深川麻衣と「怒り」 映画『おもいで写眞』インタビュー

俳優の深川麻衣さんが、2021年1月29日に公開された主演映画『おもいで写眞』で、写真家役に挑みました。

写真撮影が趣味の深川さんは、&TRAVELのシリーズ記事「深川麻衣のカメラ散歩『気ままにぱしゃり』」で、さまざまな町並みを撮影してくれましたが、この映画への出演をきっかけに写真が持つ力をしみじみと感じたそうで、自分で写真を撮るときの意識にも変化が生じたとか。深川さんの思いと、ロケの合間に深川さんが撮影した写真を紹介します。
(文・渡部麻衣子、写真・山田秀隆)

写真には、記憶を鮮明に呼び起こす力がある

深川麻衣と「怒り」 映画『おもいで写眞』インタビュー

遺影は、故人をしのぶよすが。だが、生きているうちに自ら用意しておく人がどれだけいるだろうか。映画『おもいで写眞』の主人公・結子は、唯一の家族である祖母の葬儀で飾られた遺影にショックを受ける。集合写真を切り抜いて引き伸ばしたようにピンボケだったからだ。

東京で失職したタイミングだったこともあり、そのまま故郷の富山に戻ることにした結子。町役場で働く幼なじみから依頼されたのは、地元のお年寄りたちの遺影を撮る仕事だった。

「高校時代に写真部にいたから頼まれたという設定なので、プロの写真家役ではないのですが、この役を演じて改めて、写真を残すのは素敵だと思いました」と深川さん。

深川麻衣と「怒り」 映画『おもいで写眞』インタビュー

プライベートでは身近な人を撮るのが大好きな深川さん。「素顔が垣間見える瞬間とか、夢中で何かに取り組んでいる姿とか、“今”を閉じ込めておきたくて」レンズを向けてきたという。

劇中で結子は、遺影を“おもいで写真”と呼び、それぞれのお年寄りにゆかりの場所で撮影を重ねる。やがて、たった一枚でも、被写体の生きた時間や人となりをたどれる写真が生まれていく。

「写真は今を切り取るためだけのものではなく、未来に残すためのものでもあるんだなと感じました。その人がいなくなってしまっても、たった1枚で鮮明に思い出すことができる。そう思うと、1枚と言わず何枚でも、大切な人の写真を残しておきたくなります」

映画撮影後に地元の静岡へ帰省し、自宅の前で家族写真を撮った。みんなで並び、セルフタイマーで。「幼い頃の家族写真はいっぱいあるのに、大人になるとなかなか撮らないですよね。撮りたいと切り出すのは少し恥ずかしさもありましたが、撮って良かったです」

怒りをどう表現するか思い悩んだ

深川麻衣と「怒り」 映画『おもいで写眞』インタビュー

写真への思いが変わっただけではない。演じる感情表現の幅も広がったと感じている。「怒りの出し方に、正面から向き合いました。結子は、喜怒哀楽がはっきりした性格。うそが嫌いで、怒ると感情のままにガッと相手にぶつかっていきます」

普段の深川さんはあまり怒ることがなく、怒りの表現に苦労したという。「結子は怒りに任せ、足の悪いおじいさん相手にある行動に出るのですが、私からすると、いくらなんでもそれは……という行動。なぜそこまで怒るのかをつかみかねて……」

深川麻衣と「怒り」 映画『おもいで写眞』インタビュー

結子は、深川さんと同じ29歳という設定だ。「夢を抱いて上京するところや、29歳なのに何者にもなれていないと焦るところには共感できました」。そこからイメージを広げ、現場で熊澤尚人監督と話して結子への理解を深め、彼女が胸に抱えるものの重さや、怒りの根源への想像を膨らませていった。

演技を修正しながら気づいたことがある。「自分の気持ちが結子の怒りの熱量に追いついていなくても、まず激しく怒った演技をしてみると気持ちがどんどん乗ってくる。初めての経験でした」

深川麻衣と「怒り」 映画『おもいで写眞』インタビュー

「考えてみると、日常生活においても『あ、私いま怒ってるな』と自覚するよりも前に表情はムッとしてますよね。行動が先にあって後から感情がついてくるのは、お芝居じゃなくてリアルなことなんだとすごく納得できました」

自分の内面から湧き出る感情の表現だけでなく、映像にどう映るとその人物らしくなるのかも監督から多く学んだそうで、演技をするときに画角も意識するようになった。「結子はさまざまな人たちと出会って成長していきますが、私にとっても自分の成長が感じられた作品。20代最後の出演映画として、感慨深いものになりました」

カメラを持って、富山の街中を気ままにぶらり

深川麻衣と「怒り」 映画『おもいで写眞』インタビュー

映画では、被写体思い出の場所を巡るシーンで、富山の古い街並みや豊かな自然がゆったりと映し出される。深川さんもその光景にひかれ、撮影の合間にカメラを持って出かけた。そこで撮った中から、お気に入りの写真を紹介してもらった。

深川麻衣と「怒り」 映画『おもいで写眞』インタビュー

深川さんが撮影した金屋町の町並み

石畳に千本格子の古い家屋が映える高岡市金屋町。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された古き良き町並みが残っている。「町の中の路地とかが好きなんですよね」と深川さん。&TRAVELの「気ままにぱしゃり」でも、路地裏の風景を好んで切り取っていた。

深川麻衣のカメラ散歩「気ままにぱしゃり」 清澄白河めぐり編

深川麻衣のカメラ散歩「気ままにぱしゃり」 谷中銀座めぐり編

深川麻衣と「怒り」 映画『おもいで写眞』インタビュー

深川さんが撮影した城ケ山公園から望む景色

2枚目は富山の街並みを一望できる城ケ山公園。この景色は映画の中でも特に印象的なシーンで使われており、自分でも写真に残しておきたくて、シャッターを切ったそうだ。

深川麻衣と「怒り」 映画『おもいで写眞』インタビュー

深川さんが撮影した高岡大仏

3枚目の写真は、戦後日本三大仏にも選出され、地元のシンボルとして愛されている高岡大仏。撮影の際に、地元の人との交流が思い出深かったそうだ。「『ここからのアングルが一番よく撮れる』と、近くにいたおじいさんが富山弁で教えてくれました」。

「方言って、不思議ですよね。その土地で育ったわけでもないのに、ものすごく懐かしく耳に響く。映画は富山が舞台なのでみんな富山弁なのですが、言葉の温かさも映画の優しい世界観にすごく合っていると感じました」。

深川さんの言葉の通り、結子を取り巻く富山の人たちのまなざしは優しい。少しぶっきらぼうで孤立しかねない結子も、温かな交流の中でだんだん心の柔らかさを手にしていく。

「『おもいで写眞』は人物の描写が丁寧なので、どの登場人物も主人公であるように感じられる映画です。見る方の年齢や立場によって、感情移入できる人物も変わってくるのではないでしょうか」と深川さんは語る。

「久しぶりに大切な人に連絡を取ってみようかなとか、自分も“おもいで写真”を撮ってもらおうかなとか、趣味で写真を始めてみようかなとか……。この作品が誰かの背中を押すきっかけになったら、役者としてこんなに幸せなことはありません」

(ヘアメイク・村上 綾 、スタイリスト・原 未来)

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