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高山都の日々、うつわ。
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〈特別編 〉#21 ひとつの器から物語が生まれる。

連載20回目を迎えた高山都さんの連載「日々、うつわ。」。5月は特別編として、前後編で高山都さんのインタビューをお届けします。前編(〈特別編 〉#21 ひとつの器から物語が生まれる。)は連載を通して改めて知った器の魅力や器がある暮らしの楽しさ、そして撮影の裏話なども伺いました。

     ◇

―― 毎回、ひとつの器をテーマに、日々の暮らしや料理について綴(つづ)る連載「高山都の日々、うつわ。」。気づけば20もの器が登場しました。これまでを振り返って、高山さんはどんなふうに感じているのでしょうか。

連載を始める前は、器をテーマにどんなお話を書けばいいのかなあと少し不安もあったのですが、気づけばもう20回! バックナンバーを見返すと、それぞれの器に個性的なエピソードがあって、まるで器を主人公にした物語集みたいだなとも思います。

私にとって器は毎日使うもので、その瞬間は「どんな料理に使おうかな」とか「どうやって盛り付けようかな」とか、どちらかというと実用的なことを考えています。こうして連載という形で改めて器と向き合って、さらにそれを言葉にしてみると、毎日の積み重ねのなかにちゃんとストーリーがあるんだということに気がつきました。それがこの連載を続けてきて得たいちばんの発見であり、面白さですね。

―― 連載のなかでもとくに印象に残っているのが、「とうげい駒形」のどんぶりを使った回だそうですね。

タイトルが「どんぶりの中の夢。」というもので、親子丼を作って盛り付けたんです。モデルという職業柄、どんぶりものを目いっぱい食べるということはあまりないけれど、じつは大好きで。以前沖縄を旅したときに、やちむんの愛らしいどんぶりに一目ぼれして、衝動的に買ってしまったんです。「ああ、この器で親子丼を食べたら、さぞ幸せだろうな~」って思いながら帰りの飛行機に乗っていましたね。

〈特別編 〉#21 ひとつの器から物語が生まれる。
夢と憧れが詰まったどんぶり。器に刻まれたストーリーは、使うたびに鮮やかに蘇(よみが)ってくる。
#14 どんぶりの中の夢。」より

―― 都さんらしいのはどんぶりを二つ、揃(そろ)いで買ったところだと思いました。

おいしい親子丼を食べたいというのはもちろんですが、できることなら誰かとふたり、お揃いの器で「おいしいねえ」と言いながら頰張りたいなって。それも含めて「どんぶりの夢」。そんなふうに思っていたことはすっかり忘れていましたが、撮影のときに実際に親子丼を作って盛り付けてみたら、その姿が本当に幸せの塊みたいで、当時の妄想を思い出したんです(笑)。

―― 器を使うことで、出会ったときの気持ちやそこに刻まれた思い出が蘇ってくるんですね。

そう、それが本当に毎回新鮮で、ああ、この器を買ったときはこんなことを考えていたんだなあとか思い出すんです。親子丼のときは、やっぱりどんぶりは誰かと一緒に食べたいなあと改めて感じつつも、同時に、こうやって肩に力を入れずに、ささっと作って料理を出せる関係性ってすてきだなとも思ったんです。

―― 器の話から理想の人間関係に発展するとは!

自分でもちょっと赤裸々すぎるかなと思うこともあるんですけど(笑)。でも器って日々の暮らしに密接に関わるものだからこそ、こういう自分の内面の変化とか、奥底で思っていることに気づかせてくれるのかなって思います。長く使っている器ほどいろいろな物語が刻まれていて、時間を重ねるごとにストーリーは変化していく。それは私自身の変化と重なるものでもあるので、そういう部分も読者の方に楽しんでいただけたらなと思っているんです。

〈特別編 〉#21 ひとつの器から物語が生まれる。

自分が好きな器を、好きなように使えばいいんだ。

―― 連載では「おでかけ企画」として、東京・有楽町の「大江戸骨董(こっとう)市」にも出かけましたね。

ずっと行ってみたいと思っていたので、すごく楽しかったです。「骨董市」という名前の印象から、ちょっと難易度が高いかなと不安もありましたが、実際行ってみると、お店の方がとてもフレンドリーで。日本の骨董はもちろん、アメリカやヨーロッパのアンティークも豊富で、世界中の器と一度に出会えるワクワク感がたまらなかったです。

―― なかでもフランスのアンティークを扱うお店に夢中でしたね。

はい、アンティーク独特の白のニュアンスに魅了されてしまって! それまでは日本の作家ものの器を中心に集めていて、どこか土のニュアンスが伝わる渋めのものが多かったんです。あ、あとは鮮やかなブルーとか色味があるものも好きで。たぶんそれは素朴なお料理を盛り付けても映えるからで、どちらかというと器の存在感を借りていたような部分があったのかもしれません。

―― 白の器に興味が湧いたのには、何かきっかけがあるんでしょうか?

いろいろな器を使ううち、だんだんお料理にも本格的に興味が湧いてきて、骨董市を訪れたのが、ちょうど盛り付けの勉強をし始めた頃だったんです。1種類のお料理をドンと盛るのもかっこいいですが、色とりどりのお総菜を少しずつプレートに盛り付けて、なんというか、キャンバスの上に絵を描いていくような感覚が面白いなと感じ始めていたんです。それにはやっぱり白い器がいいなと思っていたところに、フランスのアンティークに出会ったというわけです。

―― それは運命的ですね!

しかもフランスのアンティークは真っ白ではなくて、どこかクリームがかったやさしいニュアンスがあり、ところどころに年月を経てきた証しのキズ、貫入(かんにゅう)が美しく入っていて、ひとつとして同じ表情がないんです。器自体が持つ表情も盛り付けのアクセントになるのが面白くて、取材を忘れて見入ってしまいました(笑)。

〈特別編 〉#21 ひとつの器から物語が生まれる。
東京・有楽町の「大江戸骨董市」でフランスのアンティーク器の魅力に開眼。本場パリのアンティークマーケットにも出かけるほどの虜(とりこ)に。「#9 器を買いに。」より

―― 骨董市でのお買い物について書いた「器を買いに。」の回では、フランスの器以外に江戸時代の古伊万里のそば猪口(ちょこ)との出会いも綴られていましたね。

白地に藍色の子花柄の染め付けが入ったそば猪口がとてもすてきで。かれんで繊細な佇(たたず)まいの中に洋食器のような雰囲気も感じたんです。実際、フランスのアンティークプレートと食卓に出してもしっくり馴染(なじ)んで、こんなふうに和食器と洋食器を一緒に使えるんだ!って新鮮な驚きがありました。

―― 器を買ったお店の方からのアドバイスもとても参考になったそうですね。

古伊万里のそば猪口をどう使ったらいいのかなって店先で迷っていたら、お店の方がそれを察したのか、「自分の好きなように使えばいいのよ、器なんて!」っておっしゃって。「お浸しを盛ったっていいし、私なんてコレでコーヒー飲んでるわよ」とも(笑)。

―― どこかで「年代物=ちゃんとした使い方がきっとある」みたいな先入観を持っていたのかもしれませんね。

まさにそうです。その器の価値に見合う使い方ができるかなあと、それで迷っていたんです。でもその言葉で一気に吹っ切れて、器の価値は自分で決めたらいいんだって思えるようになったんです。だから今は、そば猪口でお茶も飲むし、フランスのアンティークプレートに焼きそばも盛ります。そうやって自分らしい使い方を少しずつ見つけていくのも器の楽しみのひとつなんだって教えてもらった気がしています。

〈特別編 〉#21 ひとつの器から物語が生まれる。

小さな器から広がっていく、豊かな世界。

―― 連載の読者の中には、これから少しずつ器に親しんでいきたいという方も多いと思います。都さんからなにかアドバイスがあれば教えてください。

私もまだまだ初心者です。アドバイスなんていうとおこがましいですが、友人に「まず最初にどんな器を買ったらいいかな?」と聞かれたときには、「どんどん着回せるデニムみたいな存在のお皿がいいよ」と答えています。デニムって、合わせるトップスによってカジュアルにもよそ行きにもコーディネートできるじゃないですか。それ一本あれば、すごく広がりが出るアイテムだと思うんです。器も同じで、まずはじめにシンプルで何でも合わせやすい万能な一枚を選んで、それに合わせる形でいろいろなテイストの器を少しずつ増やしていったらいいかなと思うんです。

―― 都さんにとっての「ファースト・デニム器」はどんなものだったんですか?

私の場合は、連載の第1回でご紹介した島根県にある森山窯の平皿です。偶然にもブルージーンズみたいな色合いのお皿なんですけど、さりげないトーストやおにぎりでもすごくさまになるんです。ちょっとくすんだブルーということで和食のおかずにもよく馴染んで、本当に万能。その後、これに合わせて同じ窯の別の器を買って、少しずつほかの作家さんのものも合わせていった感じです。

―― はじめての作家もので青とは思い切りましたね。

たしかにそうですね。でも私はどうしてもこの青に惹(ひ)かれてしまって。あとは自分がよく作る料理を思い浮かべると、この青がきっとよく似合うと思ったんです。お洋服もそうですが、スタンダードっていうのは色とか形があらかじめ決まっているわけではなくて、自分のスタンダードが必ずあると思うんです。それは自分が持っている服とかアクセサリーとか、あとはずっと変わらず好きなテイストもあります。まずはそこに向き合って、自分のスタンダードがどんな感じかをつかむと最初の一枚が選びやすくなるのかもしれません。

〈特別編 〉#21 ひとつの器から物語が生まれる。
高山都さんのファースト器は島根県にある森山窯の青いプレート。「#1 青いプレートとジャムトースト。」より

―― ファッションモデルの都さんらしい考え方ですね。すごくわかりやすいです。

少しずつ器を集めて、自分なりの好みやお料理との相性がわかってきたら、ときには冒険するのも楽しいものです。ふだん着ないテイストのお洋服を身につけて新しい魅力やワクワクに気づくこともありますよね? 器も同じで、ちょっと新しい感じのものを買ってみたから、これに合わせて作ったことのないお料理に挑戦してみようとか、そこからまた新しい冒険が始まることもあります。私も日々、器からインスピレーションをもらっていて、お料理の世界もどんどん広がっていく。そんなふうに小さな器から豊かな世界がひらけていくのはすごく刺激的だし、暮らしの中に器があってよかったなといつも思うんです。

(後編「〈特別編〉#22 家での時間が増えて見つけた料理の楽しみ。」)

写真 相馬ミナ 構成 小林百合子

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