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野村友里×UA 暮らしの音
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UAさん「気になる『種』のお話」

「eatrip」を主宰する料理人の野村友里さんと、現在カナダで暮らす歌手UAさんの往復書簡「暮らしの音」。7月、UAさんが耕す畑には、生命力あふれる草花が生い茂ります。そんな景色を前に、UAさんが野村さんへ、手紙をつづります。

UAさん「気になる『種』のお話」
畑の空豆

>>野村友里さんの手紙から続く

友里さま

ソファに寝っころんで、思いを巡らす友里の様子。すぐ様、目に浮かぶから笑っちゃった。私にとっては、そんなあなたが面白い。

「歪(いびつ)なんだけど無我夢中でのめり込んでいたりもがいてたりする人に、猛烈にいとおしさを感じる」ね。それはまぎれもなく、「母性」なんだと思う。命綱たる「食」に、真摯(しんし)にとりくんできたあなたのハートに、深く育まれる滋養的感性。

あと、「歪」って言葉は興味をそそる。だって、元は「飯櫃(いいびつ)」なんでしょ。炊きたてのお米を移したり、お弁当を詰めたりする、おひつとか曲げわっぱのこと、だなんて。 何かい、じゃ、丸かったり楕円だったり、角がないことを、いびつって言っちゃうのかい。自然から見たら、角や直線だらけの人間界の方が全くもって「いびつ」なんだろうに。

UAさん「気になる『種』のお話」
去年植えたヨモギの成長ぶりは圧巻

勢いづく畑

さて、子年(ねずみどし)生まれの私としても、とんだ時代の幕開けとなったわけだけど、あらためて「種」については、非常に氣になるお話。

こちらカナダの西海岸、7月に入っても、あまり夏らしくならないでいたの。例年と違って曇り空や雨も多いから、畑の水やりは楽ではあるけれど、何だか妙。それでも、それなりに畑は勢いづいて、葉物に根菜、豆類も日に日に収穫量が増えてきて、卵だけを販売していたファームスタンド(無人販売小屋)に、朝採り野菜やお花も並べてるのよ。

3年前、食養生や野草料理の伝道者、大分県在住の「若杉ばあちゃん」由来の大根の種を、偶然、手に入れて蒔(ま)いたのだけど、その生命力たるや、今夏も落ちた種からジャンジャン芽が出て、採りきれなくて花を咲かせている。背が高くなるので、直径30メートル余りの円形の畑は、離れて眺めると、まるでちょっとした花畑(苦笑)。 あまりの繁殖力なので、種取りの分以外は引っこ抜いてるんだけど、それも畑に還してるとは言え、何となく心もとない。種は取れるだけ取っておいたほうが良い氣もするからなのよね。

UAさん「気になる『種』のお話」
若杉ばあちゃん由来の大根の種、3年目

一般に、こんな話が、どこまで知られているのか未知数だけど、ここ数十年で、男性の精子の数が激減しているとか。昔々には、1ミリリットルにつき2億個もあったそうな。それが、1940年代には1億5千万、それが1970年代には9千9百万になり、2011年には、4千7百万個に減少しているという。なんとここ40年ほどで半減!! ただ、この調査は、欧米、オーストラリア、ニュージーランドの男性対象で、アジア、アフリカ、 南米では、減少は見られなかった、とされているけど、果たして! 安心していて良いとは到底思えない。実際問題、日本列島の男性陣、男力どんな感じですかー??

さらに調べによると、減少ペースも上がってるらしく、このまま行くと、40年以内にはゼロになる!? そんなバナナ。それはいささかオーバーにしても、実は人間こそが、絶滅危惧種なんじゃないか。

そしてその減少するグラフは、世界のプラスチックの生産量と反比例していて、環境ホルモンからの影響によることは、うなずける。でもね、ここで言いたいのは、それって食べ物とも無関係なはずなくない?ってこと。

UAさん「気になる『種』のお話」
大根の花

今、市場に出ている野菜のほとんどは、友里も書いてた、「F1」という種から育っているものなんだってね。

F1(First Filial Generation=1代雑種、通称エフワン) とは、人工交配のハイブリッド種で、その主流となりつつあるのは「雄性不稔」。ミトコンドリアの正常ではない働きを利用することによって花粉ができない母株を作り、交配させた種子のことだそう。その種から育つ野菜には「雄しべ」がない。

現時点では、その精子減少への影響については「科学的な根拠はまだない」と言われてるようだけど、一主婦が率直に考えてみて、感じてみて、関係ないとはどうにも思いにくいんですけど~。

うちみたいな、ゆる~い家庭菜園の畑でなら、たとえ、(その1世代目だけが人間の思う通りの均一な品質と形になる)F1の種を蒔いても、いわゆる農家さんみたいに、その1世代だけを収穫して終わり、にする必要はないので、気長に2世代3世代と実らせていれば、形や味がバラバラでも、それはそれで楽しめるし、種子を選抜していけば固定種にもできる。うちの畑ではすでに、在来種同士で、自然に交配が起きて、葉っぱは水菜みたいなのに、抜くと小さな大根(カブ?)が付いてたりする(笑)。

去年植えたカレンデュラの花も種が落ちて、それがまたたくさん咲いている。夏中、次から次へと花開くのだけど、その同じ花でも、土の栄養素のちょっとした違いや日当たりなんかで、ずいぶん趣が変わったりする。

こんな身近で巻き起こる「多様性」は、めっちゃ楽しい。

UAさん「気になる『種』のお話」
多様性カレンデュラ

聞いた笑い話で、ある農家さんが、在来種や固定種を売る種屋さんに、「おたくの種からできたニンジンは、野ネズミが食うから厄介だ、その点、最近の種からできるものは、野ネズミが食わないからやりやすいわ」だって。は? これって笑えない話やん! 野ネズミも食べないニンジンを、スーパーで買う私たち。どうりで、味付けに凝らなきゃならないわけね。
かつて、身近に聞いた氣がする、おじいちゃんおばあちゃん世代が、「近頃の野菜はみんな味が変わっちゃったね~」って言うせりふも、もう映画やなんかだけになっちゃうのが末恐ろしい。

UAさん「気になる『種』のお話」
4月から飼い始めたアヒルのひな

まったく、いびつな世界に、生きてるわけだ。 情報社会に浸かりたいとは思わないけれど、どこに居ても知りたいことは自分なりに学べるし、伝えられるのはありがたいこと。心が感じる、ちょっとした違和感こそは学びのチャンスとして向き合っていたい。 特に、命にまつわることは、しっかり見据えて、選べる限り、命を優先させる価値観に1票を投じていたい、よね。

秋には、東京で会えるといいな。こんな時だから、人のぬくもりを実感できるようなこと、やりたいね。

うーこ

>>野村友里さんのお返事に続く

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