もう一品ほしい時のお助けおかず! 香り楽しむバジル卵

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくれるという夢の連載。今回は「おかずをもう一品……」という時に助かるスピードメニュー。フレッシュバジルをたっぷり使った、香り高いたまご焼きをご紹介します。
―― 冷水先生、こんにちは。寒さの合間に心地いい春風を感じる季節になりましたね。
冷水 はい、花粉も盛大に飛んでますね(笑)。
―― それも春の風物詩ということで、ね。
冷水 春は新生活がスタートする季節ですし、お料理を始めようという方も多いかもしれませんね。
―― はい、そういうお便りもたくさん届いています。毎日の料理の定番食材である卵を使ったレシピを教えて欲しいという声が多いのですが、そういう背景もあるのかもしれません。
冷水 卵料理は意外と奥が深いんですよ~。
―― シンプルな調理法が多い卵ですが、火加減はすごく難しいですよね。あと合わせる食材も意外と思いつかないような……。いつも冷蔵庫にあるので、「もう一品おかずが欲しいな」という時はまず卵が思い浮かぶのですが、だし巻きくらいしか作れないのが本当のところです(涙)。
冷水 じゃあ今日は、「もう一品!」に応える卵のお助けレシピを紹介しましょうか?
―― わ~、それはありがたい!
冷水 じゃあ私も大好きなバジルを使った卵焼きはどうですか?

―― バジル! それは思いもよらない組み合わせです。
冷水 以前、台湾に旅行に行った時にレストランで偶然見たお料理なんですけど、オムレツのような卵焼きの中にどっさりバジルが入っていて、それはそれはおいしそうだったんです。
―― 日本ではあまりない組み合わせですが、想像するだけでおいしそうです。
冷水 フレッシュバジルがないときは大葉で代用してもおいしいので、一品足りない時のスピードメニューにはうってつけですよ。
―― 材料は卵とバジル、ナンプラーだけ! すごくシンプルです。
冷水 しかも作り方もすごく簡単ですぐにできちゃうので、今日はまばたきしないで見ていてくださいね(笑)。
―― はい!
冷水 まずはボウルに卵を割り入れて、ほぐします。そこにナンプラーを1、2滴加えて、水を小さじ1入れます。
―― 水を入れるんですか!? 卵の味が薄くなりそうですが……。

冷水 少し水を加えるとジューシーに仕上がるんです。ナンプラーと水を混ぜて出汁(だし)を作るような感じです。
―― なるほど、ナンプラーは風味も塩味も強いですものね。
冷水 次に卵液の中にバジルの葉っぱを加えて混ぜます。食感が悪くなるので、今回は茎は入れません。
―― おっと、バジルは切らずにそのままどさっと入れちゃうんですね。しかも1パック全部とはすごい量です。
冷水 火を入れるとカサが減るので大丈夫ですよ。これくらい入れたほうがバジルの香りが立っておいしいんです。大葉を使う場合は10枚くらいがちょうどいいと思います。
―― 大葉もけっこうな割合で冷蔵庫に残ってますから助かります!
冷水 火を通すので、バジルも大葉も多少鮮度が落ちていても大丈夫ですよ。
―― それはありがたい~! お、そして今日は立派な中華鍋が登場しましたね。
冷水 中華鍋は底に油がたまる構造になっているでしょう? そこに卵液を入れると一気に火が通って、トロッとした感じに仕上がるんです。

―― たしかに中華料理屋さんで食べる卵炒めは絶妙なトロトロ具合でおいしいですものね~。でも、もし中華鍋がない場合はどうしたらいいでしょう?
冷水 普通のフライパンで作る場合は、中弱火でじっくり火を入れてください。強火にかけると卵が固くなってしまうので。
―― 中華鍋は超強火、フライパンは中弱火、了解です!
冷水 さあ、ここからはスピード勝負ですよ。バジルを加えた卵液を、熱々の中華鍋に投入しヘラで軽くかき混ぜます。
―― うわ~、本当に一瞬で火が入りますね。卵の縁がもこもこと盛り上がってきました。
冷水 できる人は中華鍋を振って、卵を裏返してください。裏返したら菜箸などでいじらないほうがフワッと仕上がりますので。もし鍋を振れない人は、ヘラなどでひっくり返してください。
―― 菜箸で細かく混ぜるとスクランブルエッグになっちゃいますもんね(涙)。
冷水 そうですね(笑)。今回は一枚にまとめたいので、卵がバラバラにならないように気をつけて。
―― 裏返したら……どうしたらいいんでしょう!?

冷水 もし、中華鍋に卵がひっついてしまうようなら、鍋の縁から少しだけ油を追加してくださいね。そして、鍋を大きく、円を描くように回します。
―― おお、遠心力で卵も一緒に回ってますね。追い油をすることで滑りを良くするんですね。すでにバジルのいい香りが漂ってきました……。
冷水 仕上げにナンプラーを加えたら完成です。卵焼きの表面にすこーしだけ焦げ目がついて香ばしい香りがしてきたらOK。中は半熟で、ちょうどいい頃合いです。
―― 卵の黄色とバジルの緑がすごく奇麗!
冷水 大葉を使う場合も切らずにそのまま使うと、香りも色も奇麗です。夏はミョウガを使っても爽やかでおいしいですよ。
―― それもいいですね!
冷水 さあ、卵が半熟の間に、どうぞ。
―― う~ん、卵の焼き具合が絶妙です! ナンプラーが入ることでグッとアジアっぽい感じになって、初めて食べる風味の卵焼きです、これは。
冷水 ナンプラーの香りにバジルの風味が合わさると、アジアの風が吹きますよね。
―― すごく簡単なのに驚きがあって、これは喜ばれること間違いなしです。お酒にも合いそうで、おつまみにもいいですね。
冷水 ビールにも合いますよ~。
―― これを作るためだけに中華鍋が欲しくなってきました……。
冷水 卵料理をおいしく作りたいならぜひ中華鍋を使ってほしいですね。シンプルな料理ほど調理法で差が出ますから、ぜひ使ってみてください。
バジル卵
材料
バジル 1パック (大葉の場合 10枚)
卵 2個
ナンプラー 小さじ1/2
水 小さじ1
油 大さじ1と1/2
作り方
1 ボウルに卵を割りほぐし、ナンプラー小さじ1/4(2,3滴)と水を加えてかき混ぜる。バジルの葉を加えてさらに混ぜる。
2 中華鍋に油を入れて熱々に熱する。1を入れたらかき混ぜながら半熟に仕上げる。最後に残りのナンンプラーを加える。

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