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高山都の日々、うつわ。
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#28 オトナとコドモのあいだ。

子どもの頃に好きだった味。
きっとみんなそれぞれ持っていると思う。

わたしが思い出す子ども時代の味は、
家族でお出かけをするときによく食べたおいなりさんや、
学校が午前中で終わる土曜日、
母がちゃちゃっと作ってくれた焼きそばや、焼き飯。

こと土曜日の母ごはんは簡単なもので、
使う具材もそのとき冷蔵庫にあるもの。
レシピや細かい分量なんてきっとなくて、
忙しい仕事の合間に
猛スピードで作ってくれたものだったと思う。

子どもの頃は「また焼き飯かぁ……」なんて
ブツブツ言っていたかもしれないけれど、
大人になると、その味がむしょうに恋しくなるから不思議だ。

#28 オトナとコドモのあいだ。
#28 オトナとコドモのあいだ。

ある週末に思い立って、
母みたいな焼き飯を作ろうと思った。
でも、母がどうやって作っていたのかわからない。
テレビを見ながら「ごはん、まだ~?」なんて言って、
台所に立ち入ることをしなかったのだから当然だ。

でも、そこは昔からのくいしんぼう。
詳しい作り方はわからなくても、その佇(たたず)まいや味は
ちゃんと目と舌が覚えている。

肉はハムとかベーコンとか、豚バラの切れ端だったような。
冷蔵庫にちょうど塩豚の残りがあるから、今日はそれ。
香味野菜はきっと玉ねぎか長ネギだった。

そうそう、どうしてだかわからないけれど、
母の焼き飯には、小さく切ったちくわとかかまぼこが入っていた。
今思えばそれは、育ちざかりの子どものために、
なんとか“かさ増し”しようとした苦肉の策だったのかもしれない。
親の苦労子知らずとはよく言ったものだ。

材料がそろったら炒めていく。
まず最初に卵。
レシピ本には「ごはんと卵を混ぜ合わせてから焼くと
お米が卵にコーティングされてパラパラに仕上がる」とある。
でも、母の焼き飯はパラパラじゃなかった。
ごはんはほどよく油を吸ってしっとりと、
ところどころにスクランブルエッグみたいな
ふわふわの卵があって、それが好きだった。

#28 オトナとコドモのあいだ。
#28 オトナとコドモのあいだ。

舌の記憶を思い出しつつ、
フライパンに油を多めに入れて、カンカンに熱する。
煙が上がったら、そこに卵液を一気に流し入れ、
1秒ほどで皿にとる。

最初こそ液状だけれど、余熱でどんどん固まって、
皿に収まる頃には、ふわとろの卵焼きに。
これを混ぜれば、
ふわふわ卵の焼き飯になるはず。

フライパンを奇麗にして、
長ネギ、塩豚、かまぼこを軽く炒め、
お米を入れて炒める。
母の焼き飯と違うのは、
味付けの仕上げに魚醤(ぎょしょう)を使うことと、
お米が玄米であること。

子どもの頃は白米をどれだけ食べても
すぐにおなかがすいていたというのに。
30歳も後半になると、玄米がちょうどいい。
子ども時代の味だけれど、一部は大人風。
なんだか大人と子どもの中間みたいな焼き飯だ。

頑張ってフライパンを振って全体を混ぜ、
卵焼きを入れてまた混ぜる。
卵の黄色い花が咲いたら、小さめのボウルに入れて
お皿の上に逆さまに置き、お楽しみの「パカッ」。
街の中華料理屋さんみたいに、ドーム状に。

赤いお皿に乗った、まぁるい山みたいな焼き飯。
かまぼこのピンク色と卵の黄色が可愛くて、
大人になっても、やっぱり心が躍ってしまう。

スープも付け合わせも何もなし。
子どもの頃と同じように、
スプーンで山を崩しながら、ひたすら頰張る。
ただそれだけで、こんなにも幸せ。
大人になっても、
本当においしいものって、永遠なんだ。

#28 オトナとコドモのあいだ。

今日のうつわ

大嶺工房のオーバルプレート

沖縄を代表する陶芸家・大嶺實清さんが作る器は、沖縄の海を思わせるペルシャブルーの釉薬(ゆうやく)が有名ですが、これは赤サンゴのような鮮やかなレッド。同じ形のブルーのものとセットで友人から譲り受けたものです。普段はお総菜をのせて使っているのですが、焼き飯を何に盛ろうかと考えたとき、この赤が「街中華」みたいな雰囲気だなと思って使ってみました。かまぼこのピンクと卵の黄色、その可愛らしい感じとよく合って、より素朴で、温かみのある焼き飯になりました。

(写真 相馬ミナ 構成 小林百合子)

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