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社会のためより自分のため? “好き”を理由に仕事は見つかるのか(コンシェルジュ:FROGMAN)

読者の皆さまから寄せられた相談やお悩みに、映画を愛する様々な分野の方々が寄り添い、最適の作品を紹介する隔週連載。

コンシェルジュは映画コメンテーター/タレントのLiLiCoさん、CGクリエーター/映画監督のFROGMANさん、Base Ball Bear・小出祐介さんの3人です。今回のコンシェルジュはFROGMANさんです。

社会のためより自分のため? “好き”を理由に仕事は見つかるのか(コンシェルジュ:FROGMAN)
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PROFILE
FROGMAN

映像クリエイター、声優、監督。長年、実写映画・ドラマの世界に身を置く。2006年DLE入社。07年9月より取締役就任(現任)。06年に「秘密結社 鷹の爪」を地上波で発表した後、07年には劇場公開。その後、テレビ・映画シリーズを次々と公開。その他「古墳ギャルのコフィー」や「土管くん」などオリジナルIPを多数創出。独自の世界観とプロデュース手法が人気を呼び、「島耕作」シリーズ、「天才バカボン」等の有名原作のパロディー化によるリプロデュースにも従事。08年度ニューヨーク国際インディペンデント映画祭にて、「アニメーション部門 最優秀作品賞」「国際アニメーション最優秀監督賞」をダブル受賞。12年4月、しまねコンテンツ産業振興アドバイザー(しまねだんだん★メディアアドバイザー)就任。13年11月、松江市観光大使就任。

<相談者プロフィール>
谷本 真尋(仮名) 女性 21歳
埼玉県在住 大学生

こんにちは。関東の大学に通う大学3年生です。 大学3年生にもなると就職活動が始まってくるのですが、周りが「人のためになる仕事がしたい」「社会のこういう問題を解決したい」という軸で志望業界ややりたい仕事を決めていくなか、どうしてもやりたい仕事のイメージが自分中心でしか考えられず、悩んでいます。自分が楽しいことをして少しお金もいただけたら最高だな、という感じです。

しかし、〇〇が好きだから、楽しそうだから、という単純な理由でESが通ることは考えられず、毎回変に取り繕ったうその志望理由を考えて提出してしまいます。本当に自分が考えていることではない文章に毎度憂鬱(ゆううつ)になります。

よくよく考えてみると中高大と部活ざんまいで、自分が面白い、楽しいと思ったことにしか挑戦してこない人生でした。人のため、社会のために貢献したいと思ったことは一度もありません。

こんな人間でも欲しいと思ってくれるような場所はあるのでしょうか。そもそもこの自分のことばかりの幼稚な考えはどのように改めればいいのでしょうか。

社会が変わり、企業も変わり、相談者さん自身の考えも変わっていくはず

私は高卒なので、いわゆる大学の就職活動がどんなものなのか分かりません。

就職活動ってそんな大ごとなの? ESって何? 笑顔指数の略?と思ってしまいます。

ごめんなさい、別にちゃかすつもりじゃないんですよ。本当にそこまで気にすることなのかと分からなかっただけなんで。それより気になるのが、相談者さんの考え方です。

そこでご紹介したいのが、スティーブン・ソダーバーグ監督、ジュリア・ロバーツ主演の実話をベースにした物語、『エリン・ブロコビッチ』(2000年)。

ジュリア・ロバーツ演じるエリンは、3人の幼い子供を抱える無職のシングルマザー。ある日、交差点でお金持ちが運転するスポーツカーにエリンの運転する車が追突され、大けがを負います。エリンの担当弁護士のエドワードは、被害者だから高額な慰謝料がもらえるはずと請け合いますが、実際には法廷でのエリンの言動があだとなり、敗訴してしまいます。貯金も仕事も何もないエリンは、エドワードに自分を雇うよう要求。エドワードは渋々了承するのでした。

弁護士事務所で働き始めたある日のこと。手元に届いた不動産売買に関する書類が気になるエリン。PG&Eなる電力や天然ガス供給を行う大企業が、工場周辺の住民の家を廉価で買い取るというのです。

エリンはその買収が、工場から流れ出た地下水汚染を隠すための工作だと見抜き、調査を始めます。やがて上司のエドワードもエリンの見立てに同調し、住民訴訟を起こすよう動き出します。

学はないけど持ち前のガッツと行動力で巨大インフラ企業を追い詰めていくエリン。時にエドワードとぶつかり合い、時に慰め合い、ついに弱小弁護士事務所が巨大インフラ企業に対して3億3300万ドルというアメリカ史上最高額の和解金を勝ち取るのでした。

とまぁ、胸がすくようなアメリカ人好みのジャイアントキリングの物語です。どうしてこの映画を紹介したかと申しますと、相談者さんのお悩みに三つばかり気になる点が。

まず一つ目、相談者さんは自己肯定感がちょっと低すぎるのではないでしょうか。

昨今、日本の若者の自己肯定感が諸外国と比較しても低いことが問題視されますから、相談者さんに限ったことじゃないかもしれませんね。

劇中のエリンは、貪欲(どんよく)に仕事に食らいつき、なぜか自分ならやれると信じて疑いません。

きっとエリンは小さい頃から自分は特別だと信じ、実際要領の良さや見た目の良さでうまくこなしてきた経験があるんでしょう。傲慢(ごうまん)になる必要はありませんが、謙虚すぎるのも企業の経営者は扱いづらくて困ります。

二つ目は、人の役に立つことをしている会社じゃないと、人の役に立てないという誤解は解いておいたほうがいいかと。

昨今は多くの企業でCSRやSDGsに取り組んでいますから、医療や介護、福祉といった業界じゃなくても社会貢献は可能です。それこそ町の八百屋さんが、地域のお客さんに体に良い野菜を適正な価格で売ることも、立派な社会貢献じゃないですか?

エリンも物語の冒頭、自分の生活のために弁護士事務所で働き始めましたが、結果、義憤に駆られて多くの人たちを救う結果になりました。

その会社で人の役に立とうと思うなら、自分からそういう仕事を作ればよいのではないでしょうか?

そして三つ目は、相談者さんの「好きだからという理由で仕事が見つかるか?」という問いに対してですが、答えはノーです。会社は相談者さんの“好き”をかなえるために存在しているんじゃありません。

利益を追求し成長するのが企業で、そのために有用な人材をお金で雇っているんです。ですからここは「私はこの仕事が好きだから御社でこんな事を実現して、社会と御社の利益に貢献したいです」とまで、突っ込んだビジョンを語るのが正解だと思いますよ。そのビジョンが志望企業と合致すれば、間違いなくあなたは採用されるでしょう。

エリンは最後、とんでもない額を上司にもうけさせ、自分も2200万ドルを手にしました。

もちろん、働くなら自分が働きたいと思える場所で働くべきです。でも働きたいと思っている場所と、自分の能力を生かせる場所は、案外違っていたりするのも事実。

私自身、映画監督を目指して色んなところをフラフラしましたけど、結局アニメ監督になっています。

だから一度も社会に出ていない学生さんが深刻に悩んだところで、一度で天職が見つかるとは思えないんですよ。

ましてこれからの時代は、どんどん社会が変わり、企業も変わり、相談者さん自身の考えも変わっていくはずです。今は転職に対してそれほどネガティブでもないですから、働きながらより良い職場を探すくらいの余裕を持ったほうが良くないですか?

FROGMANさん推薦の映画

エリン・ブロコビッチ
監督:スティーブン・ソダーバーグ

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