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新たな文化もたらす地域の創造者 龍崎翔子さんが尊敬する同業のフロントランナー

ポスト・ミレニアル世代を代表する経営者の一人、龍崎翔子さん。19歳のときにホテルのプロデュース・運営を行う「L&Gグローバルビジネス」を立ち上げ、富良野、層雲峡、湯河原、京都、大阪で自社ホテルを運営する。

「ジャケ買いされる空間」「onsen2.0」「#shelovesyou」――。施設ごとに独自のコピーを掲げ、物語性を感じさせる空間デザインが特徴だ。そこから生まれる新しい宿泊体験は若い世代から高い支持を受け、そのプロデューサーである彼女自身もインフルエンサーとして注目を集める。

そんな龍崎さんにとって、「すごい同業者」はどこなのか。彼女が挙げたのは「UDS株式会社(以下、UDS)」。ホテルやカフェなど街の文化拠点となるような施設の運営や事業企画、建築設計などを手がけている。龍崎さんにとって学ぶところが多い相手というUDSの魅力を聞いた。

<プロフィール>
龍崎翔子(りゅうざき・しょうこ)
L&Gグローバルビジネス代表/ホテルプロデューサー。2015年にL&G社を設立。15年に「petit-hotel #MELON」、16年に「HOTEL SHE, KYOTO」、17年に「HOTEL SHE, OSAKA」を開業。「THE RYOKAN TOKYO」「HOTEL KUMOI」のリブランディング・運営も手がける。

■こんなトップランナーも語る「競合のすごさ」
・「これぞ究極の施設」星野佳路さんが絶賛、顧客をリピートさせる圧巻のシステム
・“世界の頂点に立った男”鈴木成宗さんが敬服するクラフトビール界の雄
・「リスペクトしかない」 スクウェア・エニックス吉田直樹さんが背中を追いかける業界の巨人

 

地域をアップデートする先進的ホテル

──取材に先立ち、龍崎さんに「リスペクトしている同業者」というお題で質問したところ、UDSを挙げられました。昨年12月20日に建物の老朽化で惜しまれつつ閉館した目黒のホテル「CLASKA」をはじめ、京都の現代アートホテル「ホテル アンテルーム 京都」、また近年では銀座の「MUJI HOTEL GINZA」をプロデュースした会社として知られています。

龍崎 今新しくホテルをオープンするにあたって「デザインが良い」は当たり前の標準装備になっていて、そこから他と差別化するためにサービス設計をするのが業界の潮流です。こうしたいわゆる「ブティックホテル」を日本に取り入れた源流といえるのがCLASKAではないかと思っています。

今はホテル運営企業として有名ですけど、企画・設計会社として始まり、住みたい人たちが共同で一つの住まいをつくりあげていく「コーポラティブハウス」事業や、子ども向け職業体験型テーマパーク「キッザニア東京」の企画や設計なども手がけています。

つまり、常に空間を活用しながら、ジャンルにとらわれることなく「人と人」「人と地域」の新しいかかわり方を提示し続けている。そういう思想と知見があるからこそ、優れたホテルを生み出しているのではないかと思います。

新たな文化もたらす地域の創造者 龍崎翔子さんが尊敬する同業のフロントランナー

──事実、CLASKA誕生前後に目黒通りは「家具屋通り」「インテリアストリート」として脚光を浴びましたし、キッザニアがあることで豊洲にファミリー層が集まるという現象が起きていますね。つまり、UDSは場所をメディア化するのに長(た)けた先駆者だと?

龍崎 そうですね。しかも一気に話題になりました、というよりはちゃんと太く長く継続性をもってアップデートしている。そこがすごい。

たとえば「ホテル アンテルーム 京都」。私が経営している「HOTEL SHE, KYOTO」のご近所さんで、東九条という京都駅の南側に位置します。この東九条エリアや京都駅の東部に位置する崇仁地区は、おいしい焼肉屋さんやお好み焼き屋さんなどがあるディープな魅力のあるエリアなのですが、差別に苦しんできた場所でもあり、駅周辺という好立地にもかかわらず人通りも少なく、そうした状況が街全体に暗い影を落としていたように思います。

ただ、この数年の間に京都市立芸術大学が崇仁地区への移転を決めたり、それを契機に京都駅の東南部などを文化芸術で活性化させようという市の動きが生まれたり、私たちみたいな新しいホテルができてきたり、エリア全体が徐々に変わってきています。10年スパンのゆっくりとした動きですけど、その起点となったのが、実はUDSのアンテルームではないかと思っています。

新たな文化もたらす地域の創造者 龍崎翔子さんが尊敬する同業のフロントランナー

「ホテル アンテルーム 京都」でアーティストが客室を手がける「コンセプトル ーム」の一室。(撮影=Yoshiro Masuda)

五条にあるUDSの「ホテルカンラ京都」も同様です。今でこそ五条にもカフェやイケてる店が多くありますが、10年前はそこまでイメージの良いエリアではありませんでした。そんな中でカンラ京都は高単価のビジネスを展開してきた。それが地域に具体的にどれほどの影響を与えたかはわからないですけど、ポジティブな方向に導く存在であったことは間違いない。実際、カンラ京都のスパは一休.comが発表する人気ランキングでも上位の評価を得ています。

──ホテルが地域そのものをアップデートしているわけですね。

龍崎 それもサービスの質の高さがあって初めて実現することですよね。アンテルーム京都は代々木ゼミナールの学生寮を、カンラ京都は代ゼミの校舎を用途変換したものです。言ってしまえば学生寮なんてめちゃくちゃ古いし、“THEビジホ”みたいなそっけないユニットバスだったりしますが、例えばアメニティーを置く場所が銅板で作られていたり、ユニットバスも使いやすさや気持ち良さを考えて人の目や手が入っていたり、本当に配慮が隅々まで行き届いている。私が連泊したときは部屋が変わることもありましたが、レイアウトが変わってもサービスが雑になっていることはありませんでした。

新たな文化もたらす地域の創造者 龍崎翔子さんが尊敬する同業のフロントランナー

アンテルーム京都には以前、お笑いコンビのジャルジャルのシュールなネタをテーマにしたコラボ部屋がありました。普通にやるとさえない感じになりかねないところを、非常にうまくまとめていた。ホテルの中の人はもちろん、一緒に仕事をする外の人たちにもホテルの精神やコンセプトがしっかり理解されているのでしょう。自社だけじゃなく、いろんなステークホルダーと目線をそろえて、同じ方向を目指していく。それを長きにわたって実現できているのがすごいなと思います。

「今までありそうでなかった」アイデアを実現

──UDSの仕事は多岐にわたりますが、最近ではMUJI HOTELが脚光を浴びがちですね。

龍崎 一般的にはそうかもしれませんが、個人的に惹(ひ)かれたのは都心の温泉旅館「由縁」です。“都心型の和風旅館”という今までありそうでなかった、そして誰もが思いつくであろうアイデアに実際に取り組んだ。もちろんインバウンド需要も見越していたんでしょうけど、その落とし込み方がうまい。

ひとくちに和風といってもいろんなスタイルがあって、下手するとフジヤマ・ゲイシャみたいな世界観になるところを、独自のマーケティングと美意識でキレイにまとめてるんです。しかも横展開しやすい。アンテルームのように一棟ずつ独自のコンセプトでまとめている施設を全国に作るとなれば半端ではない労力が必要になりますが、ある種のフォーマット化を実現している由縁なら、他のビジネスホテルとしっかり差別化しながら、さほど労力をかけずにたくさん展開できる気がします。

新たな文化もたらす地域の創造者 龍崎翔子さんが尊敬する同業のフロントランナー

「由縁別邸 代田」の外観。(撮影=ナカサアンドパートナーズ)

由縁はいま札幌、新宿、代田と三つあって、私はその二つに泊まったことがあります。実際泊まるたびに学びがあって、例えばお茶菓子ひとつにとっても甘いものとしょっぱいものが用意されていて、それらがあられみたいにシェアできるようになっているんです。さりげないですけど、とても細かいところまで配慮が行き届いている。私たちのような小規模のホテルならまだしも、これをUDSの規模でやっているのがすごい。

──龍崎さんの運営施設は部屋数でいうと、どの程度でしょうか?

龍崎 私たちの施設で一番大きいのが50室ですね。しかも5施設しかないので、やろうと思えば私が全部まわれる規模なんですけど、UDSはホテルだけで16施設あって何百人というスタッフがいて、それを1人の経営者がコントロールするのは無理。この体制を維持するだけじゃなくて、進化させ続ける。そんな組織作りも私たちのようなベンチャーからすれば学ぶべきところがたくさんありますね。

事業規模や業態も違うので簡単にまねできるわけではありませんが、うちのスタッフはみんなUDSをリスペクトしています。

──龍崎さんのホテル作りの哲学として、実際に自分が使ってみてどう感じるか、ということを大事にされているとうかがいましたが、それもUDSの姿勢と通じることでしょうか?

新たな文化もたらす地域の創造者 龍崎翔子さんが尊敬する同業のフロントランナー

龍崎 それはホテルとしての使い勝手や居心地の良さを突き詰めていくという視点ではなく、ホテルという資産を活用して他の選択肢が作れないかを考える、ということなんです。例えば今考えているのは産後ケアホテルです。

私たちは今運営している施設の数を増やすことにはそれほど興味がありません。「HOTEL SHE,」のようなコンセプチュアルな施設が全国に50軒あっても意味がないというか、たくさんあってもお客様は疲れてしまうと思います。一方で産後ケアは、サービス自体をもっと広げていく必要性を感じていて、それを私たちのホテルでも実施しようと動いています。

──具体的にはどんなホテルなのでしょうか?

龍崎 出産後に家族全員で2〜3週間泊まるホテルを想定しています。産後は睡眠不足になるので赤ちゃんを預かったりとか、授乳補助や母乳マッサージ、骨盤矯正といった身体のケアをすることが一つ。

また、それ以上に大事なのはメンタル部分のケアです。子育ての不安だとか、子供が可愛いと思えないといった悩みに対してカウンセリングするとか、そういったことです。特に私が取り組みたいと考えているのは家族間のコミュニケーションのサポートですね。

「夫が育児に参加しない」という声をよく聞きますけど、パートナーの方からしても初めてのことばかりですし、自分の体じゃないから当事者意識が薄いのは仕方がない面もあります。とはいえ「仕方ない」で放置していいわけでもない。では、産後にパートナー間で何をどうフォローすべきか、あるいは親として何をすべきなのか。こういったことに対し、第三者だからこそアドバイスできることがたくさんあるはず。

いろいろな先輩の話を聞いていると、パートナーの方が産後にどれだけコミットしてくれたかがその後の夫婦関係に大きく影響しているようなので、「ここに落とし穴があるかもよ」と知らせることも必要です。

こういったサービスをどんどん広げていきたいし、産後ケアホテルは全国にあってもいい。いわゆる従来型の宿泊体験とは大きく異なりますが、これが私たちらしいホテルの活用法だと思っています。

新たな文化もたらす地域の創造者 龍崎翔子さんが尊敬する同業のフロントランナー

(構成=熊山准 撮影=野呂美帆)

     ◇◆◇

★龍崎翔子さんから告知
L&Gグローバルビジネスは2020年9月に一般社団法人Intellectual Innovationsと共同で、次世代観光人材育成のためのtourism academy “SOMEWHERE”を設立。 2021年2月よりオンライン専用の講義を開始予定。

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