&w

私のファミリーレシピ
連載をフォローする

ラビオリの親戚みたい。東欧の水餃子

ニューヨーカーの“おふくろの味”をつづる「私のファミリーレシピ」。人種のるつぼと呼ばれるこの街で、彼/彼女を形づくる食のルーツを探ります。エヴァン・ハンサーと、レイチェル夫妻のお話の続きです。

エヴァンのピエロギには欠かせないものがあると言う。じっくりあめ色になるまで炒めた玉ねぎだ。ゆであがったピエロギに、ソースのように絡めて食べる。

「それはもう、山ほどの玉ねぎ。想像を超える量の玉ねぎが必要なんだから」とレイチェル。「たっぷりのバターもね」とエヴァンが、ル・クルーゼの大きなフライパンに、バターを1本(!)投げ入れた(ちなみにバター1本で約110g)。薄切りにした玉ねぎ3個分を、溶けたバターの上に豪快に乗せたら、30分以上かけて、じんわり、焦らず炒めていく。

ラビオリの親戚みたい。東欧の水餃子
このバターが、おいしさを左右するので、惜しまず使うこと

玉ねぎの、甘く苦い香りで満たされた部屋で、エヴァンとレイチェルが仲良くピエロギの具を包む。ふたりの親密な時間も一緒に包み込まれたようなピエロギを、沸騰した湯でゆでたら、あめ色玉ねぎをたっぷり絡めて出来上がり。

手づくりの生地は、ぷるっとなめらか、あとからもっちり。具のマッシュポテトとの、息の合った一体感。水餃子(ギョーザ)を想像していたけれど、どちらかと言えばリコッタチーズを包んだラビオリの親戚という感じ。ひとつ、またひとつと、飲むように食べてしまった。プルーンを包み込んだピエロギもまた、目をむくおいしさ。名バイプレーヤーのあめ色玉ねぎによって、ふくよかなプルーンの甘みがひき立つ。ピエロギは楽しい。

ラビオリの親戚みたい。東欧の水餃子
レイチェル(左)とエヴァン(右)がピエロギを仕上げる。家族で具を包む姿は、ほほ笑ましく、愛(いと)おしい

食卓を囲みながら、それぞれの家族のこと、料理のこと、あれこれ話が弾む。

大学で英語と心理学を専攻し、ライターや作家を目指していたエヴァンだけれど、なぜか料理の道へ。聞けば、大学の寮で友だちに料理を振る舞ううちに、料理がどんどん身近になったのだとか。「子どもの頃、父が料理をする姿を見て、“おいしい食べ物を作るとみんなが喜ぶ”ということを知り、僕もやってみようと思ったんだ」とエヴァン。

さらにレストランでのバイトを経験し、「シェフとして働ける」と確信したことも大きかったと回想する。そんなエヴァンを、両親は応援してくれたけれど、「一時的なことだと思っていたはず。シェフをやめない僕に『ずっとこの仕事をする予定なの?』って聞いてきたから(笑)」。でも今は、エヴァンの仕事を両親も誇りに思ってくれている。

ラビオリの親戚みたい。東欧の水餃子
「料理をすることで、世界にどんなインパクトが与えられるか。食べ物がひとつのソリューションになることを感じている」とエヴァン

文系男子のエヴァン、趣味といえば読書だ。「大学生の時、エヴァンのポケットにはいつも本が入っていた」とレイチェルが話すように、相当な本の虫だったらしい。そんなエヴァンが主催しているのが、本と料理を結びつけたイベントTable of Contents(テーブル・オブ・コンテンツ)だ。

毎月3名の作家を自身のレストランに招き、著書の一部を朗読してもらうというもの。本に登場する料理や、文章からインスパイアされた味をエヴァンが厨房(ちゅうぼう)で調理し、朗読後に参加者に振る舞う。耳で捉え、頭のなかで膨らませた物語の世界を、味覚で追体験できる。私もこのイベントに参加したことがあるけれど、“食べる”行為によって、二次元の文章が立体的に膨らみ、物語が覚醒するような感覚を得た。

味の向こう側にある物語は、いつだって食体験をより深遠なものにしてくれる。レイチェルのボルシチも、エヴァンのピエロギも。家族のヒストリー、先人の知恵、綿々と受け継がれた食への愛情。それらが混然一体となって、世界でひとつの“おいしい”が生まれるのだ。

ラビオリの親戚みたい。東欧の水餃子
「ピエロギは、食材に乏しい冬でも作ることができる。材料費も安くてリーズナブル」とエヴァン。寒い地方が育んだ食の知恵
ラビオリの親戚みたい。東欧の水餃子
山盛りの薄切り玉ねぎを、じんわり、時間をかけて炒める。こっくり甘いあめ色玉ねぎは、ピエロギのソースとなる
ラビオリの親戚みたい。東欧の水餃子
自家製ピエロギの生地は柔らかいため、縁に少量の水をつけ、指先でぎゅっと閉じるだけで簡単に包むことができる

《レシピ》ピエロギ

★材料

(皮)
小麦粉 3カップ
卵 1個
植物油 大さじ1
塩 小さじ1
水 1カップ

(具)
じゃがいも(大) 3個
シャープチェダーチーズ(すりおろす)  450g
牛乳 1/2カップ
塩コショウ 適量
ドライプルーン 適量

バター 約110g
玉ねぎ(大) 3個
塩 適量

★作り方
1 皮を作る。大きな浅いボウルに小麦粉を入れ、中央にくぼみを作り、卵、植物油、塩、水を入れ、フォークで混ぜる。この時、小麦粉は一気に混ぜず、少しずつ混ぜこんでいく。ひとまとまりの生地になったら、打ち粉(分量外)をした台に乗せ、こねる。生地の表面が滑らかになり、弾力が出るまで10分ほどこねたら、生地を丸めてボウルをかぶせ、室温で1時間ほど寝かせる。
2 具を作る。じゃがいも(皮つきのままでも、皮をむいても)を乱切りにし、柔らかくなるまでゆでる。水気を切ったじゃがいもをマッシュし、チーズ、牛乳と混ぜる。塩コショウで調味したら、粗熱をとる。
3 種を抜いたプルーンをぬるま湯に30分ほどつけ、柔らかくなったら粗く刻む。
4 フライパンにバターを入れ、薄切りにした玉ねぎを加え、塩をして、あめ色になるまで30~45分ほど炒める。
5 の生地をパスタマシンで均一に薄さ4mmくらいに伸ばし(目盛りは6か7)、直径約12cmの丸い形に抜く。皮での具(またはのプルーン)をお好みで包む。
6 具を包んだピエロギを沸騰した湯で5、6分ゆでる。ゆであがったら水気を切り、の玉ねぎに絡める。

(おわり)

エヴァンさんのインスタグラム https://www.instagram.com/evanhanczor/

※2020年3月の取材時のものです。

REACTION

LIKE
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル

    *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら