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中村アンさん「自分はいったい何者……。俳優として覚悟を決めた30歳」

中村アン。その名を聞いて思い浮かべるのは、髪をかきあげる姿? 元気いっぱいの輝く笑顔? 
もしそう思ったとしたら、映画「名も無き世界のエンドロール」の彼女を見て間違いなく驚く。とんでもなく傲慢(ごうまん)な女に出会うからだ。

彼女が演じるのは、政治家の父を持つトップモデルのリサ。キダ(岩田剛典)とマコト(新田真剣佑)が働く自動車修理工場に、突然ポルシェの修理依頼にやって来た“お嬢様”だ。リサに異常な興味を持ったマコトは、住む世界の違う彼女と付き合うために一念発起し、死に物狂いでお金を稼ぎ会社経営者になった。キダは、親友のマコトが計画する“最高のプロポーズ”を後押しするため、命をかけて協力することを誓う。

「リサを演じる上で、とにかく高飛車な女性を意識しました。無免許で車に乗ってしまうような人物なので、自分のこと以外はあまり気にしないのではないかと考えました。後半に向けて落ち着いた女性になったように見えますが、根っこの部分の性格は変わっていないので、そこはブレないよう心がけました」

中村アンさん「自分はいったい何者……。俳優として覚悟を決めた30歳」

リサ(中村アン)写真左、 マコト(新田真剣佑)/ (c)映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会

リサという役で、彼女は「芝居の景色が変わった」という経験をした。すべては私の思い通りになるといった不遜な態度。クライマックスでのマコトからの思いがけない告白に感情を爆発させる姿は、見ている側の心拍数も上がるはず。

「最後の(人を人とは思わないような)セリフは感情が乗っていたので、全く抵抗がなかったです。本当に怒った時に人は物を投げたくなる、その行動が自然に出ていたという感じです」

中村アンさん「自分はいったい何者……。俳優として覚悟を決めた30歳」

(c)映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会

「この映画のお話をいただき、脚本を読んでこれはすごい女性だなと……。でも、今まで演じたことのない役だったので、不安ではありましたが『これはチャンスだ』とも思って挑戦することにしたんです。それから、この作品でいただいた役を堂々と自分のものにして、みんなを驚かせたいと思えるようになりました。初主演の時に抱いた覚悟と思いが、この映画の出演が決まった時によみがえってきました。リサを演じる上で共演者からリサを引き出してもらうことも多くあったので、共演者との向き合い方もすごく学びました。演じたことのない役はすごく不安ですが、やり切った時の達成感は大きいです」

何者でもない自分への焦り

中村さんは、そもそも俳優になりたいと思って芸能界入りしたわけではない。子供の頃から憧れていた職業はキャビンアテンダント。両親は彼女が金融業など“堅い職業”に就くことを願っていた。18歳で初めてスカウトされたことで芸能界が身近になり興味を覚えたが、高校、大学とチアリーディングに没頭した。ちょうど就職を考える時期に芸能界へ挑戦したいという思いがどんどん膨らみ、両親に3年の猶予をもらって芸能界へ飛び込んだ。だが、23、24歳の頃は「本当につらかった」と正直に振り返る。

中村アンさん「自分はいったい何者……。俳優として覚悟を決めた30歳」

「自分が選んだこの芸能の仕事にまったく誇りが持てませんでした。大学を出て1、2年目の頃は友だちみんなが社会人として忙しそうで、『寝られない』と言っていたことがすごく羨(うらや)ましかった。大学時代はチアリーディング、授業、バイトとものすごく忙しかったのに、芸能界に入ったらポカンと予定が空いちゃった。当時は今みたいにSNSもなくて、なにかを発信するということが出来なかったので『待つ』という時間がすごく増えました。友人に『何してるの?』と聞かれても、自分でも『なんだろう?』と思うほど。それがすごく悔しくて、その思いをずっと引きずっていましたし、実家暮らしで肩身も狭かったんです」

自分は何者でもないという焦り。両親と約束した3年が来てしまうし、ここで希望が見いだせなかったら潔く芸能界は辞めよう。この先も生きていかなければならないのだから。そうスイッチが入ったのは25歳の時だった。

「まずはテレビにたくさん出演できるよう目標を定めました。チアリーディングのお陰で、『頑張る、続ける、耐える』ことは得意です。頑張れるものがあるのなら、そこに食らい付いていこうと覚悟しました」

『アンちゃんはアンちゃんでしかない』という感じ……

その言葉通り、中村さんは毒舌キャラや前髪を無造作にかき上げる仕草(しぐさ)、元気で美ボディーの持ち主……と、攻めの姿勢でキャラクターを確立させていく。そして、28歳の時に「土曜プレミアム ~ほんとにあった怖い話夏の特別編2015~」(15年、フジ系)へ出演。本格的に俳優業への一歩を踏み出した。だが、これが散々だった。

「笑ってはいけないところで笑ってしまって。チアリーディングは笑わなければいけないのでそれが抜けない。真剣にやっているのですが、口角を上げすぎてしまうんです。走っている時でもそうだったと思います。役に入れていないことに悔しさを感じたこともありました」

中村アンさん「自分はいったい何者……。俳優として覚悟を決めた30歳」

ところが、2015年の秋に出演したドラマ「5→9~私に恋したお坊さん~」(フジ系)で演じた役が等身大だったこともあり、少しだけ芝居を楽しいと思える瞬間があった。このドラマ以降、「いただいた目の前のお仕事を頑張って結果を残していく」ことをテーマに取り組んでいった結果だろう、11クール連続でドラマへ出演を果たした。もっとも仕事を着実にこなしてはいたが、そう簡単に演技ができるようになるわけではない。30歳くらいまでいつも悩んでいた。

「あまり役になりきれていないという思いがありましたし、『アンちゃんはアンちゃんでしかない』という感じが自分でもすごくよくわかっていました。お芝居はすごく難しいし、どうしたらいいのだろうと思いながらも、きっかけがずっと掴(つか)めなかったんです」

そんな時にオファーを受けたのが、初主演作「ラブリラン」(18年、日本テレビ系)だ。実年齢と同じ30歳で恋愛経験のない、こじらせ女子という主人公。初主演なので覚悟を持って撮影に挑みました。撮影2回目で、すでに「記憶がない」ほど死に物狂いの日々。覚悟と熱意は周りにも伝わり、「アンちゃんは芝居をしたい人なんだ」と思ってもらえるようになっていった。

成長は挑戦から

中村アンさん「自分はいったい何者……。俳優として覚悟を決めた30歳」

「名も無き世界のエンドロール」は、「危険なビーナス」(20年、TBS系)と同じ佐藤祐市監督だ。2作品を通して、俳優にとって大切な「呼吸すること」を教わった。

「独りよがりになったり、急いでセリフを言ったりしてしまう時に、監督からもっと相手を見ること、受けることを受けることに気をつけるよう言われることがありました。『間を取る』ということもとても難しいです。もっと役に入ってその人を理解して、自分に落とし込んで演じなければ。全然できていないことばかりですが、できないことをできるようにしていくことがとても楽しいですね」

頑張る、続ける、耐える――。人生を輝かせるためにこれ以上大切なことって多分、ない。これが得意な彼女ならきっと、これからも見る人を驚かせてくれるはずだ。

(文 坂口さゆり/写真 山本倫子)

     ◇

中村アン(なかむら・あん)俳優
1987年9月17日生まれ。東京都出身。多数のCM、テレビドラマ、映画などで活躍。


「名も無き世界のエンドロール」

岩田剛典、新田真剣佑出演のサスペンスエンターテインメント。複雑な家庭環境で育ち、寂しさを抱えて生きてきたキダ(岩田)とマコト(新田)は幼なじみ。同じ境遇の転校生ヨッチ(山田杏奈)も加わり、3人は高校卒業後も家族のように支え合いながら生きていた。だが、20歳の時にヨッチが2人の前からいなくなってしまう。そんなある日、2人の前に、トップモデルのリサが高級車の修理の依頼に飛び込んでくる……。

中村アンさん「自分はいったい何者……。俳優として覚悟を決めた30歳」

監督:佐藤祐市 原作:行成薫 出演:岩田剛典 新田真剣佑 山田杏奈 中村アン / 石丸謙二郎 大友康平 柄本明
1月29日から全国公開
(c)行成薫/集英社 (c)映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会
配給:エイベックス・ピクチャーズ

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