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家族みんなが幸せな家庭が夢 この夢は幻想ですか?(コンシェルジュ:Base Ball Bear 小出祐介)

読者の皆さまから寄せられた相談やお悩みに、映画を愛する様々な分野の方々が寄り添い、最適の作品を紹介する隔週連載。

コンシェルジュは映画コメンテーター/タレントのLiLiCoさん、CGクリエーター/映画監督のFROGMANさん、Base Ball Bear・小出祐介さんの3人です。今回のコンシェルジュはBase Ball Bear・小出祐介さんです。

家族みんなが幸せな家庭が夢 この夢は幻想ですか?(コンシェルジュ:Base Ball Bear 小出祐介)
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PROFILE
小出祐介

2001年に結成されたロックバンドBase Ball Bearのボーカル・ギターを担当。これまで2度にわたり、日本武道館でのワンマン公演を成功させる。また、音楽プロジェクト・マテリアルクラブの主宰も務める。

〈相談者プロフィール〉
白石 みどり(仮名) 30歳 女性
宮城県在住 会社員

地方勤務の30代、会社員女性です。恋人はいませんが、結婚、出産願望があります。

複雑な家庭環境で育ちました。仕事一筋の父は家事育児にあまり参加せず、母はそれに腹をたて、怒りを我々子供たちにぶつけました。暴力と暴言の絶えない家庭でしたが、なんとか大人になりました。

「信頼できる伴侶をもち、伴侶と仲良く子を産み育て、家族みんなが笑って幸せに過ごすこと」が私の人生最大の夢です。ところがこの夢が、かえって夢の実現から遠ざかっている遠因になっているのかもしれないと感じます。

かつて結婚を意識した恋人がいましたが、彼はいつも自分のことに精いっぱいでした。一緒になったとしてもあまりこちらを向く余裕がないかもしれない。そうすると、両親と同じような関係になってしまうかもしれない。そう考え、別れを選びました。

同年代の友達は次々と結婚、出産していきます。祝福の一方で、うらやましさと焦りを感じます。

私は暴力と暴言の絶えない家庭しか知らないので、いったいどのようにして、どのような伴侶を得て、どのようなコミュニケーションを重ねていけば、家族みんなが幸せな家庭を築けるのか、道筋を描けずにいます。

他の家庭の話を聞いていると、それぞれに光と闇があるようで、幸せの定義は一筋縄にはいかないということも感じます。 私の思い描く、暴力と暴言のない家庭の「幸福」、私の夢は、果たして幻想なのでしょうか? 夢の実現のためには、何をしたらいいのでしょうか。漠然とした不安が消えません。

人はみな自分の思う地球の上に立っているんだ

いつも、おたよりから相談者さんの背景をしっかりと想像して答えようと努めているのですが、今回はかなり悩みました。

ご家族のことや家庭環境のこと、白石さんご自身や将来のことを想像すればするほど、自分が口出ししていいものなのだろうかと……。

何周も考えて浮かんだことをまず簡潔に答えますと、「両親と同じになってしまう部分」もあれば「その両親だから同じにはならない部分」もあるのではないか、と。

あくまで僕の考えという範疇(はんちゅう)ですが、人には元から持って生まれた要素と、環境で育まれる要素があるかと思います。例えば僕は、容姿や声は父にすごく似ています。ただ、趣味で一つのことを追い続ける父に対して、僕は広く浅く、というタイプです。これは母に似ている部分だったりします。遺伝、なんですかね。

また、父は派手な食事(ステーキやケーキ)が好きですが、僕は素朴な和食(納豆ご飯とみそ汁と漬物みたいな)が好きです。そうなっていった理由はおそらく、母の作るそんな朝ごはんが一番好きだったからです。これは環境の影響といえるのではないでしょうか。

家庭だけではなく、学校や社会生活で育まれる部分も大いにあると思いますし、人格は、こういった要素の複雑な組み合わせで形成されているような気がします。

白石さんが不安に感じられている「ご両親と似ている部分」が一切ないとは僕には判断ができません。ただ、そういうご両親に育てられたからこそ、似ないように気をつけてきたこともたくさんあるのではないかと思うんです。そもそも、その不安を感じているという時点で、すでにご両親とは異なる人になっているという印象を受けます。もしかすると性格的なことで、どうしようもできないこともあるかもしれません。

しかし、同時に「そういう家庭で育った」ということを反面教師として、全く違う家庭を築いていくことも不可能ではないと、僕も信じたいです。白石さんの「幸せな家庭を築きたい」という夢を思うと、お相手がどんな方であるかというのも大切だとは思いますが、それはきっと焦らなくても大丈夫です。

幸せはレースではありませんから、周りと比べなくていいんです。まず白石さん個人の幸せを、自分のペースで追いかけていってください。

さて、今回おすすめする映画は、クリント・イーストウッド監督『パーフェクト・ワールド』(1993年)です。

母と姉と暮らす8歳のフィリップは、信仰上の理由でハロウィーンに参加できません。そのことで、友達と打ち解けることができず寂しい思いをしていました。

同じ夜、刑務所を仲間と共に脱獄したブッチは、フィリップの家に押し入り彼を誘拐。車を奪い逃走します。ブッチを少年院に送ったことがある警察署長・レッドは、犯罪心理学者・サリーと共にブッチを追います。レッドがかつてブッチを逮捕したのは、ワルだったブッチの父親が彼に暴力をふるうため、少年院にいる方が彼にとって安全だと判断したからでした。

フィリップに手を上げた仲間を射殺したブッチは、フィリップと共に逃避行することになります。二人には友情のような、父と子のような関係性が芽生えていました。二人は追っ手をかわしながら、ブッチの父からの絵はがきに写っていたアラスカを目指します。

誘拐犯と被害者という関係のブッチとフィリップが、擬似的な親子になるという物語であるわけですが、僕が白石さんに注目してもらいたいのは「誰もが心にパーフェクト・ワールド(理想や信念)を抱いている」という、テーマの部分です。

ブッチは父から愛されたかった、だからフィリップを息子のように思い、道中で出会った子供に手をあげるような親には銃を向けます。フィリップは、ブッチからハロウィーンの楽しさ、ひいては自分の幸せを追いかけることの喜びを教わります。二人で見た理想郷(パーフェクト・ワールド)はアラスカではなく、道中過ごした時間だったんです。

また、レッドにも古き良き時代からの警察としての、サリーには気鋭の犯罪心理学者としての信念があります。信仰心の強いフィリップの母にも、道中知り合う家族の父親たちにも、思い描く家族の形があるでしょう。それもまた、彼らにとってのパーフェクト・ワールドであるんです。

僕は昔この映画を見たときに「人はみな自分の思う地球の上に立っているんだ」と思いました。そして、きっとそれぞれの地球の姿を完全には共有できないから、すれ違ったり、わかり合ったりしようとするのではないかと。そんな、一人一人の地球の集まりが社会だとするならば、家族もまた色んな形の小さな社会です。

白石さんがおっしゃるとおり、光と闇があるでしょう。考えてみれば、僕も自分の家族のことを知っているようで、知らないことだらけです。両親が親である以前に、個人としてどんな風に生きてきたのか、どんなことを思い考えている人なのか、あまり聞いたことがありません。

逆に、家族に自分のありのままを話したこともないです。それでも「家族」だと思い、育ててくれた親に感謝しているので、なんだか不思議な気持ちになってきました。

白石さん、うまくまとめきれずごめんなさい。ここまで書いてもまだ考えている状態なのですが、白石さんに試してほしいことを最後に提案するなら、僕でいう「自分の地球」についてを、いつかお相手の方とじっくり話してみるというのはいかがでしょうか?

お互いがどんな世界観で生きているのかを照らし合わせてみる。そして、二つの地球が並んで回ることができるのかを想像しあってみる。あえて「フィーリング」の一歩先に進むことで、見えてくるものもあるような気がします。

小出祐介さん推薦映画

パーフェクト・ワールド

監督:クリント・イーストウッド

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