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平井かずみ×在本彌生 人もまた花なり
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「布が好き」からインドの手仕事の世界へ CALICO(キヤリコ) 小林史恵さん

フラワースタイリスト・平井かずみさんと写真家・在本彌生さんが、「有機的なものづくり」に携わる心ひかれる方々に会いに行きます。伺ったお話をもとに平井かずみさんがイメージした一輪の花を生け、在本彌生さんが写真に写します。

今回は、CALICO:the ART of INDIAN VILLAGE FABRICS代表の小林史恵さんにお話を伺いました。

豊かさが続く仕組みに目を向けて

CALICO(キヤリコ)とはインドの手織りによる綿織布のこと。その軽さ、手触りの良さ、機能性から、17、18世紀にヨーロッパや日本でも爆発的な人気を博した。その「CALICO」を会社名に、小林史恵さんはインドの村々で今もなお営まれている、布の手仕事を未来に伝える活動をしている。

「布が好き」からインドの手仕事の世界へ CALICO(キヤリコ) 小林史恵さん

小林史恵(こばやし・ふみえ)
1973年生まれ、大阪府出身。大学を卒業後、メディア業界を経て、コンサルティング会社に勤務。インドの案件を数多く担当し、2010年からインドのジャパンデスクとしてデリーに駐在。日本企業の進出や事業拡大支援を手掛けたのち12年に独立。インドの手仕事の布や、服・生活雑貨をデザイン・販売する「CALICO(キヤリコ)LLC」の代表を務める。www.calicoindia.jp/

仕事の起点は「布が好き」という気持ち。祖父母が布の仕事をしていたこともあり、子どもの頃から布は身近にあったという。でも、小林さんが見つめる先はもっと広い。それは布の手仕事を持続可能にする仕組みを作るということ。

「なぜか、世の中がよくなる技術や仕組み、構造の改革にずっと興味がありましたね。きっかけは、コンサルティングの会社に勤めていた時に、インドの農村にテクノロジーを普及させる仕事などを担当したことです。そんな中、訪ねた村の家々で、庭先に干してあるサリーとか、クロス類を目にするわけです。元々の布好きの気持ちがムクムクと出てきて(笑)。思い起こせばその頃から、布のことで何かやりたいと話していましたね。でもインドにとって布は一番古くて難しい産業だから、やめておけって反対されて。そんな時に出会ったのがガンジーの言葉でした」

Khadi is the Sun of the village solar system. (カディは村の太陽系における太陽だ)という言葉を知り、村の経済にとって今も布の手仕事は重要であると考えた。

「ガンジーは、英国の機械織製品に対し、手紡ぎ・手織りのカディを纏(まと)うことで、その支配に対抗しようとしたんです。人々がチャルカ(糸車)を回し、カディを作り続けることでまずは精神的に自立しようと促したんですね。このことを知った時、むしろ私がやることはこれなんじゃないかと思ったんです。電気や水、教育のことなど様々な領域はあるけれど、21世紀においても手仕事による布の産業に可能性があるんじゃないかと。好きな布のことなら、一生やる仕事になるんじゃないかと」

「布が好き」からインドの手仕事の世界へ CALICO(キヤリコ) 小林史恵さん

『CALICOのインド手仕事布案内』より

そして会社を辞めたのが39歳のとき。インドの布の世界、手仕事の世界が続くこと。そのために職人それぞれが働き続けられる仕組みや、その手仕事を日常に、着る人が広がる仕組み作りに奔走し続けている。

自然のリズムに寄り添うことで、心が整っていく

手仕事の布から感じることはなんだろう。作る人の体温、その営みの時間。均一にならない仕上がりに作り手の感情を見ることもあるし、花鳥風月が描かれた柄に彼らが見ていた風景を思い浮かべることもできる。手仕事のものを身につけることで、その豊かなイメージに身を置くことになるのではないだろうか。

「布が好き」からインドの手仕事の世界へ CALICO(キヤリコ) 小林史恵さん

『CALICOのインド手仕事布案内』より

「布が好き」からインドの手仕事の世界へ CALICO(キヤリコ) 小林史恵さん

『CALICOのインド手仕事布案内』より

「若い頃に読んだウィリアム・モリスにも影響を受けていますね。彼はアーツ・アンド・クラフツ運動(Arts and Crafts Movement)で、美しいものに囲まれる生活の大切さを言っていますが、生活の中の美をもう一度取り戻すことが、今また大切なのではないかと思います。昔から受け継がれている手仕事の意匠だったり、技術だったり、文様だったり。そういうものって、花や植物、自然界の動物だったりがモチーフになっているものが多い。美しいものって自然界のバランスにだんだん近寄っていくんですよね。黄金比といわれるものもそうですが。だからそういうものに触れると理由なくいいなって思いますよね。そして、イライラしない(笑)」

「布が好き」からインドの手仕事の世界へ CALICO(キヤリコ) 小林史恵さん

史恵さんは「惹(ひ)かれる」という心の動きに素直な人。その感覚を信じ、出会った人、出会ったものと仕事を進めている。私も「惹かれる」という感覚を大事にシャッターを切りました(在本彌生)

一度自分を空っぽにすることで、見えてくることがある

今、私たちは、新型コロナウイルス感染拡大により、先の見えない日々が続いている。そんな時こそ、普遍的な美しさに触れることが必要なのかもしれない。そして、脈々と続いている自然のリズムの方に身を委ねてみることで、実は自由になるとインドから学んだと小林さん。

「インドって、多様なものが混ざり合っている国。本当に行くところ行くところ、びっくりすることがいっぱいなんです(笑)。だからこそ、システムになり得ないっていう、ある意味よさがあって。既成概念を取り払って、自分たちがいる仕組みを客観的に見させてくれるんです。日本の価値観だけがすべてではないなとか、ちょっと日本はやりすぎなんじゃないかなと思うことも。そうやって自分をニュートラルにできると、どうしたらもっとよくできるのか、導かれるようにわかってくるんです」

「布が好き」からインドの手仕事の世界へ CALICO(キヤリコ) 小林史恵さん

写真左:小林史恵さん 右:平井かずみさん

「よく『自分にはなんの能力もない』『自分が何者かがわからない』って悩むということを聞くけど、自分なんてない方がやるべきことが見つかると思います。私の場合は『布が好き』というのは自分だけど、そんな自分に何ができるかはわからず、今に行き着いたのは導きに素直に従ったからで。自分の中にある理想や好きなことが一つでもあれば、それを一歩やってみる。そうすると次が見えてくる。そんな風に導きに身を任せればいいということも、インドが教えてくれたことかもしれないですね」

平井かずみさんが生ける一輪の花「コスモス」

史恵さんの日本の拠点である奈良とインドは1200年以上の交流の歴史があります。そしていま、彼女が布を通して新しい繋(つな)がりを作る活動に思いを馳(は)せたとき、外来種でありながら日本の誰もが愛する花、コスモスが思い浮かびました。コスモスは秋の花の代表として知られていますが、明治期に入って輸入されたと言われています。国と国の境なく、根づき愛される姿に、史恵さんが重なりました。(平井かずみ)

「布が好き」からインドの手仕事の世界へ CALICO(キヤリコ) 小林史恵さん

(花生け・平井かずみ/撮影・在本彌生/文・竹田理紀)

 

CALICO:the Bhavanオープン

3月3日より、日本の拠点となるキヤリコのギャラリー・ショップCALICO:the Bhavan(キヤリコ・ザ・バワン)が、奈良公園内でゆるやかに始動します。

CALICO:the Bhavan
月曜定休 10-17時
〒630-8211 奈良県奈良市雑司町491‐5 
電話:0742-87-1513
メール:calicoindiajp@gmail.com
www.calicoindia.jp/

書籍『CALICO のインド手仕事布案内

「布が好き」からインドの手仕事の世界へ CALICO(キヤリコ) 小林史恵さん

CALICO:the ART of INDIAN VILLAGE FABRICSの小林史恵さんが、インドの仕事を通じて経験したことや布探しの旅のなかで見聞きしたことなど、さまざまな“手仕事布の世界” を紹介します。本書は、産地や作り手の紹介のほかにも、布づくりの背景にある思想や哲学を知ることができます。さらに、“旅する写真家” としても知られる在本彌生さんの、色彩豊かで生命力あふれる写真の数々も必見です。

CALICO のインド手仕事布案内
著者:小林史恵(文)・在本彌生(写真)
刊行:小学館
定価:2530 円(税込み)


平井かずみ(ひらい・かずみ)

「布が好き」からインドの手仕事の世界へ CALICO(キヤリコ) 小林史恵さん

フラワースタイリスト。ikanika主宰。草花がより身近に感じられるような「日常花」の提案をしている。東京を拠点に「花の会」や「リース教室」を全国各地で開催。雑誌や広告などでのスタイリングのほか、ラジオやテレビに出演。著書『フラワースタイリングブック』『ブーケとリース』『あなたの暮らしに似合う花』ほか多数。http://ikanika.com

PROFILE

  • 「布が好き」からインドの手仕事の世界へ CALICO(キヤリコ) 小林史恵さん

    在本彌生(ありもと・やよい)

    写真家。東京生まれ。大学卒業後外資系航空会社で乗務員として勤務、乗客の勧めで写真を撮り始める。複数のワークショップに参加、2003年に初個展「綯い交ぜ」開催、2006年よりフリーランスフォトグラファーとして本格的に活動を開始、雑誌、書籍、展覧会で作品を発表している。衣食住にまつわる文化背景の中にある美を写真に収めるべく世界を奔走している。写真集「MAGICAL TRANSIT DAYS」(アートビートパブリッシャーズ)「わたしの獣たち」(青幻舎)「熊を彫る人」(小学館)

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