宇賀なつみ わたしには旅をさせよ
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癒やしを求めて鬼怒川温泉へ 宇賀なつみがつづる旅(16)

フリーアナウンサーの宇賀なつみさんは、じつは旅が大好き。見知らぬ街に身を置いて、移ろう心をありのままにつづる連載「わたしには旅をさせよ」をお届けします。今回は2013年に癒やしを求めて訪れた鬼怒川温泉。そこへ向かったわけは、大学時代の旅にありました。

(文・写真:宇賀なつみ)

「女盛り 鬼怒川」

女が最高値で売れるのは27。
中学生の頃好きだったドラマの主人公が、そう言っていた。

売れるかどうか、売りたいかどうかは別として、
あの頃からずっと楽しみにしてきた女盛りだったのに、
私はちっともイケていなかった。
自己評価は、最低だった。

2013年年末。
27歳の私は、とても疲れていた。

日々の仕事が忙しく、時間に追われていたのに、
プライベートも充実させなければと躍起になって、
余計に心をすり減らすような。
もっとこうなりたいという欲もあって、
無駄にジタバタしていたような。

年末年始の休みも数日しかなかったが、
やはり、どこかに行きたかった。
でも、疲れていた。
そこで選んだのが、鬼怒川だった。
女盛りにしては、渋い選択だろうか。

実は、大学3年生の秋。
テレビ局のアナウンサー採用試験を受けていた頃、
私は、ある局の最終面接まで進んで、
不採用になってしまったことがある。

最初から受かるわけがないと思っていたけど、
やはりそれなりにショックで、
翌日、沈んだ気持ちで大学の授業を受けていたのだが、
急に温泉に入りたいと思い立って、そのまま鬼怒川に向かった。

素泊まり一泊5000円の宿で、ゆっくり温泉に入り、
有名な観光地である龍王峡に寄って、
五龍王神社にお参りをした。
すると、なんだかスッキリして、元気になった。

その後、帰ってすぐにエントリーシートを書いて、
テレビ朝日に送った。
そんなことを思い出したのだ。

あそこだったら私を癒やしてくれる。
そんな確信があった。

急に誘っても付き合ってくれる親友がいるのは心強い。
特急に乗って約2時間。
ぼーっとしていたら、あっという間に着いてしまった。

駅前で車を借りた。
思いつきでこんなことができるようになったのは、
大人として、きちんと働いているからだ。
6年前より成長していることを確認して、少し安心する。

すっかり雪が積もった山を、あてもなくドライブした。
天気が良くて、本当に気持ちよかった。

車を運転するのが好きなんだということを、
久しぶりに思い出した。
寒いのは苦手だけど、雪景色は好きなんだということも。

雪道

旅館に着いてからは、ひたすらダラダラした。
温泉に入って、お酒を飲んで、
こんなことをしたい、あんなこともしたいと、
夜中まで話し続けていた。
女盛りは、悩みが多いのだ。

翌朝、龍王峡に向かった。
雪の積もった渓谷を眺めながら、階段を下りていく。

6年ぶりに五龍王神社にお参りをした。
あの時のお礼と、その後の報告と、
これからも見守っていてくださいというお願いを、
ゆっくり時間をかけて、丁寧にお伝えした。

神社

 

最後に寄った湖の駐車場で、
急に車のエンジンがかからなくなってしまった。
寒さのせいだろうか。

予定通りに物事が進まないと、
焦ったり落ち込んだりしてしまう癖があって、
それがずっと嫌だったのだが、この時は何も感じなかった。
業者に電話をして、待つ間、湖畔の喫茶店でコーヒーを飲んだ。

余裕があるって、いいことだなぁ。
じわじわと元気になっていることに気がついた。

船

翌2014年は、大きな変化の年だった。
朝の情報番組を担当するようになって、
初めてバラエティー番組のMCに挑戦し、
退社した今でも担当している番組もスタートした。

待っていても何も変わらない。
自分の心を元気にできるのは、いつだって自分だ。
自分が変われば周りも変わり、世界を変えることだってできる。

2020年年末。
旅好きにとってはつらかった一年を振り返り、
ある旅を思い出して行った、ある旅のことを思い出し、
また旅に出たくなる。

こんなことを繰り返しながら、
あっという間に、おばあちゃんになるのだろう。

きっとその頃も、女盛りだ。

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