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花のない花屋
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共にキックボクサーの夢を追った友人夫婦へ、あの頃と同じように“勝てっ”の思いを込めて

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。
新型コロナウイルスで大きな影響を受けた花の生産者を支援している全国農業協同組合連合会(全農)に、その活動の一環として連載にご協力いただいています。
あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

春田浩介さん(仮名)38歳 男性
東京都在住
会社員

    ◇

僕と友人の拓哉さん、亜里砂さんの3人は、プロのキックボクサーでした。チャンピオンになるという夢を叶えるため、同じジムで厳しい練習に毎日一緒に汗を流してきました。

3人のうち誰かの試合には、残り2人のどちらかが必ずセコンド(介添人)につき、試合中のインターバル(休憩)時には汗を拭いたり、傷の手当てなどのサポートをしたりしていました。僕がセコンドにつく時は、2人の背中に向かって“勝てっ”と念を送るのが恒例でした。

試合で結果が出なければ、自分のことのように悔しい。本当にこの3人で、喜怒哀楽さまざまな感情を共有してきたなあと思います。

しかしみんな時期は違えど、ケガや持病が原因で選手を続けることができなくなりました。チャンピオンになるという夢を完全燃焼させることは、かないませんでした。みんな、きっと内心は“ここで終わりたくない”という気持ちで揺れていたと思います。

選手をやめてからは、それぞれ新しい道へ踏み出しました。拓哉さんは介護の道へ、亜里砂さんは食品店を開きたいという夢を目指し 、そして僕は編集プロダクションに就職しました。場所は変わっても、それぞれのフィールドで闘い続けているのです。

僕は就職活動などで忙しく、2人にはしばらく会えませんでした。そのうちになんと、拓哉さんと亜里砂さんが結婚することに! 選手時代からお付き合いされていたようですが 、僕は全く気づきませんでした! 平日はほぼ毎日、午後7時から11時近くまで一緒に練習していたのに……(笑)。

不妊治療の末、今年の4月に男の子が生まれました。名前は「青」。
命名した理由を拓哉さんに聞くと、「自分で限界を決めずに可能性をどこまでも、青空のように広げて欲しいから」と教えてくれました。

キックボクシングでチャンピオンになるという夢を、ひたむきに追いかけ続けた拓哉さんと亜里砂さん。
そんな彼らだからこそ、子どもに自分の可能性を信じることの大切さを伝えたい、そんな思いが感じられました。

拓哉さん、亜里砂さん、そして青くん3人の家族写真を僕が撮りました。青くんも笑ってくれました。僕はファインダー越しに、以前のように、でも今度は青くんも一緒に3人へ向かって“勝てっ”と念を送りました。

自分のどこかでくすぶっていた、キックボクシングへの未練。だけど2人はいつの間にか、新しいステージを歩み始めていたんですね。そして青くんという最高の宝物も授かった。一家の笑顔を見て、僕も自分の道を邁進しようと心に誓いました。あれだけ厳しい練習をこなし、命をかけて闘った経験は、自信につながり誇るべき自分の武器になると信じて。

そんなことに気づかせてくれた友人一家に、心からの感謝と、未来への希望を込めて、花束を贈りたいです。

共にキックボクサーの夢を追った友人夫婦へ、あの頃と同じように“勝てっ”の思いを込めて
≪花材≫リンドウ、アジサイ、キングプロテア、クレマチス、ワシントンヤシ

花束を作った東さんのコメント

花の後ろに広がっているのはワシントンヤシの葉。扇状に束ねているわけではなく、元々この形です。50~60センチはあるでしょうか。今までで一番大きな花束かもしれないですね。命名の理由の通り、限界を決めずに可能性がどこまでも広がっていくイメージです。お子さんのお名前が「青」くんなので、きれいなブルーの花を使いました。上からリンドウ、クレマチス、アジサイです。リンドウは花弁が開いているタイプ。白の花はキングプロテアです。今は青くんより、この花束の方が大きいかもしれないですね。いつかこの花束のインパクトも超えて、大きく羽ばたいてくれることを願っています。

共にキックボクサーの夢を追った友人夫婦へ、あの頃と同じように“勝てっ”の思いを込めて
共にキックボクサーの夢を追った友人夫婦へ、あの頃と同じように“勝てっ”の思いを込めて
共にキックボクサーの夢を追った友人夫婦へ、あの頃と同じように“勝てっ”の思いを込めて
共にキックボクサーの夢を追った友人夫婦へ、あの頃と同じように“勝てっ”の思いを込めて

(写真・椎木俊介)

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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