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ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

「花を買う」というのは気分がいいもの。テーブルの上に1輪あるだけで、日常に彩りが添えられます。先日我が家に飾った白いユリも、リビングを明るく華やかな雰囲気に変えてくれました。今回ご紹介するのは、このユリを使ったコロナ禍における誘客プロジェクトのお話。新潟県津南町でちょっと変わったコラボが進行中です。
(文・写真:こだまゆき)

ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

プロジェクトの宣伝チラシ


ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

津南町内の旅館や飲食店、役場などに飾られている特産のユリ

国内有数の豪雪地帯として知られる新潟県津南町は、全国有数のユリ切り花の産地でもあります。ブランド名「雪美人」をつけたカサブランカは、ギフトのほかブライダル業界やイベントで使われる高級品。しかし今年はコロナ禍で需要が落ち込み、売上は例年と比べて1割から1.5割減ることが予想されています。

ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

キャンペーン期間中は毎週違うユリが届くという津南町役場の玄関ロビー。ブランド名「雪美人」はユリのほか、日本酒やお米にもついています

ユリ以上に打撃を受けているのが観光業。町内の旅館や飲食店も新型コロナウイルスの影響で大きなダメージを受けています。津南町の調べでは、今年3~6月の観光入れ込み客数は昨年と比べて9割減だといいます。そんな中、旅館の女将(おかみ)さんらが「地元特産のユリを使って観光客を呼び込めたら」と思いつき、津南町ユリ切花組合の組合長さんに相談したところ、思いがけない形でプロジェクトが動き出すことになりました。「雪美人に会いにこらっしゃい」キャンペーンです。

参加している町内の旅館・飲食店では、町や生産者団体である切花組合の援助で安く仕入れられる雪美人をフロントやロビーに展示。宿泊客が特別価格(後日発送で1箱5本入り4000円、送料別)で購入できる窓口にもなって特産の雪美人を盛り上げています。その「ユリ農家×女将」プロジェクトについて、関係者の皆さんにリモート取材することができました。

ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

養成圃場で試験的に咲かせているユリ


ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

「ユリ栽培現場の限定ツアー」では球根についての説明も

好評だった初めての限定ツアー

キャンペーン期間は7月18日から9月20日まで。7月末には宿泊者向けに「ユリ栽培現場の限定ツアー」が開催され、ユリの養成圃場(ほじょう)や、ふだんは関係者しか入ることができない雪室貯蔵施設を回りました。

ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

JA津南町営農部営農センターの福原健之さん。津南町のユリは日本農業賞の大賞を受賞しています

ツアーで案内役をしたJA津南町営農部営農センターの福原健之さんによると、津南町のユリ切り花は、輸入球根を畑や雪室で1年間養成・熟成させ、切り花として出荷するまで2年かけて育てることが特徴だといいます。

「オランダから輸入した小さな球根を、春に植えて野球ボールくらいになるまで土の中で養成します。秋にそれを掘り出して雪室で保管。翌年の春に雪が消えたらハウスを建てて、その中で切り花として育てます。だいた80日から90日で出荷できるようになります」

冬の間に2000トンの雪を運び入れるという雪室は、適度な湿度が保たれているため球根を寝かせるのに最適な保冷庫。ツアー参加者の皆さんは、真夏に見る大量の雪にびっくりしていたそうですよ。

ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

ユリ切り花の畑に入れる機会はめったにないとのこと


ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

貯蔵施設の雪室で、雪美人の特徴を説明する福原さん

限定ツアー当日は朝市も開催し、ユリ農家の奥様たちが売り子役を買って出ました。ツアー参加者にはお土産としてユリ切り花が特別価格で販売されました。お値段は3本で1000円。これ、市場価格に比べてかなりお買い得です。

ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

ユリが特価で売られた朝市

福原さんは、今年のユリ切り花をめぐる状況を、こう説明します。
「津南のユリの出荷は5月末から9月までで、幸い、外出自粛ムードが強かった3~5月はほとんど影響を受けていません。ブライダルやイベントの需要は減っていますが、巣ごもり消費の影響で、切り花のホームユース需要は伸びてきています」。差し引きして見込んだ今年の売上高が例年の1割から1.5割減、ということなのですが、経費の関係もあって今年の球根を来年に持ち越せないため1割の落ち込みでも相当厳しく、「耐えしのぐ年になりそう」とのことでした。

飾る楽しみと、魅力を伝える喜び

旅館の女将さんにもお話を聞くことができました。「越後田中温泉 しなの荘」の山岸麗好(れいこ)さんです。この夏限定プランとして、特別室の檜(ひのき)風呂にユリを浮かべる「雪美人風呂」を考案。加えてお土産にユリの花をプレゼントする「檜&津南ユリ風呂プラン(2食付)」を打ち出しています。

ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

「しなの荘」の女将・山岸麗好さん。大好きなユリを館内に飾るのがうれしいとのこと

「芸能人の結婚式で使われることもあるという津南のユリの存在は知っていましたが、地元にはほとんど出回らない、まさに“高嶺の花”だったんです」と山岸さん。

「実は限定ツアーをやる前に、旅館の女将たちを集めたプレツアーを開催してもらったんですが、津南にこんなユリ畑や雪室貯蔵庫があるんだ!とびっくりしました。地元特産のユリについて自分たちで学んで、それをお客様にお伝えできるようになったことが何よりの収穫です」と話してくださいました。

ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

花粉を取ったユリの花を30個くらい浮かべるという、見た目も香りもゴージャスなユリ風呂は特に女性に好評とのこと

「ユリを見て笑顔に」なることが一番

ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

津南町農と縄文の体験実習館「なじょもん」に作られたユリのモニュメント。約240本のユリを使った豪華な撮影スポットになっています

現在、津南町のユリ農家は15軒。第2世代にあたる30~40代の若手が中心となって、年間4億円、130万本のオリエンタル系ユリ切り花を全国の市場に出荷しています。

「雪美人は平均して7~9個のつぼみがつくのですが、花持ちが良く、最後の1輪まで大きく咲くことが特徴です」と教えてくださったのはユリ農家の二代目、藤木直人さん。JA津南町で技術開発担当もつとめています。

ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

ユリをディスプレイする藤木直人さん

「雪美人は主に冠婚葬祭やイベント用なので、今回のキャンペーンで、地元の人に身近に感じてもらえているのではないか」と話します。「来て下さったお客さんに笑顔になってもらえ、旅館の女将さんにも笑顔になってもらえることが私たち生産者の喜び。みんなが笑顔になること、それがこのプロジェクトに関わっている全員の思いです」

今回のキャンペーンはすぐに結果がでるものではないかもしれないけれど、必ず次のステップにつながっていくはずと電話口の声は弾んでいました。

「知られていない」と知った収穫

ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

「好評だった生産者限定ツアーや朝市は今後も続けられたら」と話す津南町観光地域づくり課の小島裕輔さん

最後にお話を聞いたのは津南町観光地域づくり課の小島裕輔さん。YouTube用の動画やチラシ作成、各方面への連絡係といったまとめ役です。

今回のプロジェクトでは、地元の多くの人が特産品のユリについて知らなかったということがわかり、もっと知ってもらうべきだと気づいたことが大きな収穫と話します。そして自分たちの町が持っている資産を、きちんと外の人に伝えることが、いかに大切か実感したとも。

「今回は伝える役目を旅館の女将さんや飲食店のスタッフさんたちがやってくれています。コロナ禍で自然発生的に生まれたプロジェクトとはいえ、やはり最初に動いた女将さんたちの柔軟な発想は素晴らしいです。津南は農産物など、もともと良いものを持っている町。これからも観光とどう組み合わせてアピールするかを考えていければ」と答えてくれました。

都内で見かけた雪美人 そして

ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

青山フラワーマーケット南青山本店


ユリ農家と旅館の女将、withコロナの誘客でコラボ 「雪美人」の新潟県津南町

代表的なロングセラー商品のひとつという津南町の雪美人は、1本1650円(税込み)で販売されていました

取材期間中、全国に111店舗を展開する青山フラワーマーケットに雪美人が入荷しているという情報を耳にした私はさっそくお店へ。「津南のユリは、茎の硬さ、ボリューム感、花の持ちなど、日本一といえます」と、切り花担当マネジャーの水野澄人さんは話していました。1本買って帰るつもりだったのですが、長さは1メートルほどと思った以上にりっぱで、我が家にはこれを生ける花瓶がないため断念。そこで目にとまったのが、他のグリーンと一緒にアレンジされベース込みで売っていた「テーブルリリー(税込み2200円)」でした。そうして買って帰ってきたのが冒頭の写真です。

「津南の雪美人に会いにこらっしゃい」

1輪でも圧倒的な存在感を放つ雪美人は、そう語りかけているような気がしました。

キャンペーンは9月20日まで。津南町では今、出荷の最盛期をむかえた雪美人がお出迎えしてくれています。

新潟・津南町「ユリ農家×女将」

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