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“かっこいい”との付き合い方
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谷原章介「役者という仕事は、器と中身が表裏一体」

多くの人が憧れる「イケメン」と呼ばれる俳優たち。彼らはなぜ「かっこいい」のか。その演技論や仕事への向き合い方から、ルックスだけに由来しない「かっこよさ」について考えたい――。

俳優・谷原章介は、NHKの大河ドラマや連続テレビ小説をはじめ、多くの作品で活躍するほか、『王様のブランチ』(TBS系)『パネルクイズ アタック25』(テレビ朝日系)など、バラエティー番組の司会者としても知られている。映画『花より男子』の道明寺司役という、多くの人が知る“イケメン”キャラクターでの俳優デビューから今年で25年になり、「役者という仕事は、器とそれを満たす中身について掘り下げていく側面がある」と考えているという。多様な顔を持つ谷原の、今の境地とは――。(敬称略)

トップ写真:谷原章介(左)演じる主人公・石野貞一郎と、浅香航大が演じる不倫相手・梅沢智久/松本清張ドラマ『黒い画集~証言~』より

名作のイメージを覆すことにやりがいを感じた 

1992年にモデルとしてデビュー後、23歳で映画『花より男子』(1995年)の道明寺司役を演じ、俳優としての活動を始めた谷原章介。その後現在に至るまで、バラエティー番組の司会をつとめたりNHK『きょうの料理』に出演したりと、多岐にわたる活動を続けている。

そんな彼が、5月9日、BSプレミアムで放送の松本清張ドラマ『黒い画集~証言~』に主演する。本作は1958年に発表された松本清張の短編小説が原作で、これまでにも幾度となく映画化・ドラマ化されてきた。今回で7度目の映像化となる。

原作の物語は、妻と子供のいる主人公・石野貞一郎が、不倫相手の梅谷千恵子と過ごしていたそのとき、ある殺人事件が起こり、容疑者のアリバイを証明するために証言を求められる。しかし貞一郎は、不倫相手と一緒にいたことが露呈してしまうため証言できない……というものだ。

谷原章介「役者という仕事は、器と中身が表裏一体」

そして2020年に放送される本作は、この原作をアレンジ。谷原が演じる主人公・貞一郎の不倫相手・梅沢智久を浅香航大が演じ、バイセクシュアルや偽装結婚の要素を取り入れたものとなる。この設定の変更について、谷原はどう考えていたのだろうか。

「これまでそうそうたる方々が演じてきた作品、役にオファーをいただき、とても光栄だと思いました。その上で、今までの『黒い画集「証言」』のイメージを覆す設定にとてもやりがいを感じました。男女間の不倫から犯罪に巻き込まれていたところに、同性愛という要素が加わり、より貞一郎の葛藤が深くなったように思います」

貞一郎を演じるにあたり、どんな役作りをしたのだろうか。

「大事にしたのは、家族の前で見せる顔と、智久との前で見せる顔の違いです。原作の人物像と設定が変わったことに関しては、監督の朝原(雄三)さんが丹念に、深く造形してくださったので、途中からは監督に委ねて演じました」

谷原章介「役者という仕事は、器と中身が表裏一体」

デビュー当時“イケメン”という言葉はなかった 

谷原は、昨年『腐女子、うっかりゲイに告る。』(NHK)でも、主人公の男子高校生と不倫関係にある男性を演じたばかりだ。こうした役を演じるにあたって、思い出す作品があるという。

「デビュー3作目の映画が『デボラがライバル』という僕の大好きな多田かおるさんが原作の映画で、僕はそのデボラ【編注:作中でいう「オカマ」の超美青年キャラ】を演じました。当時たくさん勉強しましたし、それからもいくつかヘテロセクシュアル(異性愛者)ではない役を演じています。そこで学んだことを今回も参考にしました」

漫画家の名前がすっと出てくるのには理由がある。デビューの頃から、少女漫画好きを公言。2014年には、創刊から50年を迎えた集英社刊行の少女マンガ誌「マーガレット」と「別冊マーガレット」の歴史をふりかえる「わたしのマーガレット展 ~マーガレット・別冊マーガレット 少女まんがの半世紀~」のスペシャルサポーターもつとめた。

現在は、本の情報サイト「好書好日」で、少女漫画に限らず、さまざまな本を紹介する「谷原書店」を連載中だ。

その中で谷原は、日本のジェンダー問題を扱った小説『彼女は頭が悪いから』を取り上げたことがある。2016年に起きた、東大生らによる性的暴行事件をモチーフにして書かれた姫野カオルコの小説である。

作中では目を背けたくなってしまうような現実が描かれているし、これを率直に語る言葉を持たない人もたくさんいるであろうと思われる中、実際の事件の裁判結果や社会学者・上野千鶴子の東大入学式での発言なども引きながら、「僕自身もジェンダー論、フェミニズムについて理解が足りないところもあるでしょう。でも、だからこそ考え続けたい」と谷原自身の言葉で語っていることが印象に残った。

本インタビューも、その記事を読んで「話を聞いてみたい」と思ったことがきっかけになっている。谷原は今回も、「年齢や性別にとらわれず、ジェンダーやフェミニズムを一個人の目線から語れるような社会にならなければ、何も変わらないと思っています」と語ってくれた。

俳優以外の活動にも積極的な谷原だが、転機になったのは、2007年からおよそ10年間司会をつとめた『王様のブランチ』だという。当時のことを「とても迷った仕事ですし、そのおかげで今があります」と振り返る。思えばこの番組でも、毎週さまざまな本が紹介されていた。谷原がそれらの本を読み、番組内で真摯(しんし)にコメントしていた姿が思い出される。

現在、俳優としての活動期間は25年を数える。前述の通り、最初に演じたのは『花より男子』の道明寺司。日本のみならずアジア各国で実写化され、国ごとにさまざまな若手人気俳優が演じる、いわゆる「イケメン」キャラクターだ。

そこからキャリアをスタートした彼は、そうしたイメージをどうとらえ、役者として向き合ってきたのか。谷原は「僕がデビューした頃にはイケメンという言葉はありませんでした」と前置きしながら、「役者という仕事には、器とそれを満たす中身について掘り下げていく側面があります。側(ガワ)と中身は常に表裏一体です」と語る。

最後に、本連載のテーマである、自身が思う「カッコよさ」とはどんなものか、聞いてみた。

「なかなかに一言では言えません。それをわかるために日々頑張っています」

実は今回、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、メールでの取材となった。機会があれば、少女漫画を好きになったきっかけ、ジェンダー問題についての考え、そして自身の今後の展望まで、もっともっと深く聞いてみたい――そういう気持ちになるインタビューだった。

(文・西森路代)

プロフィール

谷原章介「役者という仕事は、器と中身が表裏一体」

谷原章介(たにはら・しょうすけ)
1972年7月8日生まれ、神奈川県出身。92年から『メンズノンノ』(集英社)の専属モデルになり、95年映画『花より男子』で俳優デビュー。NHK大河ドラマ『新選組!』(04年)、映画『ハンサム★スーツ』など出演作多数。07年から17年まで『王様のブランチ』2代目総合司会をつとめた。15年から『パネルクイズ アタック25』の3代目司会をつとめている。

作品情報

松本清張ドラマ『黒い画集~証言~』
原作:松本清張 脚本:朝原雄三、石川勝己 
出演:谷原章介、西田尚美、浅香航大、宮崎美子ほか 
NHK BSプレミアムにて、5月9日(土)21:00

石野貞一郎(谷原章介)は幸子(西田尚美)と結婚し、妻の実家のクリニックを継いだ。真面目な仕事ぶりが評判の医師だが、実は3年前から付き合っている不倫相手がいる。密会を重ねる相手は、男性の智久(浅香航大)だった。ある日、殺人容疑で逮捕された杉山(堀部圭亮)が貞一郎と智久の密会現場に遭遇したとアリバイを主張。不倫がバレることを恐れた貞一郎は、その日杉山と出会わなかったと偽証してしまう。

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