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aiko、Mr.children桜井、奥田民生、田島貴男……スカパラ「歌モノ」との葛藤、異分野の才能との出会い〈後編〉

リーダーを立てない大所帯バンドで、メンバーとの別れも一度ならず経験しながら、30年の間休むことなく続いてきた東京スカパラダイスオーケストラ、通称スカパラ。後編はバンドの一員として大切にしていることや、バンド存続の危機を実際にどう乗り越え、「歌モノ」シリーズをどのように確立させていったのか、異分野の才能との出会い「東京キャラバン」への思いなど、谷中敦(バリトン・サックス)と沖祐市(キーボード)の話は広がっていった。

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>>活動30年スカパラ流チーム結束のコツ

「楽しむことは、全人類の義務だと思う」

 メンバーとして大切にしていることは、やっぱり人と人の出会い。それが何よりなんじゃないですかね。一流の人ってずっと無邪気で笑顔がいいなあと思う。その裏にはきっとパブリックプレッシャーもすごいだろうから、強いものを持ってるんだろうし。でもそういう厳しいところは人に見せない。それが魅力ですよね。

先日、野田秀樹さんの舞台を観に行った時も感動した。どこにもないものを作ろうとしてる気迫が伝わってきた。ネームバリューとかではなくて、本当の一流の人の精神は学びたいと思う。

スカパラで共演した上原ひろみさんは、グラミー賞を受賞した超一流ジャズ・ミュージシャンじゃないですか。同じ鍵盤奏者から見ればちょっと太刀打ちできないなと思うけど、話したり目を見たりしてると、本当に無邪気な気持ちを大事にしてやってる。そのために自分の中の体力をつけてるんだなと思った。そういう人に刺激を受けて、俺ももっと頑張らなきゃと思う。

第一線の人は間違いなく、無邪気な心を大事にしつつ、自分の心も体も強く強くって、してる。そういう人に刺激を受けて、俺ももっと頑張らなきゃと思う。

aiko、Mr.children桜井、奥田民生、田島貴男……スカパラ「歌モノ」との葛藤、異分野の才能との出会い〈後編〉

谷中 楽しむことじゃないですか。楽しむことは、全人類の義務なんじゃないかな。仕事も楽しんでやらないと辛いと思うんですよ。音楽は特に楽しんでやらないと、逆にきついし。

若い人たちも、楽しんで、いろんな人と交流しながら面白いことをやろう。すごい面白さがあれば、人が集まって来る。大して面白くないと何人かで終わる(笑)。だから面白いことを考えるってすごい大事だなと思う。面白いことに人を巻き込んでいくのがいいんじゃないですか。

必死だった「歌モノ」最初の三部作 (田島貴男、チバユウスケ、奥田民生)

30年の歴史の中でスカパラを大きく変えるきっかけになったのが「歌モノ」シリーズ。ボーカリストのいないインストゥルメンタルバンドが、ゲストボーカリストを迎えた曲を発表するようになったのだ。この時から歌詞を書くようになった谷中にとっても、大きな転換期になった。第1弾はオリジナル・ラブの田島貴男を迎えた「めくれたオレンジ」(2001年)。「接吻 -KISS-」などのヒット曲を持つオリジナル・ラブとは、活動を始めたのが同じ頃だったこともあり、スカパラとは親しい間柄だが、だからと言ってオファーをアッサリ考えたわけではなかった。

谷中 田島はデビュー当時から知ってたんですけど、「スカパラで歌ってもらうのってどうなんだろう」って、メンバーで何時間も話し合った。自分たちがそんなにオーバーグラウンドのメインストリームで売れてるバンドじゃないという意識があったんで。

インディーズでインストゥルメンタルでライブハウスを盛り上げて、そのままヨーロッパへ行くぜ、みたいなアグレッシヴな気持ちで活動していた時期だったから、そのバンドが大人気の田島貴男とやるというのは、力を借りるみたいでカッコ悪くないかって。身近な相手と言えど、すっごく考えましたね。

aiko、Mr.children桜井、奥田民生、田島貴男……スカパラ「歌モノ」との葛藤、異分野の才能との出会い〈後編〉

田島が参加してくれた時、フィーチュアリング表記してなかったんですよ。それを受けてくれた田島もすごいと思うけど、ラジオで「めくれたオレンジ」が流れた時に、どう聴いても田島の声なんだけど、スカパラのサウンドだって言う人がいたら面白いじゃない、と言う感覚でやってたのもあったし、期間限定でスカパラのメンバーになってもらうというコンセプトもあった。だから「歌モノ」では毎回期間限定でメンバーになってもらい同じスーツを着る。それが続いてるんです。

歌モノということで振り返れば、『GRAND PRIX』(1995年)と言うアルバムで、石川さゆりさんや竹中直人さん、ジャマイカからThriller U、イギリスからMisty Oldland呼んだり、小沢健二君も入ってるという、バラエティー溢れる作品を作って、大傑作だよねって自分たちでは言ってたんだけど、たいして話題にならなかったんですよ。

当時はコラボレーションという言葉が一般的でなかったし、いろいろな人が参加したことでスカパラというものがわかりづらい感じになっちゃったんでしょうね。それで、そういうこと一切やめて、インストバンドとして俺たち自身を磨こう、みたいなことで死に物狂いでツアーやってました。

それで、自信がついたところで、田島を呼ぼうかという話になったんですよ。最初の三部作(田島貴男、チバユウスケ、奥田民生)から僕が歌詞を書くようになったんですけど、時間も短くて必死だった。

aiko、Mr.children桜井、奥田民生、田島貴男……スカパラ「歌モノ」との葛藤、異分野の才能との出会い〈後編〉

民生さんの時も、民生さんが普段使ってらっしゃる歌詞とは違う世界でお客さんに楽しんでもらえないと、自分たちとやる価値がないんじゃないかって一生懸命考えて。自分たちにとってはそこが実はハードルだった。そのハードルを乗り越えたところで、いろんな人とやることに、気持ちがオープンになった。

それで最近に至っていくんですけど、エレファントカシマシの宮本(浩次)くんとかMr.childrenの桜井(和寿)くんとか、お互い30年ぐらいの選手ですけど、デビュー当時はお互い一緒にやるとは思ってなかったと思うんですよね。

 最初の三部作の時は、青木が亡くなって間もない頃で、バンドが存続するかどうか、明日もわからない、とにかくやるしかない、それぐらいの殺気でやってたから。それは今聞いても音にも出てると思う。

宮本くんとの「明日以外すべて燃やせ feat. 宮本浩次」も、向こうもこっちも殺気立ってる状態でやれたのが大事なんだろうな。牛丼屋さんで流れても一瞬で伝わるものがあると思う。

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桜井和寿くんも言ってくれたんですよ、いつ呼ばれるんだろうって(谷中) 今でもaikoさんと一緒にやったの、夢かなと思う(沖)

ゲストボーカリストを迎えた歌モノはシングルになったものだけで17作。他にPUFFYと共作したものやアルバム収録のみの曲、またメンバーの茂木が歌う曲もある。歌モノ以外でも、「氷結」のCMでバスサックスの腕を披露したさかなクン、世界で活躍するジャズピアニスト上原ひろみとの共演曲など、スカパラの間口の広さに驚かされるのが、これらの曲を網羅したベスト盤『TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~』だ。

また、作品には未収録だが、スカパラが起用された「氷結」CMリシーズで三味線の腕を披露したのは、先日新型コロナ・ウイルス感染が原因で亡くなった志村けんさんだった。志村さんと一緒に三味線を弾いた上妻宏光の『粋-sui-』で聴くことができる。またこのCMシリーズでは高橋一生のブルースハープと浜野謙太のトランペットが入ったものもある。参加者の意外な一面を引き出すのもスカパラならでは。

谷中 こちらからお願いすることもあるけど、それ以上にやりたいって言ってくれる人が増えましたね。その話を爆笑問題のお二人にしたら、田中さんが「徹子の部屋みたいな感覚なんじゃないの?」って(笑)。番組にいつ呼ばれるんだろう、みたいなね。

桜井(和寿)くんも言ってくれたんですよ、いつ呼ばれるんだろうって思ってたって。うれしいですよね。もちろん自分たちからやりたいと思ってる人はたくさんいますけど、やりたいとおっしゃってくれる方がたくさんいらっしゃるんで、ずっと続けられるプロジェクトになってますね。

aikoさんは、意外だとびっくりしてくれる人が多いんで、そういう意味ですごいよかったなと思う。さかなクンもそうですけど。コラボはビックリしてもらいたい!

aiko、Mr.children桜井、奥田民生、田島貴男……スカパラ「歌モノ」との葛藤、異分野の才能との出会い〈後編〉

 aikoさんは、僕らの中でもずっと名前が挙がっていたけど、まさかお願いできると思ってなかった。今まで誰かとコラボとかされてないしそれが今回、受けていただいて。

僕らも今だったらこういう楽曲ができるっていうタイミングで。やっぱり必然性とか縁とか、そういうものなのかな。今でもaikoさんと一緒にやったの夢かなと思う。

野田秀樹と出会った「東京キャラバン」 新たな“面白い”を求めて

柔軟に多彩な人たちとのコラボレーションを重ねているスカパラならではの出会いの一つが「東京キャラバン」だ。野田秀樹(劇作家・演出家・役者)総監修のもと、「言葉や国境・表現ジャンルを超えた多種多様なアーティストたちの”文化混流”を実現させることで、新しい表現やパフォーマンスを創出し続ける文化ムーブメント」に、スカパラは2016年から参加している。

aiko、Mr.children桜井、奥田民生、田島貴男……スカパラ「歌モノ」との葛藤、異分野の才能との出会い〈後編〉

谷中 この企画のうわさを聞いて、前から親交があった松たか子さんに連絡して野田さんにつないでもらって、ブラジルに行くことになった。

ブラジルのリオで、現地のアーティストと日本から乗り込んだアーティストが初めて出会い、お客さんが自由に出入りする中庭で、公開リハーサルを4日間やって最終日に完成するというプロジェクトで、自分たちは東京からリオに行って公開リハを現地のお客さんに見てもらうって、とてつもない話が宇宙的で面白すぎて。

その場その場で面白いアイデアを出してくれて、仕切ってくれる野田さんに頼もしさを感じた。ブラジルの笛と共演したり、 重要無形文化財・能楽師の津村禮次郎さんが僕らの演奏で踊ってくださったり、スカパラの演奏とお芝居が混ざっていく様子とか、すごい楽しかった。

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 「東京キャラバン」で野田さんの元に集まると、すごい自由な気持ちになれる。ちょっとしたことでジャンルを超えられないと自分を抑圧しちゃうんですけど、野田さん自身がすごいパワーのある人なんで、これやっていいんだ、いいよね、やってみたらいいじゃん、と思えるような気持ちにさせてくれる。そういう野田さんの魅力にみんな集まってると思うんですよね。見に来れば、それは一目瞭然。

こうした出会いがバンドにとって、またメンバーそれぞれにとって刺激になっているのは間違いないだろう。そしてまた、辛い別れも乗り越えてきた彼らだから持ち続ける思いがバンドを進ませてもいる。

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>>活動30年スカパラ流チーム結束のコツ リーダー立てず、コラボプロジェクト、海外進出成功へ

(文・今井智子 写真・玉村敬太)

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「東京キャラバン」

劇作家・演出家・役者の野田秀樹の発案のもと、「多種多様なアーティストが出会い、国境、言語、文化、表現ジャンルを超えて、“文化混流”することで、新しい表現が生まれる」というコンセプトを掲げ、それぞれのジャンルを超えたパフォーマンスを各地で展開している。

2015年の東京・駒沢を幕開けに、これまでに東京、リオデジャネイロ、東北、京都、熊本、豊田、高知、秋田、いわき、埼玉、富山、岡山、北海道で開催されてきた。

東京スカパラダイスオーケストラや松たか子等を迎えて、2020年5月23日(土)・24日(日)に代々木公園(東京都渋谷区)で開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染症による影響等を鑑み、実施を延期。詳しい開催情報は公式HPでご確認下さい。

東京キャラバン公式HP:tokyocaravan.jp/

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