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LONG LIFE DESIGN
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モノは「家」を必要としている 入れ物に愛が感じられる店

先日、新年の抱負を披露したかと思っていたら、もう2月。今年も残すところあと11カ月となりました。びっくりしませんか? しっかり毎日、実感を意識して過ごさないと、アッと言う間に2022年に。

すみません、出だしから大げさでしたが、僕としてはそんな気分です。みなさん、お元気でしょうか。

さてさて今回も3話書きました。最初は「東京脱出」なんてタイトルでスタート。実は23年間過ごした東京を離れることにしました。そして、何を頼りに「どこに行くのか?」というお話です。

2話目は久しぶりに自分の店の様子に愛を感じてしまったというお話。売り場って、店員の思いが細部に表れます。

そして最後は「元気な人」に僕はいつも助けられていて、そんな人のことを書きました。それではしばし、ナガオカワールドおつきあいください。

モノは「家」を必要としている 入れ物に愛が感じられる店

東京で一緒に過ごし2年前に他界した猫の「ジー」のお墓が、今、移り住んでいる静岡県富士宮の自宅にあります。先日、久しぶりにお墓参りをしたら、何やら生命力を感じる植物がにょろっと生えていました。生き物って不思議な力があるし、予測できないこともある。これはきっとジーの何かだろうと思うと、春を楽しみに過ごせそう

東京脱出

18歳のときに愛知県知多郡阿久比町から上京し、豊島区池袋で暮らし始め、印刷会社の企画室やデザイン会社を転々と。大手のデザイン会社でも働き、上京してすぐに雇ってくれた印刷会社の企画室があった文京区本郷三丁目にて独立。一人で立ち上げたデザイン会社でしたが、2人増え、3人増え、7人になり六本木に引っ越し。そして33歳の時、家を買えるほどの大借金をして現在の世田谷区奥沢に500坪ものスペースを借り、「D&DEPARTMENT」というロングライフデザインをテーマとする生活用品店を2000年に開業。

それから20年が経ち、新型コロナウイルスの影響をきっかけに「東京の高い家賃を払う意味」についてみんなで考え、もっともっと安い家賃の、いや、今の一月分でもしかしたら土地や建物が購入できるかもしれない場所に引っ越すことになりました。

これまでもそんな話は何度か出ましたが、「デザイン」というキーワードを持つ自分たちにとって「東京」を離れるということに不安がありました。気がつくと時代は大きく変化していました。物流や通信、移動の方法は劇的に進化し、テクノロジーの進化により「どこでも仕事ができる」ようになっている。そして、コロナによって「人と会わない」「仕事場に来ない」新しい日常が現れました。そこで思ったのです。「もう、東京にいなくても大丈夫なのでは」と。

どこでもいいのか、というと実際問題そんなことはありません。渋谷駅ビル「ヒカリエ」の中にある食堂や店舗は継続した方がいい、Webストア事業部は倉庫を兼ねて物流環境の良いところに。そして、働いているスタッフには、家を購入した者もいる。できたら東京から通える場所を……。

そこで思ったのです。「縁もゆかりもない場所」には、引っ越せない。土地の快適性だけでは、その土地に根をおろすことが無理なのでは、という、とっても大切なことに気づいたのでした。すると、創業者(僕)のふるさと愛知県知多郡に、とか、直営店のある富山市や京都市か、などなど、多少自然環境が過酷でも、「そこになぜ行くか」ということに迷いのない絶対的な理由を探し始めました。

もちろん急に雪国には行けませんし、沖縄がいくら好きだと言っても、物流の現実を知っているので、全国展開する以上、島は難しい。さて、どこになるかは3月末までに決めるとして、どこでもいいと思っていたけれど、そうではないということに気づけて、なんだか変な話ですが、うれしくなってきました。どこでも働ける。けれど、やっぱりその土地に恩返しをするように根付きたい。あぁ、空が広く感じるみんなが健やかに暮らし、働ける場所になったらいいなぁ。引き続き、見守っていてくださいね。

モノは「家」を必要としている 入れ物に愛が感じられる店

ホームページでは、僕らの引っ越すべき場所の情報を広く募っています。僕らが行きたいところでもあり、僕らを必要としている人の土地でもあっていい。とにかく心から納得して思いの深い土地を離れようと思います。 土地、建物の情報はぜひこちら

お店の愛

ずっと思っていたことですが、モノも「家」が欲しいんじゃないかと思うのです。例えば、せっけんには「せっけん置き場」が、本には「本棚」が。車には「車庫」が、宝石には「宝石箱」が……。そんなこんなを「収納」と一括(くく)りにしてしまうのではなく、なんか、「こいつには、この家」ってひとつひとつのことを考えてあてがってあげられたら、どんなにいいかと、自分の店をたまにうろちょろして思うのです。

もちろん、僕は今、現役でショップの店頭に立っていながら、そんなことをやっているわけではないので、偉そうなことは言えませんが、そういう店の様子に出くわすと「おっ、愛が感じられるなぁ」と、つい言ってしまいます。単に収まっているだけではない、そのモノの世界観を感じながら選んであげたと思える「家」のような入れ物。

自分の家でもそういうことはあります。こういうモノならこれに入れるっていう決まりきった収納の仕方ではなく、ヤドカリ感覚で、「ほぅ、よくそんないい感じのものに入れてもらったなー」って、つい話しかけてしまうような入れ物(家)。

店って細かい商品がさっと入れられる什器(じゅうき)というか、入れ物をよく使います。しかし、それがみんなそれに入っているというのではなくて、ひとつひとつの商品ごとに、何かあつらえてもらったような感じ……。

今、自宅で言うと、台所の流しの中のスポンジ置き場。これこそ、いくつもの「スポンジ置き」という商品がありますが、そういうことじゃなくて、なんか、こんなのにスポンジを入れたら清潔かつ可愛くない?みたいな感じのものをあてがってあげたい。

先日、父の法事で京都に行った帰り、「D&DEPARTMENT京都店」の店内の至るところがそうなっていて、なんだかとっても幸せになりました。普通にやったら普通にこぎれいなんでしょうけれど、その商品ひとつひとつを考えて、あつらえてあげたような状態があちこちに。

これは時間がかかること。偶然かもしれませんが、働く側が暮らすような意識で職場である店にいないと、こんなことできないと思います。そして、これからつくる愛知店も「じゃ、こんな感じで」と思ったとしても、すぐにできることではないのです。なんか、うれしくなってしまいました。みなさんもぜひ、京都店にそんな様子を見にきてくださいね。そして、自宅のモノたちの喜びそうな「収納(家)」を気にしてみてはいかがでしょうか。

モノは「家」を必要としている 入れ物に愛が感じられる店

モノは「家」を必要としている 入れ物に愛が感じられる店

ちょっとしたことですが、こういうの大好きなんです。僕。「良かったね」と、声をかけてあげたくなります。なんでもいいわけではないのです。相性がちょうど良い感じの中身と入れ物の世界ってあります

元気な人

何か、ちょっと勇気や勢いが必要な「何かを始める時」ってありますよね。よく「勢いは大切」と、同僚らに話していますが、最近、あることを始める時にそばにいてくれた夫妻に会って、元気にそばにいてくれたおかげで始められたことを思い出しました。

1997年に本郷三丁目に会社を立ち上げた時も、側に今は映像作家などとして活躍する菱川勢一と飯野圭子の2人がいてくれて、結局、3人で起業したなぁと思い出します。僕はそういう「何かを始めようとする誰かのため」という役には全然なれないけれど、そういう人の必要性は、本当によくわかります。元気が勢いや、日々の雰囲気を作り出す。もっともっと言えば、「元気」のある会社に人は集まりますし、元気がなくなっている会社など、どんなに業績が良くてもいたくありません。

仕事ができるとかできないとか関係なく、なんだか元気な人っていますよね。それは人に限らず、町にも、県にも、国にも「元気な企業」とかがあると、周りも元気になってそれがどんどん伝わって広まっていく。元気な家庭にも、元気な地域にも、元気の震源のような人や会社はあるものです。

これから開業しようと考えている自分の店「D&DEPARTMENT愛知店」の立ち上げにも、チーム愛知という「元気チーム」がいます。何かマイナスなことが起こったら「みんなで頑張ろう、なんとかなる。なんとかする!!」と言ってくれました。そのおかげで今、プロジェクトは進み始めている。

ちょっと仕事のことになりますが、日本の原点商品が集まるブランド「60VISION」を考えた時も、一緒にやったカリモク(家具・インテリア企業)の山田郁二さんがそんな人。山田さんも、カリモクさんもとっても真面目な会社、人なのですが、とにかく「前に進む」ということに執念を燃やして「やってみましょう」と一緒に進んでくれました。

それ以来、僕は何をするにでもそばに「元気な人」にいてもらうようにしています。FM京都α-STATIONのレギュラー番組にもガッツとアリコという女性2人が、僕のデザイン会社「D&DESIGN」には高橋恵子という創業からのスタッフが、オーケストラを応援している「d日本フィルの会」には、日本フィルの山岸淳子さん、佐々木文雄さん、そして川田舞さんという人たちが……。

これは僕に限った話ではないと思います。やっぱり、いつでも「元気」って大切。「頑張って!!」って、言ってくれる人って、とってもとっても、とっても大切。です。

モノは「家」を必要としている 入れ物に愛が感じられる店

山梨の元気な人、大木貴之さん(2列目左のメガネの男性)の店「フォーハーツカフェ」を訪ね、元気な人たちが集まるワイン会をコロナに気をつけ開催しています。元気な人もより元気な人に影響を受ける。励ましあって、散らばって、いろんなところで元気を振りまく。「元気」って意識したいキーワードです


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