなかでどう寝るか。シベリア鉄道は荷物の整理能力も必要。

Scene03

売店
ウラジオストクを発車した列車は、ハバロフスク、ウランウデ、イルクーツクと停車していく。主要駅での停車時間は15分以上。駅のホームにあるこんな売店で食料を補充していく。しかしホームで売られているものは高くてまずい……と乗客から教えられる。で、どうした? シーン6で。

Scene04

ガム
実は2、3日乗車した区間も加えると、シベリア鉄道はこれで5回目。2回目に乗ったときにホームで買った不思議な食べ物に今回も遭遇。松ヤニを固めたようなガム。これをポキッと折って口に含むと、サーと口中に松ヤニの風味が広がる。シベリアの風味ですなぁ。ただし2分ほどで風味が消える。これもシベリア?

Scene05

冬のシベリア
冬のシベリアの気温はマイナス20度を下まわる。そんな厳寒の街を列車はつないでいく。家や工場の煙突から立ちのぼる蒸気はくっきりと白い。川は完全に凍りつき、その上を車が走っていく。僕は毎朝、ホームでコーヒーを飲んだ。その湯気の濃さで気温を推測できるようになる。なにしろ7日間ですから。

Scene06

買い物
「買い足す食料は駅の外のスーパーや雑貨屋で買う」。乗客に教えられた。駅には一応、改札やセキュリティーチェックがあるのだが、列車の乗客は大目にみてもらえるようだ。揚げたてのピロシキ、スーパーに並ぶ50種類の総菜。ロシアのルーブルが安くなり、総菜は100グラムで100円前後。長い列車旅を乗りきるコツを身に付けた。

Scene07

赤カブ
車内の温度は25度前後に保たれている。Tシャツ1枚でもすごせるほど。で、困るのは、買った食材が腐ってしまうこと。ウラジオストクで野菜不足を補おうと買った生の赤カブ。せっせと食べたのだが、3日目にはぬるぬるに腐ってしまった。同室のロシア人は、腐ったチキンサラダにあたり、トイレを往復していた。冷蔵庫がほしい。

Scene08

2等寝台
シベリア鉄道は1等から3等まで。僕らはクーペという2等寝台。二段ベッドがふたつ入った4人用コンパートメントだ。2等以下はシャワーなし。7日間シャワーなしで? そうです。シベリア鉄道に乗りたい人はこの事実を知って引いてしまう。僕は大丈夫ですが。トイレには大判ウェットティッシュ。これで体を拭けますが。

Scene09

冬ざれた風景
シベリア鉄道には音がない。しんと静まり返った冬ざれた風景が延々と続く。都市を離れると、車も消え、動物の姿も目にしない。ウラジオストクを発車して3日目、列車がイルクーツクに近づき、川にカラスの姿を見たときは、救われた気分になった。シベリア鉄道は、人を寡黙にする列車だと思った。

Scene10

駅のホーム
冬のシベリアは日照時間が短い。日が暮れた寒い駅に止まることが多い。乗客の大半はホームに出て気分転換。犬を連れた人は、20分ほどの停車時間に散歩。若者はホームでジョギング。寂しい夜のホームが一気ににぎやかになる。その間、僕らは……。それは次の写真を見てください。

Scene11

ホームの雪の中にビール
僕らは、駅を出たスーパーで買ったビールを、ホームの雪のなかで冷やしていました。停車時間の間だけで、キンキンに。ロシアは酒のみ大国。ウォッカ4本は酒ではないということわざがあるほど。スーパーで売られているペットボトル入りビールも、主流は1.5リットルボトル。アルコールに関する感覚が違います。

Scene12

食料調達
小さな駅に停車したときは、ホームの片隅で食料調達。彼女が家でつくったピロシキだ。はじめてシベリア鉄道に乗ったのは1988年。当時のシベリアは荒廃していた。社会主義の体制が崩れかけている不安のなかで、人々は生きることに必死だった。駅のホームからあふれるほどの物売りが集まっていた。それから30年。物売りはずいぶん減った。

Scene13

乗客の持ち込んだ食事
僕らのベッドは上段だった。下段に乗るロシア人は入れ替わっていく。多くが食料持参。しばしば彼らから声がかかり、一緒に食事。ウォッカを持ち込んだおじさんは、ちゃんと4人分のグラスを用意。これは女性の乗客が持ち込んだ食事。パンにチーズを2センチの厚さに塗ったサンドイッチをもらった。これは太る。

Scene14

タイガの森
ウラジオストクを発車した列車は延々と走り続け、5日目、ウラル山脈にさしかかった。ここがシベリアとヨーロッパロシアの境になる。深く、静かなタイガの森を眺めながら、また寡黙になってしまう。冬のシベリアは美しいが、静かすぎる。終点のモスクワまではあと2日……。

Scene15

ヤロスラフスキー駅
モスクワに到着した。着いたのはヤロスラフスキー駅。モスクワ市内のターミナル駅のひとつで、シベリア鉄道を走る多くの列車が利用する。7日間世話になった車掌と、「いろいろ迷惑をかけてすいません」とおわびをしながら握手。車掌は折り返す列車に乗って、ウラジオストクに戻っていくという。言葉を失った。

■関連記事はこちら
今が“行き時”のロシアで6泊7日の列車旅 世界の長距離列車・シベリア鉄道編(1)
人を寡黙にさせるマイナス20度の車窓風景 世界の長距離列車・シベリア鉄道編(2)
バイカル湖を越え、沿線の各都市へ 世界の長距離列車・シベリア鉄道編(3)
小雨が降る終着駅モスクワへ 世界の長距離列車・シベリア鉄道編(4)

【次号予告】次回はアジアに刻まれた日本。

※価格等はすべて取材時のものです。
※取材期間:2017年2月25日~3月7日

■「台湾の超秘湯旅」バックナンバーはこちら
■「玄奘三蔵の旅」バックナンバーはこちら
■ 再び「12万円で世界を歩く」バックナンバーはこちら

BOOK

6泊7日の列車生活 世界最長シベリア鉄道ダイジェスト
12万円で世界を歩くリターンズ
[タイ・北極圏・長江・サハリン編] (朝日文庫)
リターンズ第二弾では、タイと隣国の国境をめぐり、北極圏を北上し、長江をさかのぼる旅へ、予算12万円で約30年前に旅したルートをたどる。さらに「12万円でサハリンに暮らす」ことにも挑戦。旅は、世界はどう変わったか?
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3月6日発売
定価:770円(税込み)

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