駅から歩いて、鳴き砂の浜と世界遺産の港へ 島根県・馬路駅

誰にも出会わなかった、世界遺産の港
二つ目のスポットは、鞆ケ浦(ともがうら)という小さな港。この港はなんと、世界遺産に登録されている。
海ばかり見ているとあまり意識しないが、馬路駅から見て山のほう、直線距離で南東におよそ5kmの場所に、石見(いわみ)銀山がある。16世紀の戦国時代から栄え、日本産の銀が世界のおよそ3分の1を占めると言われた頃、そのかなりの部分を産出したといわれる、日本最大の銀山だった。
鞆ケ浦は、石見銀山で採掘した銀を積み出すために使われた最初の港。2007年に「石見銀山遺跡とその文化的景観」の構成資産の一つとして、世界遺産となった。
そんな鞆ケ浦を見るべく、馬路駅を再訪したのは、2018年11月。
鳴き砂のまぶしい琴ケ浜を右手に、海沿いをひたすら歩く。前回は鳴き砂に夢中であまり気に留めなかったが、改めて見ると海水の透明度が高い。まるで水槽を上からのぞき込んでいるかのように、海の底までくっきりと見える。美しすぎる道のりだ。

道はやがて1本のトンネルに行き着く。暗がりをおそるおそる抜けると、そこはもう鞆ケ浦。馬路駅からは、歩いて15分ほどの距離になる。

リアス式海岸の深い入り江にあり、ひっそりした、まさに天然の良港。世界遺産とはいえ、観光客はおろか、人の姿が見えない。2匹の子猫だけがこちらのことなど意に介さず、道端でたわむれているのが印象的だった。
港の奥には数えるほどの民家があり、その間を縫うように1本の細い坂道が伸びている。

およそ500年前、石見の銀はこの細い坂道を通り、目の前の小さな港に運ばれ、やがては世界へと渡っていったのか――。ひとり、道の真ん中でじっと景色を見つめ、歴史に思いをはせる。誰もいないからこその、ちょっとしたぜいたくだ。
ホームから出なくても、美しい日本海を望める馬路駅。しかし、駅を出てちょっと歩けば、地球や先人がもたらした貴重な遺産が待っていた。
駅の外に目を向けてみると、旅の楽しみはぐっと広がる。
今まで駅ばかり巡ってきた私に、馬路駅はそんなことをようやく気づかせてくれた。
JR出雲市駅から山陰線普通列車で約1時間。
■JR西日本(JRおでかけネット)
https://www.jr-odekake.net/eki/timetable?id=0640752
- 1
- 2
広島市から松江に住んでいた祖母によく日帰りで会いに行ってましたが、1泊しての訪問でも、出雲まで足を延ばすなんて事あまりしませんでした。石見銀山の辺りまでは出雲~松江駅間よりずっと距離があるし、津和野への観光客は萩(山口県)から周って来ていて、石見まで足を延ばす人は少ない可能性が。
10月の海岸は訪れるだけなら綺麗ですが、海水は勿論、秋風が吹いてたら日本海沿いの浜辺は寒いでしょう。11月だったらもうブルブル~かなり。シルバーウィークに合わせて観光キャンペーンでもしていたら、それなりに訪問客いたんでしょうが。