UAさん「これからは風の時代。自分軸を意識して、心を満たしていたい」
「eatrip」を主宰する料理人の野村友里さんと、現在カナダの島で暮らす歌手UAさんの往復書簡「暮らしの音」。「私の人生は、まわりと比べるとだいぶ周回遅れ」とつづる野村さんのお手紙に、UAさんが書いたお返事は――。

野村友里さんのお手紙「周回遅れの私、ジャムを炊きながらの妄想」から続く
友里っぺ
あなたのお手紙が届いた頃、ちょうど私も、カリンのジャムを炊いていたの。いわゆる果物と違って手間がかかるのねー、カリンって。
でも瓶詰めした時の達成感はひとしお。先月、栗の渋皮煮なんてのも、娘と一緒にやってみたんだけど、これまた大変ね。お次はまた来年で!って感じだわよ。だから、こんなクリエーションを、しかもエッジーに(笑)毎日行ってるあなたには、やっぱり脱帽する。採れたての命にいつも触れててさ。

きっとあなたの場合はさ、この半世紀にもわたる年月の中で、“お料理の時間”が、ほとんど瞑想(めいそう)にも近いような時間が、私の想像する以上にいっぱい費やされていて、そこに神秘があるのよね。人生の秘密が。「周回遅れ」なんて表現もウケるけど、それどころか、五感を通じて深く到達しているものがあるのじゃない? 家があるとか、子供があるとか世間一般のはかり方もひとつだけど、きっと私などには到底、開けることも、見つけることさえできないような秘密のドアをたっくさん開けてるんだろうなって思うのよ。
私の場合、昨今となっては、自宅での音楽創作時間は、ほとんどPCとにらめっこ。今や、歌詞を書くにもノートはスケッチまでで、本チャンはどう言うわけか、PCに打ち込むほうがピントが来るんだからさ、まったくねー。そして何時間かに一度は、木とか葉っぱとか、畑に触りに行かないと、血流が滞ってくるのがわかるもの。
そうは言っても、そんなITのすさまじい進化のおかげで、日本列島から遠く離れて2千里、音楽創作における遠隔作業がはかどるのだから、誠にありがたいわけです。けれども「そうやってソウルを減らしてやいないかい?」と鏡の中の私がささやいてくるのも(怖)、無視はできないのよ。


それから、ナニよ、”解禁”って(笑)。うーこのインスタね。「禁じてた」わけじゃないけど遠~い開かずの扉ではあった。。。それこそ「何周遅れとんねん!」な、まるで時代の最後尾にいた私が、ついにインスタグラムを始めるんだからね。それも、友里の八百屋、eatrip Soilでのライブ『UAtrip』の打ち上げの席にて、ギタリスト西田くんが、全部セットアップしてくれて(笑)。
そう、そのSoilでのライブ、急スピードで話は進んで、あっという間に本番。山形ビエンナーレの配信ライブからの流れもあって、ベーシストなのにピアノもうまい鈴木正人くん(Little Creatures)とのピアノデュオ。
前日、ふと思いつき、歌うことにした『You’ve got a friend』に、こちらも急なお願いにもかかわらず、こころよく飛び入りしてくれた面々は、よっちゃん(Ego- Wrappin)、タカシくん(ハナレグミ)、JQ (Nulbarich)、阿部ちゃん(Never Young Beach)、そしてHIMIくん! これまでにない新鮮なドキドキ感で、まだ軽く赤面しちゃうほどですが、結局その日の思い出はそこに集中しちゃってる(笑)。その日のライブは11曲ほどだったけど、2時間超え。予定通りに行った演奏はもちろん満足してるけど、やっぱり人と交わる即興感のあるセッションはライブのだいご味ね。

そんな一つのニューコ(Newうーこ)を、私自身が発見できるのは、ひとえに友里の発酵力、泡泡力のおかげだし、その柔らかな手で背中を一押ししてくれたから。誠に感謝しておりますよ。 それこそ、チェチェインコ(Jazz Clubでアルバイトしてた頃の別名)時代から、Carole Kingの『You’ve got a friend』は、心に殿堂入りしてたのだけど、この秋、大事な人とさえ簡単には逢(あ)えなくなってしまった世界で、心底、胸を打つなぁと感じて、歌いたくなった。
そこに、そんなゴージャスでナウい5人が集ってくれたんだもの。宝物のような時間でした。 そんなこんなで幸せで、勢いよくインスタオープンよ。 始めたら始めたで、面白い。実は私のような日本を離れて暮らす者にうってつけじゃないか!というわけで、日々、徒然(つれづれ)なるままにアップしておりますよ。


ところで先日、自分のラジオ番組で、星読みライターの石井ゆかりさんと対談させていただいたのだけど、そこで話題もちきりだったのは、星模様としては、今月22日に2世紀にもかけて続いた「地の時代」から「風の時代」へと切り替わること。
地が象徴するのは、「物質的なこと、所有や獲得、資本主義社会、そして地縁、血縁」それに対して、風は「コミュニケーションや関わり、知、情報、論理、テクノロジー、そして出逢い、友情、ネットワーク」となるのだそう。「所有」から、「共有」の時代へ。そのサウンズ、かなり興奮しない? 当然と思われてたことが劇的に変化することは、コロナ禍において、すでに体験させられている。もしかしたら、それは、来たる時代のすさまじい変遷のための助走段階なのかもしれない。気軽に逢えなくなったからこそ、大事な人との交流はなおさら重要に。そこでの対話は、ことさらに深みを増す。

風の時代のキーワード、「情報」はますます多岐にわたるだろうし、一体どのようにして自らの審美眼を養えばよいのかと再考する。長く付き合ってる身体(からだ)とはいえ、だからこそ、毎朝生まれるつもりで五感を敏感に、自分軸をしっかり意識して、やっぱり心が喜ぶことで満たしていることが必要でしょ。そして満たされた心は前向きに、勉強心を奮起させるものよね。考察力、洞察力、判断力。根っこを生やした自分軸で体験して、もったいぶらず、感じたことを恥ずかしがらず、大事な人に投げかける。そして、風というエレメントの通り、「目に見えないもの」への意識が一段と強くなるのではないかと言われてる。ウイルスも分かりやすい例だけども。


3.11からのショック状態が長く続いた自分としては、それでも変わらない社会構造を目の当たりに、こりゃどうも、生きてるうちに新世界を見ることはないのかしらと、せめては子育てを通して、未来に美しい世界が芽吹くための種まき作業を続けていたいと、暮らす場所も転々としてきたわけです。しかし! たかがそんな星模様、と言われようと、されど! 地球をとり囲む大宇宙の模様、この大イベントに、胸を躍らせずにはいられないのよ。
パラダイムシフトが起こるとなると、それ相当の葛藤と犠牲が伴うかもしれない不安も隠せないけれど、笑いを忘れず、しなやかに立ち回るしかない。ねえ、友里、私たちは、全くすごいタイミングに生きているね――――。 みずがめ座的世界、風の時代に、さあ、飛び込もう。一人ひとりが世界を変える力があるということを忘れずに。 2025年あたりには、嵐も落ち着いて、風通しのいい新世界に生きているかもしれないよ。
うーこ