読んで楽しむ空想京都さんぽ。「四条・烏丸御池」街なかごはん朝昼晩

旅行やお出かけが難しい今、これまで連載でご紹介してきたスポットをエリア別にピックアップし、空想の京都さんぽにお連れします。心おきなく京都に出かけられるようになったら、気になるエリアをどんなコースで巡ろうか、考えるのにぜひ参考にしてみてください。第4回は、京都の中心地・四条〜烏丸御池エリア。今回は、街歩きを楽しみながら立ち寄りたい、朝昼晩のおいしい京都ごはんをお届けします。
読んで楽しむ空想京都さんぽ。第1~3回はこちら
(1)センスの良い個人店が集まる「御所南」エリアへ
(2)旅の起点にも終点にもなる「京都駅」エリアへ
(3)「北野」エリアで甘いもの巡り
※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、営業状況が変更されている場合があります。ご注意ください。
京都の旅のはじまりは、名店のモーニングから

吹き抜けのホール席、ガラス越しの中庭が心地よい本店
京都で朝ごはんといえば、まずここへ向かう人も多いのではないでしょうか。「イノダコーヒ」は、1940(昭和15)年創業の京都を代表する老舗の喫茶店。中でも、吹き抜けのホール席や創業時のレトロな雰囲気を残した空間にファンの多い「本店」は、街なかエリアで必ず訪ねておきたい場所の一つです。開店時間になると、朝食目当ての観光客や朝の一杯にと立ち寄る常連客らが次々とのれんをくぐるのが、イノダの朝のお決まり。地元の人々と旅の人が、同じ空間で思い思いに過ごすひとときは、いかにも京都の喫茶店らしい光景です。

「京の朝食」(1480円・税込み)は午前11時までの提供
本店を含め市内4店舗限定の「京の朝食」は、「ホテルのような高級感ある朝食を喫茶店でも」とスタートし、今では京都のモーニングを象徴するような存在。肉厚のボンレスハムや絶妙な半熟加減のスクランブルエッグなど、ひと品ひと品手をかけた献立に、朝から心満たされること請け合いです。もちろん、看板ブレンド「アラビアの真珠」もご一緒に。ブラックでオーダーすることもできますが、あらかじめミルクと砂糖を入れて提供するのが元祖・イノダのスタイル。深煎りのブレンドはミルクととても相性が良く、ふだんはブラック派の人も一度は試してほしい味わいです。
イノダコーヒ本店
https://www.inoda-coffee.co.jp
■紹介記事はこちら
旅人も京都人も同じ朝を過ごす 老舗喫茶「イノダコーヒ本店」
京都らしさと季節の喜びが詰まった、野菜のランチ

錦市場の中ほど。細い細い路地の奥にたたずむ、隠れ家的和食店。店の奥には坪庭がある
「京の台所」として400年の歴史を持つ「錦市場」は、生鮮食品だけでなく、台所道具や乾物、漬けもの、お総菜などの店が並び、ふだんはなかなか前に進めないほど観光客でにぎわう市場。京都の食文化を代々守ってきた名店も多いので、ぜひとも応援したいスポットです。和食店「菜食hale(ハレ)」も、そんな店の一つ。店主の近藤千晴さんが祖母の営んでいただし昆布屋を引き継ぎ、野菜料理の和食店を始めて15年になります。

湯葉丼ランチセット(1650円〜)。季節によってせいろ蒸し付きのセットがあることも
京都を代表する食材である湯葉を、錦市場の名水と自慢のだしであんかけに仕立てたランチが、「hale」の名物。食材はすべて、近藤さん自身が信頼を寄せる近郊の作り手から仕入れ、小さな副菜まで丁寧に手間ひまかけて作られます。その一膳は季節を映し、野菜だけとは思えない満足感と多彩さが詰まったもの。当面の間、予約制のお弁当を販売されているので、近隣の方はぜひ味わってみてください。
菜食hale(ハレ)
https://www.instagram.com/hale888
■紹介記事はこちら
京都人好みのあんかけ湯葉丼「菜食 hale」のお昼ごはん
店主の暮らしへのまなざしを感じる、手仕事の道具店

改装前の店内。個展に行列ができるほどの人気作家から、まだあまり知られていない若手の作り手まで、店主の審美眼が光る作品が並ぶ
四条烏丸から南へてくてく。「がん封じ」で知られる小さな寺・因幡(いなば)堂の近くに、一軒のうつわと暮らしの道具の店があります。この場所で15年以上、京都で作家もののうつわを扱う店の先駆けとして営んできた「木と根」は、この春、店構えを一新したばかり。ガラス張りの外壁から光がさしこみ、季節のしつらえや調度品がより美しく、表情豊かに見える内装に生まれ変わりました。

おうちでのお茶時間を豊かにしてくれるポットや小皿。菓子切りは「木と根」オリジナル
店主の林七緒美さんが自身の暮らしで実際に使い、たたずまいや使い心地に納得したものだけが並ぶ品ぞろえに、著名人や料理人も信頼を寄せます。ふだんは店頭販売が主体ですが、今は期間限定で、林さんの確かな目で選ばれた作家の品々がオンラインで購入できるように。5月20日には「木と根」の暮らしともの選びの視点が詰まった著書『ひとり時、円居時』(KADOKAWA)も出版されます。
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新生活に、日々の食卓に。「木と根」で見つける手仕事のうつわと道具
懐かしさにキュンとする、大人の女性の大衆酒場
最後は繁華街らしく、レトロ感満載の大衆酒場で締めましょう。「酒場檸檬」はその名の通り、レモン好きのレモン好きによるレモン好きのための気軽な居酒屋。「レモンマーボー豆腐」や「レモンステーキ」など、レモン推しのお品書きがずらりと並び、ステンレスのテーブルやビールケースの荷物入れに、ガード下の飲み屋のようなラフで雑多なムードが漂います。

「レモンマーボー豆腐」(770円)と「レモンサワー」(500円)、いずれも税込み
この居酒屋のオーナーは、市内でフランス菓子教室やビストロを経営する山本稔子さん。フレンチのイメージとは対極にある大衆酒場ですが、山本さん自身がプライベートでも酒場のレトロな雰囲気が好きで、気兼ねなく通える店をつくりたかったのだとか。そんな思いもあってか、“ダサかわいい”絶妙のセンスがメニューに内装、BGMにとあちこちに漂い、訪れる人のハートをつかみます。

短冊のお品書きにレトロなポスター、卓上しょうゆにビールケースの荷物入れ、と細部まで酒場感満載
店内に流れる90年代J-POPを聞きながら、甘酸っぱくてほろ苦いレモンサワーで乾杯したいものです。今年2月には、近くに姉妹店である「酒場完熟檸檬」もオープン。新しい大衆酒場のスタイルからますます目が離せません。
酒場檸檬
https://sakabalemon.owst.jp
https://www.facebook.com/sakabalemon/
■紹介記事はこちら
キュンと酸っぱい思い出を刺激する。大人の女性の大衆酒場「酒場檸檬」
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四条〜烏丸御池かいわいは、新店が次々とオープンするかたわらで、純喫茶や老舗、錦市場など、京都を代表する名店もたくさんあるエリア。買い物や食事を楽しむことは、街の文化や気風を守ることにもつながります。オンラインショップやテイクアウトもぜひチェックしてみてくださいね。
このエリアの他のスポットはこちら(営業状況は各所にお問い合わせください)
・年の瀬も新年も。いつものコーヒーで迎えてくれる京都の純喫茶「スマート珈琲店」
・草木染と手織りが生み出す「アトリエシムラ」の風景のような着物
・ガラス瓶の中の景色に見とれて。梅仕事を体験する専門店「蝶矢」
・旅を豊かに、日常にヒントを。上質な衣食住を体験する京都のホテル「MALDA」
・心豊かに時を過ごす、クラシカルな喫茶店「フランソア喫茶室」
・目利きが厳選した素材が織りなす究極の朝ご飯 すし処「満」
・シメには甘味? “はふはふ”いただく京都のおうどん「冨美家」