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THE ONE I LOVE
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抽象度の高い愛の表現に魅了される――。声優、アーティスト・早見沙織が選ぶ愛の5曲 

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか──。実力派アーティストが“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。

今回は、アーティストデビュー5周年記念ミニアルバム『GARDEN』を9月2日にリリースした声優、アーティストの早見沙織が5曲をセレクト。早見は、現在放送中のテレビアニメ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。完』のヒロイン・雪ノ下雪乃役を始め、数多くの作品でメインキャストを務める人気声優でありながら、アーティストとしても今年だけで2作のミニアルバムを発表するなど精力的に活動している。

アーティスト活動に際して職業作家による提供曲を歌う声優が多く、早見のように楽曲の多くを自ら作詞作曲する人は珍しい。そんな彼女が「これまでの人生で数えきれないほど聴いてきた楽曲から選んだ」というプレイリストは、アーティストとしての音楽との向き合い方や、その原点が垣間見えるものとなった。

<セレクト曲>

01. 土岐麻子「さよなら90’s girl」
02. YUKI「Home Sweet Home」
03. KIRINJI「Drifter」
04. MISIA「THE GLORY DAY」
05. 早見沙織「garden」

■土岐麻子「さよなら90’s girl」

今回選んだ中では一番新しく出会った曲です。1人の少女の成長が描かれているんですけど、「今まで自分が歩んできた道のり全部を愛そう」みたいな、ある種の自己愛を感じるんです。ラスサビの「二年後すべてなくすけれど/やがて見つける世界は/きっと前より/美しいからね」という、過去の自分にメッセージを送っているような歌詞がとくに好きで。「何もかも失うくらい大変なことが起こるけれど、それを乗り越えた先には素敵な未来が待っているんだよ」って、未来の自分から言ってもらえたら心強いじゃないですか。ここ最近、さらに再生頻度が上がりましたね。

土岐さんの歌声自体もすごく好きなんです。楽曲も含めてですけど、とても洗練されているというか。聴いていると、まるで自分がおしゃれな女性になったかのような感覚になれる(笑)。あと「90’s girl」という表現にも、1991年生まれで90年代に育ってきた女子としてはすごく親近感が持てますね。

 

■YUKI「Home Sweet Home」

曲全体に、優しく包み込むような深い愛が感じられる楽曲だと思います。大変なことがあった日の帰り道とかでこの曲を聴くと、だいたい家に着くまでには号泣してますね(笑)。そうやってたまっていたものをすべて浄化するみたいな。そこから前を向くとか進んでいくとかっていうよりは、その場でそっと包み込んでくれる曲かなと思います。

曲の作りとしては、頭から1番の終わりくらいまでずっと抑えめな音で進んでいくところも好き。ピアノのシンプルなパターンが繰り返される中で「歩きつかれて ふりだす雨」と始まって、一気に物語に引き込まれていくというか。サビが終わって折り返すあたりでがっつりリズムが入ってくるんですけど、そのことでより前半のさみしげな感じが強調されて、すごく好きですね。

 

■KIRINJI「Drifter」

土岐さんの曲には自分自身に対する愛情を感じるんですけど、この「Drifter」は他者への愛、それもすごく強固な愛情がにじみ出ているなと思って選びました。今回の私の新曲「garden」と同じく冨田恵一さん(冨田ラボ)が編曲された作品ですけど、そこを意識しての選曲ではありません(笑)。単純にこの頃のKIRINJIさんのアルバム全部が大好きなんです。私の前作『シスターシティーズ』では、元KIRINJIの堀込泰行さんに「遊泳」という曲を作っていただけて、本当に光栄でした。

KIRINJIさんの楽曲ってひょうひょうとしたイメージの歌詞も多いんですけど、これはどちらかというとまっすぐな愛情を真摯(しんし)に描いていて。今の社会でハードに働いている人たち全員に通ずるような“愛の不確かさ”みたいなものが歌われていながら、それでいて曲そのものはすごく優美なんです。しかも最終的には「欲望が渦を巻く海原さえ/ムーン・リヴァーを渡るようなステップで/踏み越えて行こう あなたと」って的に愛を語って終わるところが、楽曲の美しさとも相まってむちゃくちゃ好きー!と(笑)。

 

■MISIA「THE GLORY DAY」

こちらは人類愛みたいな、人間そのものに対する広く深い愛を感じて。MISIAさんのボーカルも含め、すごくスケールの大きな曲ですね。もともとは私が小さい頃に母が聴かせてくれた曲で、歌を練習するときによく歌っていました。歌うたびに無上の幸福感を与えてくれますし、クリスマスソングならではの“すべて許される感”がハンパないです(笑)。

小さい頃、クリスマスの日はおうちに友達を呼んでクリスマス会をやっていたんですが、子どもたちが強制的に一芸を披露させられる不思議な会で(笑)。楽器ができる子は楽器を弾いたり、絵が得意な子は絵を描いて見せたりする中、私には披露できる特技が何もなくて……。そうしたら母が「クリスマスだから『THE GLORY DAY』を歌おう」と言ってきたんです。その頃はすごく引っ込み思案だったので、「人前で歌うなんて絶対にイヤだ」って言ったんですけど、いざ歌い始めたらとてもハッピーになれたという(笑)。そんな思い出も含めての選曲です。

 

■早見沙織「garden」

私にとってラブソングとは何かと問われたら、この曲がまさにそれかもしれない。「自分のすべてを愛し、他者のすべても愛す」みたいなことを歌っているんです。「生きていく上で常に自分を幸せにするための選択をしていきたいし、自分が選んだ道は全部肯定していきたい」というある種の決意表明であると同時に、「そうすることで他者が進む道も肯定できるようになる」という意味での人間愛というか。「あなたが好きです」的なベタな恋愛ソングがイヤだっていう意味では全然ないですけど、愛というものをニュアンス的に描く表現方法を自然と選んでしまうところはあるのかもしれません。今回選んだ4曲も、無意識ながら偶然そういうタイプの曲ばかりになりましたし(笑)。

ちなみに「garden」の制作は、まず私がピアノと歌だけを入れたデモを作って、編曲の冨田さんにお渡しする形で進めました。細かいオーダーもせずに「お願いしまーす」と(笑)。冨田さんとは以前にもゲーム『ガールフレンド(仮)』のキャラクターソングでご一緒したことがありますし、今回の打ち合わせでも聴いてきた音楽のお話などをさせていただいて、私がどういう人間なのかも、ある程度伝わった状態だったので。

曲によってはデモ段階でコーラスワークまで自分で考えてアレンジャーさんにお渡しする場合も多いんですが、冨田さんといえばコーラスワークだし、絶対にカッコよくしてくださるという確信があったので、この曲ではシンプルなデモに留めて。結果、コーラスワークはもちろん、コード進行もかなり複雑なものに置き換わっていたり、ラスサビに向かう展開とか弦の感じとか、「まさに冨田さんだ!」と思える仕上がりで感激しました。

 

■早見沙織にとっての“声優”と“音楽”

声優業も音楽業も、自分の中ではどちらも大きな支柱として存在しているものなんです。どちらかがメインでもう一方がサブ、というふうには捉えていないですね。どちらも自分だし、表現をするという意味では一緒かなって。なので「声優として音楽で何ができるか」という意識ではなく、「早見沙織として何が表現できるか」という根底の上に、音楽もお芝居も並列にあるというイメージかもしれないです。

近年、ジャケット(アートワーク)に自分の写真を使っていないのも、声優業の一環としてではなく純粋に音楽として聴いてもらいたい意識が働いていると思います。それと同時に、「今回の作品はこういうものだよ」ということを表現する一つの手段としても重要なものだと考えていまして。

たとえば今回の『GARDEN』のジャケットはスリーブ(スライド式で取り外しできる外箱)仕様になっていて、最初は切り抜きの部分だけに小さくお花畑が見えるんですけど、スリーブを外すともっと広大なガーデンが広がるんですね。「目に見えているのは一部分でしかなくて、その奥には自分でも気づかないくらい素晴らしいものが広がっているんだよ」っていうことを表現したくて。そういう意味では、表現として自分の顔写真が必要だということになれば、今後しれっと登場するかもしれないです(笑)。

 

(企画制作/たしざん、取材・文/ナカニシキュウ)

■早見沙織セレクト「THE ONE I LOVE」プレイリスト

■早見沙織『garden』

抽象度の高い愛の表現に魅了される――。声優、アーティスト・早見沙織が選ぶ愛の5曲 

■Profile
早見沙織(はやみさおり)
1991年生まれの声優、アーティスト。2007年、テレビアニメ『桃華月憚』のヒロイン・川壁桃花役にて15歳でアニメ声優としてデビュー。以後『東のエデン』『バクマン。』『魔法科高校の劣等生』など数々の人気作でメインキャストを務める。2015年には自身が主演したテレビアニメ『赤髪の白雪姫』のオープニングテーマ「やさしい希望」でアーティストデビューを果たす。透明感のある澄んだ声質と確かな技術に基づいた芝居、歌唱を特徴とし、声優としてはもちろん、シンガーおよびソングライターとしても高い評価を受けている。2020年にはアーティストデビュー5周年を記念し、2作のミニアルバム『シスターシティーズ』『GARDEN』を発表。

【関連リンク】
早見沙織 Warner Bros. Home Entertainment Official Website
whv-amusic.com/hayamisaori/

早見沙織 Official (@hayami_official) · Twitter
twitter.com/hayami_official

早見沙織 Official YouTube Channel
www.youtube.com/channel/UCtUcK6HrhD024CkPDsURBwg

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