&M

THE ONE I LOVE
連載をフォローする

ビリー・アイリッシュ、くるり……etc. 羊文学が選ぶ“愛”を感じる5曲

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか──。実力派アーティストが“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。

今回は、12月9日にメジャーデビューアルバム『POWERS』をリリースしたスリーピースロックバンド・羊文学が5曲をセレクト。普段あまり歌詞の内容には着目しないという彼女らが、楽曲に“愛”を感じるポイントはどこにあるのか。&Mでは塩塚モエカ(Vo, G)、河西ゆりか(B, Cho)、フクダヒロア(Dr, Cho)の3人にインタビューを行い、彼らならではの音楽との接し方について聞いた。

セレクト曲

01. Billie Eilish「everything i wanted」
02. 湯川潮音「風よ吹かないで」
03. くるり「ジュビリー」
04. 世武裕子「1/5000」
05. 羊文学「ghost」

 

■Billie Eilish「everything i wanted」(選曲:塩塚)

塩塚 若くしてグラミー賞を取るなど、望むすべてを手に入れたビリーが感じているプレッシャーや違和感、孤独を歌っている曲です。あまりにも有名になりすぎてしまったことで、そんな自分を1人の人間として捉えてくれる人が本当にいるんだろうかみたいな。そんな中で「君の“自分に対する考え方”を/僕が変えてあげられたなら/どうして『お前にはふさわしくない』って声が/聞こえてくるのかなんて、君は思わなくなるのに(If I could change  the way that you see yourself  You wouldn’t wonder why you’re hear  they don’t deserve you)」という歌詞があるんですけど、これは共作者であるビリーのお兄ちゃん(フィネアス・オコネル)の視点なのかな。ちゃんと寄り添ってくれる人の存在が感じられて、曲としては暗いんですけど、すごく温かいものを感じます。

私は普段あまり曲のテーマとか歌詞の内容に注目して音楽を聴くことがないんですけど、改めて歌詞に向き合って聴き直してみたら、この曲にすごく愛を感じました。そもそもビリーの音楽を好きになったのは、音数の少ない感じがクセになるなと思ったからなんです。The XXとかジェイムス・ブレイクとかもすごく好きで、音数が少なくてカッコいい音楽に魅力を感じるんですよ。なので歌詞には全然注目してなかったんですけど(笑)、改めてじっくり読んでみたらますます好きになりました。

 

■湯川潮音「風よ吹かないで」(選曲:河西)

河西 私もあまり歌詞で音楽を聴くタイプではないんです。とくに洋楽はそうなんですけど、日本のフォークソングなどは言葉が入ってくるなと感じることがあって、これを選びました。具体的なお話を描いていないところがいいなと思って。いろんな解釈ができるというか、「そこにある何か大切なものが消えそうなんだけど、消えないでほしい、もうちょっと感じていたい」みたいな気持ちが表現されていて、そこに愛を感じる。私ははっぴいえんどとかも好きで聴くんですけど、そういう昔の日本っぽい歌詞が好きなのかも。楽曲構造としても、シンプルな作りの中にフックを効かせる姿勢は羊文学にも通ずる部分があるかもしれないです。

ビリー・アイリッシュ、くるり……etc. 羊文学が選ぶ“愛”を感じる5曲

河西ゆりか

塩塚 あんまり素直に作りすぎるとよくないなとは思っていて。私の趣味みたいなところもあると思うんですけど、高校生くらいの頃は「とにかく変なことをしよう」みたいな時期もありました。今は単純なパワーコードとかも全然使うし、音階をシンプルに鳴らしたりもするんですけど、それでも自分の耳になじむ素直すぎるコード進行は意識して避けていると思います。

 

■くるり「ジュビリー(Jubilee gemischt von Dietz)」(選曲:フクダ)

フクダ もともと自分が聴くのはシューゲイザーだったりオルタナティブだったりするんですけど、日本のロックもすごく好きで。“愛の曲”というテーマで選ぶならちゃんと日本語の詞があるものにしようということで、それならくるりだなと。「ジュビリー」は大鵬薬品工業「チオビタドリンク」のCMに使われていた曲で、菅野美穂さんと平山浩行さんが2人でいるシーンの映像とともに印象に残っています。小田急線の新百合ヶ丘から登戸まで行くときの感じ、多摩川が見えてくる春のイメージが連想されて、そういうのがなんかいいなと。愛や恋の曲として最初に思い浮かべるのは、個人的にはくるりですね。

ビリー・アイリッシュ、くるり……etc. 羊文学が選ぶ“愛”を感じる5曲

フクダヒロア

塩塚 私もくるりはめっちゃ好きです。岸田(繁)さんはすごく音楽偏差値が高いというか、全部わかってやってらっしゃいますよね。私はよくわからずに「この響きがいい感じだな」とか感覚でやってますけど、クラシックとかも全部通った上できちんと作っている岸田さんのことは尊敬しています。

フクダ 羊文学も、3人それぞれ違うジャンルを吸収して自分の音に昇華しているので、バックグラウンドはけっこう幅広いんですよ。2000年代くらいのオルタナとかシューゲイザーに近い音でやってはいるんですけど、そういうものを知らない人にも聴いてほしい思いがあるので、ドラムの音色やフレーズを工夫して、あまり限定しないようには心がけています。

塩塚 羊文学は「3人で鳴らせる以上の音を入れない」と決めてやっているので、今のところはバンドの音にこだわってはいるんですけど、必ずしも「ガレージロックがやりたい」と思っているわけではないんです。私自身それほどバンドサウンドを好んで聴くほうでもなくて、どちらかというとアンビエントやピアノ音楽、エレクトロなんかが好きなんですよね。

 

■世武裕子「1/5000」(選曲:塩塚)

塩塚 これは映画『生きてるだけで、愛。』(関根光才監督/2018年)の最後に流れてくる曲で、その映画自体もすごく好きなんです。恋人とうまくいかないときに自分がとってしまった嫌な行動と同じことを主人公が全部やっていて、すごく響いたというか。映画の最後で「もうこの2人はダメだ」みたいになったところでこの曲が流れてくるんですけど、映像も含めてめちゃめちゃきれいだったんです。歌詞は「あわい あまい めまい」みたいに感覚的な言葉が繰り返されるだけなんですけど、それでいて恋愛における寂しさみたいなものが曲全体から感じられる。サウンド的にはYouth Lagoonの「17」(*)なんかにも通ずるものが感じられて、そういうところも好きですね。

歌詞から意味性を排除することでイメージを増幅するみたいなやり方は、羊文学では現状ほとんどやっていないと思います。ただ、作曲をするときは歌いながら作っていくことが多いので、自分が歌っていて気持ちいいかどうかは気にしますし、意味よりも音を優先している部分が自然と残る場合もあるかもしれないです。今回のアルバムで言えば、「mother」なんかは歌詞というよりもギターやドラムの鳴らし方で“大きな海”を表現していたりしますし。あと、ちょっと違う話ではありますけど、表記をひらがなにするか漢字にするかとか、文字として並べたときにどこでどう改行したら“詩”として成り立つかっていうことも考えて作ったりはしますね。あまり誰も気にしない部分ではあると思うんですけど。

(*)Youth Lagoon「17」

 

■羊文学「ghost」

塩塚 アルバム『POWERS』から、“愛”をテーマに1曲プッシュするならこれかなと。一昨年から去年にかけて、身近な人が亡くなってしまうことが何回か起きて、人の存在について考えることがあったんです。亡くなることに限らず、友達とか恋人とかが目の前からいなくなることも含めてなんですけど、目に見えることだけがその人の存在を決めるわけじゃないなって。実際に存在しているかどうかより、自分がその存在を信じるかどうか。目には見えていなくても、誰かが「いない」と言っても、自分が「いる」と思えばいる……それはすごく愛だなと思うんです。そういうことを歌った曲です。

ビリー・アイリッシュ、くるり……etc. 羊文学が選ぶ“愛”を感じる5曲

塩塚モエカ

河西 楽曲としてはヘビーなんですけど、演奏は意外と繊細だったりもして。途中でパッとシーンが変わるところがあって、はかなくて寂しい感じなんですけど、ミックスやマスタリングのときに少し音をいじっただけで雰囲気が変わってしまったんです。それくらい繊細なバランスで成り立っているパートなので、慎重に作業しました。

フクダ ドラムに関しては、低くて温かいスネアの音を中心に3点(キック、スネア、ハイハット)で構築されているんですけど、クローズドリムショット(編注:スネアドラムの“リム=縁〈ふち〉”を叩く奏法)を使っている展開が自分では気に入っています。そこを聴いてほしい気持ちが強いです。

塩塚 ギターは、冒頭のジャラーンっていうアップピッキングのストロークがポイントです。この曲がラストナンバーなんですけど、それまでの流れを全部ひっくり返すというか、このジャラーンのために前の11曲があると言ってもいいくらい(笑)。ここにアルバムのすべてが詰まっています!

 

(企画制作/たしざん、取材・文/ナカニシキュウ)

■羊文学セレクト「THE ONE I LOVE」プレイリスト

 

■羊文学『POWERS』

 

ビリー・アイリッシュ、くるり……etc. 羊文学が選ぶ“愛”を感じる5曲

 

■Profile

羊文学ひつじぶんがく

Vo.Gt.塩塚モエカ、Ba.河西ゆりか、Dr.フクダヒロアからなる、繊細ながらも力強いサウンドが特徴のオルタナティブロックバンド。
2017年に現在の編成となり、これまでEP4枚、フルアルバム1枚、そして全国的ヒットを記録した限定生産シングル「1999 / 人間だった」をリリース。
今春行われたEP「ざわめき」のリリースワンマンツアーは全公演SOLD OUTに。東京公演は恵比寿リキッドルームで行われた。
2020年8月19日にF.C.L.S.(ソニー・ミュージックレーベルズ)より「砂漠のきみへ / Girls」を配信リリースし、メジャーデビュー。
12月9日にニューアルバム「POWERS」リリース。しなやかに旋風を巻き起こし躍進中。

■INFORMATION

【LIVE SCHEDULE】

羊文学 Tour 2021 “Hidden Place”
2021年1月31日(日)愛知 名古屋 BOTTOM LINE
2021年2月11日(木・祝)大阪 梅田CLUB QUATTRO
2021年2月26日(金)東京 STUDIO COAST
チケット一般発売日:12月19日(土)
前売¥4,000(税込・ドリンク代別)*電子チケットのみの取り扱い

羊文学 Tour 2021 “Hidden Place” Online Live
2021年3月14日(日)
※配信開始時間、配信チケット代、配信チケット発売日などの詳細は追って発表

【関連リンク】

羊文学 Official Website
https://www.hitsujibungaku.info/

羊文学 | ソニーミュージックオフィシャルサイト
https://www.sonymusic.co.jp/artist/hitsujibungaku/

羊文学 (@hitsujibungaku) | – Twitter
https://twitter.com/hitsujibungaku?lang=ja

羊文学(@hitsujibungaku) | – Instagram
https://www.instagram.com/hitsujibungaku/

REACTION

LIKE
COMMENT
0
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル

    *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら