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花のない花屋
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他人事だった、病を患う姉の苦しみ 数年前までは

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。
新型コロナウイルスで大きな影響を受けた花の生産者を支援している全国農業協同組合連合会(全農)に、その活動の一環として連載にご協力いただいています。
あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

姉が難病を発病したのは、20代のころ。大学院を修了し、学校の教員の職が決まりかけたタイミングでした。あっという間に車いす生活となり、楽しみにしていた就職も断念せざるをえなくなってしまいました。

かたや私は姉の発病とほぼ同じ時期に東京の大学に合格、両親と姉が暮らす関東の家を出て、一人暮らしを始めることになりました。ときどき帰省したときに会う姉は、体が不自由となったあとも、病気について愚痴を言うわけでもなく、たんたんと病気を受け入れている様子でした。以前と変わらない明るさで、「心配しないで大丈夫」と逆に、心配する私を励ますほどです。

小さい頃から、私のことを親身になって思ってくれた姉。それなのに、当時の私は、東京での新生活を楽しむことで頭がいっぱいでした。姉に対して、「かわいそう」「大変そう」といった他人事のような思いしか持たず、明るく振る舞う笑顔のかげで、姉がどんな不安や苦しさを抱えていたのか、知ろうともしませんでした。

十数年後、再び姉に病魔が襲いかかりました。今度は生死に関わる別の大病です。私は、それでも姉の気持ちに寄り添っていたとは言えなかったと思います。ところがまもなく、姉と同じ苦しさを身をもって実感することになります。

今から数年前のことです。姉がわずらっている二つの病気を、私も発症してしまったのです。どちらの病気も、遺伝性のものではないのに、です。

姉妹なので体質が似ているから同じ病気になった……そう言ってしまえばそれまでですが、この偶然に、何か“意味”があるのではないかと考えることがあります。難病のつらい痛みを感じるたび、思い出すのは姉のことです。そして姉の前向きさを思い出しては、励まされるのです。

姉もこの痛みに耐えてきました。いえ、私より速く進行しているだけに、もっとひどい体の痛みに耐えてきたのでしょう。また、発病によって仕事の道を断たれ、さらに自分の将来がどうなってしまうのか、不安でないはずはないと思います。

それでも姉はいつも明るくふるまっています。今大変お世話になっている人たちに恩返しをするために、例えば介護ヘルパーさんたちの事務所を作る、というような希望も思い描いたりしているようです。

同じ病に立ち向かいながら、私の前でどんどん道を切り開いてくれる姉。姉と同じ二つの病気になったことで、私はこれまで以上に姉を知るようになりました。偶然にも私たち姉妹が、同じ病気になったのには、何か運命めいたものを感じずにはいられません。

両親や家族も大事ですが、姉は私にとってかけがえのない存在。お花を送っていただけたら、姉に深い感謝と応援の気持ちを伝えようと思います。彼女の芯の強さを表現するような強いけどかれんな花を入れていただけると、とてもうれしいです。

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≪花材≫カトレア、カスミソウ、ピットスポルム

花束を作った東さんのコメント

芯の強さをカトレア、かれんさをかすみ草で表現しました。かすみ草は一般的には白色なのですが、今回はピンクのものも使いました。ピンクのかすみ草はめずらしいです。カトレアの色も、かすみ草に合わせました、明るくかわいらしいというよりは、青みがかっていてキリリとした印象もあるピンクです。今回、かすみ草でボリュームがあるようにに見えますが、花はシンプルにこの2種類だけ。でもたくさんつぼみの状態のかすみ草も入れたので、もっと膨らんでいきますよ。
若くして難病、大病を患ったにもかかわらず、優しく強いお姉さまをイメージしました。投稿者様も、奇(く)しくも二つとも同じ病気になったのですね。どうか姉妹で励まし合いながら、乗りきってください。

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(文・福光恵 写真・椎木俊介)

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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