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観光客が戻りつつある竹富島へ 沖縄の離島路線バスの旅4

下川裕治さんが沖縄の離島の路線バスを乗り尽くす旅。前回の宮古島では「盲腸路線」に苦しみました。新型コロナウイルスの影響による政府の移動自粛の要請が解除され、旅を再開した下川さんが訪れたのは竹富島。いつもとは雰囲気が違う島で乗ったのは、ちょっと変わったバスだったようです。

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

(写真:中田浩資)

沖縄の離島旅・竹富島

竹富島バス系統図

主に文章に登場する停留所名を記載するなど、簡略化しています

宮古島の路線バスに挑み、いったん東京に戻った。次は石垣島、竹富島、西表島などの八重山諸島の路線バスを乗り尽くす……つもりだった。飛行機の予約も入れていた。しかし新型コロナウイルスの感染が拡大。緊急事態宣言が出され、沖縄に向かうことが難しくなってしまった。宮古島から戻って約4カ月後、政府による東京から他県への移動自粛要請も解かれ、八重山諸島のバス旅が可能になった。

最初に向かったのは石垣島に近い竹富島。面積は5.42平方キロという小さな島だ。そこに路線バスがある? ちゃんとありました。竹富島交通が巡回バスを運行させていた。簡単に乗り尽くせる、と竹富島に渡ったが、果たしてこれは路線バスなのか……という離島の路線バス感覚に出合ってしまう。

長編動画


竹富島の集落のサンゴ塀の上にカメラを置いて約40分。動くのは風に揺れるバナナの葉だけ? こんな静かな竹富島。貴重な動画です。

短編動画


竹富東港からの巡回バスがコンドイビーチに到着。しばらく停車し、港に戻ります。

今回の旅のデータ

竹富島へは新石垣空港から石垣港離島ターミナルにバスで出て、そこから高速船を利用する。新石垣空港への飛行機は、新型コロナウイルスの影響で大幅に減便されていたが、しだいに戻りつつある。8月のスケジュールをみると、羽田・成田空港から全日空、日本航空、日本トランスオーシャンのほか、LCCのピーチも就航している。関空からもほぼ同じ状況。運賃はピーチが最も安いが、夏のシーズンに入り、片道7000円台から。ほかに中部、福岡からの便もある。最も多いのは那覇からの便。1日10数便まで増えてきている。ただしスケジュールは、新型コロナウイルスの感染状況に左右される。事前にチェックを。

沖縄の離島旅・宮古島「旅のフォト物語」

Scene01

サーモグラフィー

石垣島までは成田空港からLCCのピーチを利用。運賃は片道3万円弱だった。新型コロナウイルスの影響でLCCが利用することが多い成田空港の第3ターミナルもまだ乗客が少ない。スタッフは皆、フェースシールドをつけ、検温のため通路には大型サーモグラフィーが。全身が映るのでちょっと照れ臭い。

Scene02

石垣島の空港

石垣島の空港に着いた。出口で検温。そして注意事項と石垣島独自の対策の説明書を受けとる。石垣ルールとも呼ばれるもので、宿と連携している。マスク着用や検温、三密を避けるなどといったこと以外に、チェックアウトしてから3日目に、宿が健康確認チェックを行うというもの。その協力が石垣島に渡る条件になっていた。

Scene03

路線バス

「南(ぱい)ぬ島(しま)石垣空港」と呼ばれる新石垣空港から石垣港離島ターミナルへ。足はもちろん路線バス。今後、石垣島の全路線バスを走破するという気が重くなる旅が待っているが、それは追って。まずは竹富島。車内は半数ほどが観光客で埋まり、ようやくいつもの石垣島に戻りつつあった。最前部の2席は感染予防のため使用禁止。

Scene04

具志堅用高の像

石垣港離島ターミナル近くに1泊。翌朝、ターミナルへ。ここにはさまざまな思いが詰まっている。心が軽くなる離島旅の思い出が多い。が、ときに、失踪したデザイナーを探しに竹富島へ向かったことや、自ら命を絶った友人の足跡を求めて波照間島へ渡ったことも。いつもここから船に乗った。名物の具志堅用高の像もマスク着用。

Scene05

検温

朝の検温、そして乗船前の検温……。そして手のアルコール消毒。これが新型コロナウイルス時代の旅? 八重山諸島の感染者は少ないが、離島の医療設備は十分ではない。検査をするためには石垣島まで来なくてはならない。沖縄の離島ゆえの事情が、石垣ルールをつくらせたことがよくわかる。

Scene06

高速船

竹富島往復は高速船で1160円。「うつぐみチケット」という竹富島入島料、300円が必要。「うつぐみ」とは皆で協力する心のこととか。発券窓口で、「レンタサイクルや水牛車はまだオープンの準備が整わなくて、たぶん7月1日からです」といわれた。「バスは?」「バスは運行しています」。胸をなでおろして乗船した。

Scene07

アルコール消毒

竹富島までは高速船で20分ほど。席は4割ほど埋まっていた。観光客はその半分ぐらいか。隣に作業服姿のおじさん。「工事がやっと再開されて、毎日、竹富島に通っているさー。忙しくなってきたよ」。竹富東港に着くと、観光客、島の人や仕事の人も全員、手をアルコール消毒。上陸する儀式のように。

Scene08

バス停

竹富東港前にあるバス停へ。すると行き先を聞かれた。「集落のナージカー(仲筋井戸)まで」というと、小型車を案内された。ビーチへ向かう人はやや大きいバスへ。「これは巡回バスでは?」。すると運転手さんは、「ナージカーにうちの事務所がありますから、詳しい説明はそこで」。しっくりしない思いを胸にバスに乗り込んだ。

Scene09

オフィス

竹富島は小さい。すぐにナージカー。竹富島交通のオフィスへ。「巡回バスは300円だけど、島を一周できません。うちが運行する定期観光バスとの関係もあって……。竹富東港―集落、集落―ビーチ、ビーチ―竹富東港の3路線です。ただ竹富東港以外は電話予約制」「でも集落のバス停には時刻が」「予約がないと路線によっては運休。バスとタクシーの中間みたいなものです」

Scene10

集落の道

まだ観光客がほとんどいない集落の道を歩きながら考える。「予約制のバス……。それは限りなくタクシーではないか。深く考えないことだ。島の人や観光客への便利さと会社の収益を考えていくうちにややこしくなってしまったのだろう」。沖縄らしい混乱。と、思ってしまうのは、本土からきた人だけ?

Scene11

バナナ

それにしても静かな竹富島だった。長編動画を見てもらえばわかるが、音がほとんどない。動いているのは風に揺れるバナナの葉だけ……。こんなに静寂に包まれた竹富島の集落を歩いたのははじめてだった。沖縄返還前の竹富島はこんな静寂に包まれていたのかもしれない。ちょっとした驚きだった。

Scene12

花が揺れる道

集落の道を進む。サンゴを敷き詰めた道を歩く僕の足音だけが響く。南国の花が揺れる道筋に足を止める。島の人たち話のでは、今晩(6月27日)、民宿、食堂など、いくつかの組合が集まり、オープン日を決めるという。横の糸がしっかりと張られた離島のスタイルだった。やっと以前の竹富島が戻ってくる。

Scene13

コンドイビーチ

島の集落から予約制のバスに乗ってコンドイビーチへ。運賃はひとり300円。ビーチで遊んでいた観光客は20人にも満たなかった。まるでプライベートビーチ。竹富島に暮らす家族がやってきた。「こんなに人が少ないのも、あと2、3日。その前に子供と遊ぼうと思って」とビーチに駆けていった。

Scene14

猫

ビーチサイドのベンチでぼんやりする。周囲の森から響くセミの声が耳に痛い。石垣島の中心街の店はほとんどが開いていた。しかし竹富島はまだしんとしている。石垣島との時差は10日ほど? それが沖縄の離島タイムに思えてくる。竹富島の猫も離島タイムで寝入っています。

Scene15

バス

竹富島交通のオフィスで予約しておいたバスに乗って竹富東港へ。これで竹富島のバスは乗り尽くしたが、バスに乗ったのか、タクシーに乗ったのか……。途中のバス停で、島に暮らす老人がひとり乗ってきた。足が悪そうで、ゆっくり乗り込むと、「バスは冷房が利いていて快適だねー」とひとこと。やはりバスだと思った。

※取材期間:2020年6月26日~6月27日
※価格等はすべて取材時のものです。

【次号予告】次回は西表島のバス旅を。

■「台湾の超秘湯旅」バックナンバーはこちら
■「玄奘三蔵の旅」バックナンバーはこちら
■ 再び「12万円で世界を歩く」バックナンバーはこちら

BOOK

観光客が戻りつつある竹富島へ 沖縄の離島路線バスの旅4
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