「あまちゃん」の舞台、北三陸の絶景駅へ 岩手県の野田玉川駅と堀内駅

2019年3月に全線開通した、三陸鉄道リアス線。岩手県大船渡市の盛(さかり)駅〜久慈市の久慈駅を結び、全長は163kmを誇る。第三セクターの中では日本最長の路線だ。三陸海岸の風光明媚(めいび)な景色で有名なだけあって、海の見える駅も数多い。
その中でも特に開放的な眺めを楽しめるのが、岩手県北部にある野田玉川駅と堀内(ほりない)駅という、二つの無人駅。それぞれ、2013年に放送されたNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」のロケに使われた駅でもある。
北三陸の絶景を求め、2016年2月のある朝、「三鉄」の北端・久慈駅を出発した。
連載「海の見える駅 徒歩0分の絶景」は、アマチュア写真家の村松拓さんが、海のそばにある駅で撮った写真を紹介しながら、そこで出会ったこと、感じたことをつづります。
朝日を見るならうってつけの、野田玉川駅
久慈駅を発ったのは、まだ空も暗い午前6時。なぜこんな早朝に乗り込んだかというと、一つ目の目的地、野田玉川駅で朝焼けを見るためだ。
久慈駅からおよそ20分で、野田玉川駅に到着。ドアが開くと同時に、まぶしい光の帯が目に入った。はるか先には、水平線と、上空を覆う厚い雲。ちょうど日の出を迎えた太陽が顔を出していた。

雲の影ができた黒い海を、昇りたての太陽がスポットライトのように照らす。雲のない朝焼け……ではないものの、かえって珍しい、幻想的な日の出に出会えた。野田玉川駅には海側と山側にホームがあるが、列車を降りた海側のホームが、幸いにもベストビュースポット。ほとんど移動せぬまま、海のほうをじっと見つめ続けた。

まもなく、太陽は雲の中に一度隠れてしまった。駅に着いてわずか5分ほど後のことだ。

三陸といえば、リアス式海岸の入り組んだ海岸線のイメージが強い。しかし、岩手県の北部の海岸線は比較的なだらかで、加えて陸地の標高も高いため、見晴らしがよい。野田玉川駅はそんな地形にある上、特に東側の視界が開けている。朝日を見るにはうってつけというわけだ。実際に、三陸鉄道で元旦に運行される「初日の出号」の中には、この駅で初日の出を迎える列車もあった。
撮影を終えて列車を待っていると、向かいのホームに久慈行きの列車が到着。いつの間にやってきたのか、学生さんがひとり、列車へと乗り込んでいった。

風光明媚な路線でも、その役目は何より地域の大切な足。久々に見た人の姿に、少しほっとした。
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