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相棒と私
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土屋太鳳さん「一歩踏み出す勇気をくれる」相棒からの贈り物

友達とも恋人とも違う、仕事を通して同じ目的を共有する「相棒」とはどんな存在? 「相棒」との大切なエピソードを語っていただくこの連載。今回は、映画「哀愁しんでれら」で主演する土屋太鳳(たお)さんにお話を聞きました。

     ◇

「どんなにつらい時でも、役として生きるのが、演技を仕事にする人の特徴ではないでしょうか」

土屋さんからそう聞いて、「どうすれば役を演じないようにできるのかが一生の課題」と語っていた韓国の名優キム・ミョンミンさんを思い出した。役になり切るためには自分を殺す。だから、他人の人生を生きている間は友人にも会わないし、父親の誕生日を祝うこともない。演技を突き詰めるために妥協はしない――。

土屋さんもまた、演技が忙しくなると家族はもとより人と話す時間がなくなってしまうという。役の人生を生きている間は、気持ちの上でも自分自身に戻り切ることはない。

仕事は頑張り抜く主義。そう言って憚(はばか)らない土屋(以下、太鳳)さん(25)が「相棒」と呼ぶのは、弟の土屋神葉(しんば)さん(24)だ。姉の炎伽(ほのか)さんもお母さんも相棒ではあるが、今回は仕事の相棒ということで、幼いうちから一緒に芸能活動を始め、たくさん相談に乗ってもらってきた彼を選んだ。

土屋太鳳さん「一歩踏み出す勇気をくれる」相棒からの贈り物

相棒:土屋神葉(声優・俳優)
1996年4月4日生。東京都生まれ。特技はアクション、日本舞踊、クラシックバレエ。 劇団ひまわり所属。3歳から日本舞踊&クラシックバレエを始め、アクション歴は15歳から。高校時代はスーツアクターも務める。主な出演作は、映像では、ドラマ「トクサツガガガ」(NHK)、映画「刀剣乱舞-継承-」。舞台は、ミュージカル「マリーゴールド」、木ノ下歌舞伎「糸井版・摂州合邦辻」など。現在OA中の実写版「アイカツプラネット!」(テレビ東京系)では瀬川樹役で出演。声優では「ボールルームへようこそ」(主人公・富士田多々良)、「ハイキュー!!」(五色工)、劇場版アニメ「BURN THE WITCH」(バルゴ)ほか。4月から放送のアニメ「バクテン!!」(フジ系)では、主人公・双葉翔太郎を演じる。また、「ZIP!」(日テレ系)では「キテルネ」コーナーリポーターに就任。声優をはじめ、今注目の実力派俳優として様々なジャンルで幅広く活躍中

2人は2学年違いだが、実質年齢は1歳違い。子どもの頃から「しんたん」「たお」と呼び合う。ほとんど喧嘩(けんか)もしなかったという仲の良い姉弟だ。太鳳さんにとって神葉さんは、「ちゃんと起きられるかな」「ちゃんと集合場所に来るかな」といった姉ならではの心配をしてしまう可愛い弟である一方、子どもの頃から努力家な彼は「プロフェッショナルに徹していて尊敬できる」存在と言う。

チャンスを生かす勇気

太鳳さんが、神葉さんを「相棒」だとはっきり意識したのは高校1年生の時。映画「ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国」(2010年公開)でヒロインという初の大役をつかんだ時だった。

この時、太鳳さんはヒロインに決まったにもかかわらず、その一歩を踏み出せずにいた。ヒロインになるには髪を茶色に染める必要があったからだ。通っていた高校の規則は髪染め禁止。役を受けるか、校則を守るか。思いあぐねた。

「ウルトラシリーズは、私が子どもの頃にずっと元気や勇気をもらってきた作品です。そのヒロインとなると、なかなか出会えるものではありません。オーディションを経てつかんだチャンスでもあったので、どうしてもやりたいという気持ちがありました。でも、当時は創作ダンス部に入部したばかりで、ダンス部の練習もありさらに厳しい生活でした。芸能活動と学業の両立を優先してきた私にとって、地方ロケを含む撮影に参加するべきかという点でも迷いがあったんです」

その迷いを吹き飛ばしたのが、神葉さんの明快なアドバイスだ。

「両立といっても、学校は通い直すことができる。でも、仕事のチャンスは1回しかない。ずっと元気をもらってきたシリーズならなおさら、このチャンスを生かさなければいけない。その後の俳優人生が全部変わると思う。絶対にやるべき!」

土屋太鳳さん「一歩踏み出す勇気をくれる」相棒からの贈り物

(c)2021『哀愁しんでれら』製作委員会

さらに、神葉さんは具体的な方法も示してくれた。

「俳優を本当に目指すなら、学校と交渉する勇気を持ったほうがいい。今その勇気が持てないなら、将来的に俳優を続けるパワーや縁も、つかめないと思うよ」

彼の言葉に納得し背中を押された太鳳さんは、思い切って学校と交渉した。すると学校も、「校則を守ることは必要だけれど、入学をする時に俳優を目指すことは聞いていたので、安直に禁止や否定をすることはしません。事前にちゃんと相談してくれたので、検討してみましょう」と応じてくれた。

結果、撮影中は黒髪のウィッグをつけて登校し、撮影後は髪色を戻すという約束で、太鳳さんは学業を続けながら念願だったヒロインを演じることができた。相棒である神葉さんは、太鳳さんが俳優として飛躍する足掛かりを作った功労者でもある。

お互いの経験を共有する

同じ頃、神葉さんも役者という夢を追いかけ、ヒーローとしてアクションをするスーツアクターの修行を始めた。夏休みにショーに参加したときは続けて40日近く、多い時は1日に6ステージに出演。太鳳さんは、1日も休まず全力で演じる姿を応援しにいくたびに元気をもらい、刺激を受けた。

もっともアクションに励めばケガをすることもある。そんな時、太鳳さんは神葉さんのケガが少しでもよくなるようにと、自身の経験を具体的に話して神葉さんを支えた。神葉さんは今、舞台での活動や声優として活躍の場を広げる。

心を尽くし思いを尽くし力を尽くす。一生懸命努力したことで無駄になることは一つもないことは、神葉さんが身をもって教えてくれている。彼に備わった「努力してきたことを夢につなげる実現する力」と「つかんだ仕事に対するストイックな姿勢」は、太鳳さんをも前進させる。

土屋太鳳さん「一歩踏み出す勇気をくれる」相棒からの贈り物

(c)2021『哀愁しんでれら』製作委員会

忘れたくない言葉

これまで何度となく神葉さんに励まされてきた太鳳さんだが、中でも忘れられない言葉がある。2016年にオーストラリア出身の歌手シーアの曲「アライヴ」の日本版ミュージックビデオに太鳳さんが出演した時のこと。ソロでコンテンポラリーダンスを踊った彼女の映像がウェブで公開されるや、神葉さんが真っ先にこう言った。

「この仕事を受けることができただけで、生まれた意味があると思う」

そう聞いた瞬間、報われた。作品を通して、悩みや努力を感じてくれたのだと実感した。太鳳さんはプレッシャーを感じつつも、このミュージックビデオの創作に加わった。そして約3週間、練習を重ね肉体を鍛え上げた。「生きようとする何か」「生きたいと思う何か」という魂を注ぎ込むように踊った。神葉さんの言葉は、太鳳さんにとって何よりの贈り物だった。

土屋太鳳さん「一歩踏み出す勇気をくれる」相棒からの贈り物

(c)2021『哀愁しんでれら』製作委員会

「この仕事を受けることができただけで、生まれた意味があると思う」という言葉は、忘れられないだけではなく、“忘れたくない言葉”でもある。それは、激励だけではない、同じ芸能の仕事をしてきた神葉さん自身のさまざまな思いも想像したからだ。

生き馬の目を抜く芸能界で活動していると、芸能人で成功することの難しさを肌で感じる。実力があれば仕事を得られるとは限らない。運や縁の影響も大きい。太鳳さん自身も周囲から努力を認められながらも、将来を見据えて「頼るべき人を見つけなさい」とアドバイスされることがあるという。

だが、人脈を築くには出会いが必要だし、時間もかかる。だから、今はとにかく来た仕事に全力を注ぐことに集中しているのだが……。

「そう思っても、時々、その気持ちが揺らぐ時があります。そんな時に弟のこの言葉を思い出して自分を励ますのです。全ての仕事は、受けることができただけで私は生まれた意味がある、と」

改めて尋ねる。太鳳さんにとって相棒とは?

「向き合うのではなくて、同じ方角を向いて歩く人。気がついたらパワーを分け与えている存在です」

まさに神葉さんはその通り。ただ、2人の関係は「お互いの背中を見て頑張り合うという、よく漫画に出てくる男同士のライバルのような感覚かも」と太鳳さん。相棒としても、姉弟としても、強固な絆に感じ入った。

     ◇

土屋太鳳(俳優)
1995年2月3日生まれ。東京都出身。主な出演作に、映画「オレンジ—orange—」(15年)、「るろうに剣心」シリーズ(14年、21年公開予定)、「青空エール」(16年)、「トリガール!」(17年)、「累—かさね—」(18年)、ドラマ「下町ロケット」(TBS、15年/18年)、「チア☆ダン」(TBS、18年)など。現在Netflixオリジナルドラマ「今際の国のアリス」が配信中。これまで受賞した賞に、2016年エランドール賞新人賞、日本アカデミー賞新人俳優賞、「8年越しの花嫁 奇跡の実話」で第41回日本アカデミー賞優秀主演女優賞など。5月に「ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち」が公開予定


「哀愁しんでれら」

2016年の「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM」でグランプリに輝いたオリジナル脚本を映画化。幸せを求めた女性が凶悪事件を起こす“裏”おとぎ話サスペンス。

土屋太鳳さん「一歩踏み出す勇気をくれる」相棒からの贈り物

小春(土屋太鳳)は母に捨てられたという過去はあるが、ごく“普通”に生きている女性。そんな「普通の人」について土屋さんは、「望む望まないにかかわらず激しい感情が存在すると思う」と分析。
「普通という印象に応えて生きる人には、学校でも職場でも、普通でいるためには我慢や努力が必要で、その分、のみ込んでいるものもあります。小春は、そののみ込んだものが集まって生まれたような役だと感じていました」
後半に向けて、普通の人・小春の変化が見物だ。
「(エンディングは)物語としては『結末』ですけど、小春の人生の結末でもあるとは思いたくないんです。『過程』であってほしいなと心から願います」

<ストーリー>
児童相談所で働く小春(土屋太鳳)は自転車店を営む父と妹と祖父との4人暮らし。平凡な日々を過ごしていたが、ある日、不幸に不幸が重なって一晩ですべてを失ってしまう。そんな彼女が踏み切りで倒れていた、8歳の娘を男手一つで育てる裕福な開業医・大悟(田中圭)を助けたことから恋に落ちる。不幸から一転、幸せをつかんだはずの小春だったが……。

脚本・監督:渡部亮平 出演:土屋太鳳 田中圭 COCO 山田杏奈、ティーチャ 安藤輪子 金澤美穂 中村靖日 正名僕蔵 銀粉蝶 / 石橋凌
配給:クロックワークス 2月5日(金)から全国公開。
(c)2021『哀愁しんでれら』製作委員会
aishu-cinderella.com

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