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原田泰造×コトブキツカサの「深掘り映画トーク」
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原田泰造とコトブキツカサ 自宅でゆっくり楽しむオススメ映画作品2本 ~前編~

ネプチューンの原田泰造さんと、映画パーソナリティーのコトブキツカサさん。映画好きなオトナのお二人が、新作や印象に残る名作について自由に語る対談企画。今回はステイホームの期間中にお二人が自宅で鑑賞した名作を前編・後編の2本立てでご紹介。前編は原田泰造さんオススメの『牯嶺街少年殺人事件』について深掘りします。

監督 エドワード・ヤン

出演 チャン・チェン、リサ・ヤン、ワン・チーザン、クー・ユールン

(TOP画像:牯嶺街少年殺人事件 ©1991 Kailidoscope)

◇◆◇

コトブキ 今回は、自粛期間で映画館にも試写室にも行けなかったので、この期間に家で見た作品というテーマで一本ずつ出し合って語り合います。

原田 僕はいくつか挙げた中から、エドワード・ヤン監督の『牯嶺街少年殺人事件』を。この作品は、竹下監督が勧めてくれたんだよね。

『牯嶺街少年殺人事件』/DVD&Blu-ray発売中(税抜き5800円/6800円)/発売・販売元:ハピネット (c)1991 Kailidoscope

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コトブキ 泰造さん主演の『ジャンプ』や『ミッドナイト・バス』を手がけた竹下昌男監督ですね。

原田 竹下監督は『ヤンヤン 夏の想い出』でエドワード・ヤン監督の現場に携わったことがあるんだよ。それで2年前くらいに「いま映画館で『牯嶺街少年殺人事件』やってるから、観(み)てきなよ』って教えてもらって、新宿の武蔵野館に行ったの。

コトブキ 2017年に4Kレストア・デジタルリマスター版が上映された時ですね。

原田 それで劇場に行って、何分くらいの作品なんだろうって思ったら、3時間56分ですって言われて。そんなに長い映画を観たことないから、一番最初に思ったのは「トイレどうしよう」って(笑)。それで妙に緊張してたんだけど、はじまったらもうトイレなんて忘れるぐらい見応えがあって、一気にエドワード・ヤン監督のファンになった。

コトブキ  僕もこの対談のために見直してみたんですけど、長さは感じなかったですね。でも、やっぱり最初は構えますよ。ふだん忙しい時に、仕事から帰ってきて4時間弱の映画を見ようとは思わないじゃないですか。だからまさにステイホーム期間中にゆっくり見るのにオススメの作品ですよね。

原田 家で見るなら、途中で休憩も入れられるからね。 

コトブキ この作品は、1960年代初頭の台湾が舞台。そこで主人公の小四(シャオスー)と、彼を取り巻く少年たちのちょっと荒っぽい日常が描かれていきます。そこで、小四がある不良グループのボスと関係がある少女と出会い、少し陰のある青春ドラマが展開するんですけど……。

『牯嶺街少年殺人事件』/DVD&Blu-ray発売中(税抜き5800円/6800円)/発売・販売元:ハピネット (c)1991 Kailidoscope

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原田 作風として、あまり人物や背景を説明しないじゃない? こっちは台湾の文化に馴染(なじ)みがなくて、固有名詞が出てきても、それが人名なのか地名なのかわからなかったりするから、最初はちょっと戸惑うんだよね。

コトブキ 見ていくうちにだんだん時代背景が理解できていきますよね。主人公の家に、日本統治の時代の名残があったり、少年たちがプレスリーに夢中になっていたり。そうやって馴染んでくると、基本は少年たちの抗争や人間模様のお話なので、共感できるようになってくる。

僕の地元は静岡県の富士宮なんですよ。あの小林勇貴監督の『孤高の遠吠』の舞台になっているくらい、昔からちょっとヤンチャな子が多い所なんで、なんとなく『牯嶺街』の少年たちを取り巻く空気が理解できるんですよね。

原田 僕が学生の頃もああいう感じだった。先輩がいて、派閥があって、地域同士で争いがあって。だから見てて懐かしい感じはあったよね。ただ、この映画で子供たちが荒れてるのは、親たちの責任でもあるんだよね。

コトブキ 主人公たち一家は中国から台湾に移ってきた、いわゆる外省人と言われた人たちで、大人たちも明日がどうなるかわからない毎日を生きている。それを見ている子供たちはもっと不安で落ち着かなくて、という図式ですよね。

原田 でも子供たちは新しい土地や文化の中で生きていくしかないから、自分たちを爆発させていくわけじゃない。その抑圧と解放みたいな雰囲気が常に漂っているんだよね。

原田泰造とコトブキツカサ 自宅でゆっくり楽しむオススメ映画作品2本 ~前編~

コトブキ だから、この映画は基本的に息苦しいんですよね。主人公たちが、学校の隣にある映画スタジオに潜り込むときくらいが別世界で。

原田 今回の対談の前に、竹下監督に連絡して「エドワード・ヤンって、何がすごいんですか」って改めて聞いてみたの。そうしたら「やっぱり、画作りですね」と。画面に緊張感があるというのかな。そう言われてもう1回見たんだけど、その通りなんだよね。

コトブキ 画面に密度があるんですよね。背景や小道具ひとつにもこだわっているし、演技もしっかりしているから重いんですよ。

原田 やっぱりそれは撮り方なんだよね。「どうしてそれを映さないの」っていう場面が結構あるんだよ。例えば会話してるシーンで、喋(しゃべ)ってる人の顔を映さない。物陰に隠れてるようなアングルから撮ったりするから、どういう表情で喋ってるのかわからない。それが逆にいろいろな想像をかきたてる。

コトブキ 怒った顔をアップで抜いてくれないんですよね。だからよけいに怖いというか、不安になる。日本だと、黒沢清監督の作風も息苦しいじゃないですか。構図とかトーンも含めて、ちょっと酸素薄いなみたいな雰囲気。で、黒沢監督もエドワード・ヤン監督のファンなんですよ。だから通じている部分があるのかもしれないですね。

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原田 その強い画があるからこそ、登場人物たちの心情に寄り添えると言うか。

コトブキ ケンカと抗争の果てに、恋というか、少年たちの純情が絡んでくるのが切ないんですよ。好きになった子が、いろんな男性と関係をもっているという、うわさがあったり。それでどんどん行き詰まってきて、最後に大きな事件が起きてしまう。あのシーンは何度見てもショックですね。

原田 わかっててもドキッとする。いや、本当にすごい映画だと思うな。

(文・大谷弦 写真・林紗記)

後編へ続く

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