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花のない花屋
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「結婚しないの?」の視線に耐えきれず、私は地元を飛び出した 残してきた両親へ

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。
新型コロナウイルスで大きな影響を受けた花の生産者を支援している全国農業協同組合連合会(全農)に、その活動の一環として連載にご協力いただいています。
あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

赤井聡美さん(仮名) 52歳 女性
東京都在住
契約社員

    ◇

長崎で暮らす年老いた父と母に、花束を贈りたいと思っています。

両親は婦人服のオーダー店を切り盛りしていました。正直で真面目がとりえの父が接客を、明るい母はデザインや裁断などを担っていました。幼い頃には20人以上の「お針子さん」が働いていたのを覚えています。

私も含めきょうだいは全員、大学進学を機に上京。ただ両親は「娘には地元でいい人を見つけて、結婚してほしい」と望んでいることを知っていました。東京で服飾について学び、数年会社勤めをした後、25歳でふるさとに戻りました。

これといった目的意識もなく、家業を手伝っているうちに、7年もの月日が経っていました。

地元の暮らしに、窮屈さを感じるようになってきました。「30歳を過ぎたのに、まだ結婚しないのか」、周囲からそんな目で見られているような気もして、閉塞(へいそく)感にたえられず、「もう一度上京したい」と思ったのです。

思いを母に伝えると、「どうしてもここから出て行きたいのか」と泣かれました。決意して正面に正座したものの、うまく説明できない私も「本当にごめんなさい」と涙を流すしかありません。

父だけは何も語らず、淡々と荷造りを手伝ってくれました。

一度戻ってきた娘が、結婚せずに再び上京する――。親戚や周囲の目もあります。両親はさぞや肩身が狭かったでしょう。わだかまりが生じてしまい、改めて上京してからしばらくは、ふるさとに戻れませんでした。

父と母には寂しい思いをさせてしまいました。自分自身に余裕ができ、やっと帰郷できたのは、再上京から3年も経ってからでした。

38歳の時、縁あって主人と結ばれ、都内に新居を構えました。

その間に父は還暦を過ぎ、店を畳みました。その後体調を崩してしまい、生活に母の助けが必要になりました。

あるとき、「今よりお父さんの病状が進んだら、介護倒れしてしまう。施設のお世話になろうか」と母に提案しました。ですが、母は即座に「いいや、お母さんが看(み)る」と答えました。夫婦げんかをしながらも、2人で仲良く、助け合って暮らしています。

父は今年で82歳、母は78歳になりました。

今はわだかまりなく受け入れてくれる父と母に、感謝とエールの花束を届けたいと思っています。父は商売の時だけは冗舌でしたが、普段は口数も少なく、夜に出歩くことも、お酒をたしなむこともありませんでした。母は花が大好きで、5年ほど前まで近くのフラワーアレンジメント教室に通っていました。今でも正月になると自分でアレンジした花をお世話になった方々に配っているようです。

こんな、素朴ですが優しい両親なので、明るい色の花束を贈りたいです。私も50歳を過ぎました。「定年後は田舎に帰り、一緒に暮らすつもりだからね」。花束とともに、そんな言葉も添えたいと思っています。

「結婚しないの?」の視線に耐えきれず、私は地元を飛び出した 残してきた両親へ
≪花材≫バラ、ガーベラ、スカビオサ、シキミア、チューリップ、ネリネ、ケイトウ、ドラセナ

花束を作った東さんのコメント

感謝と、これからのエールの花束ということで、明るいピンク系の花でまとめました。バラやガーベラ、チューリップといった、王道の花束。サーモンピンク、ビビッドなピンク……様々なピンクをミックスして美しいグラデーションを作りました。下のグリーンにも、黄色がミックスされたものを使ったことで、明るさを演出してくれています。投稿者様のご両親を思う気持ち、ご両親の投稿者様を思う気持ち、それぞれの優しさを表現しました。

「結婚しないの?」の視線に耐えきれず、私は地元を飛び出した 残してきた両親へ
「結婚しないの?」の視線に耐えきれず、私は地元を飛び出した 残してきた両親へ
「結婚しないの?」の視線に耐えきれず、私は地元を飛び出した 残してきた両親へ
「結婚しないの?」の視線に耐えきれず、私は地元を飛び出した 残してきた両親へ

(写真・椎木俊介)

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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