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「脚本は自分が勝負すべき仕事」 岩崎う大、ゼロから生み出す苦難を超えて

不穏なキャラクターが登場するコントに定評があり、「キングオブコント」2013年大会では、お笑いコンビかもめんたるを優勝に導いた芸人・岩崎う大。

芸人活動と並行して、2015年に旗揚げした劇団かもめんたるの作品が、演劇界で最も歴史と知名度のある岸田國士戯曲賞の候補作に2年連続でノミネートされるなど、劇作家としての評価も高い。

3月からHuluにて配信されているHuluオリジナル「THE LIMIT」では、全6話のうち、第3話と第5話で脚本を担当。「究極の1シチュエーションドラマ」をテーマにした本作でも作家性を発揮し、物語の中に独特のユーモアと“いやらしさ”を込めている。

いまでこそ、お笑いから演劇、ドラマにいたるまで、ジャンルを横断する活躍を見せてはいるが、ここまでの道のりは決して順風満帆ではなかった。かつて「テレビのバラエティー番組には居場所がなかった」と語っていた彼が、いま作家としての自分をどう見つめているのか。

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「そこ、お願いしちゃっていいの?」という感覚がある

――新作ドラマ『THE LIMIT』は、1話完結の「1シチュエーションドラマ」という設定ですが、作りとしてはコントにも通じるものがありますね。

岩崎 僕は全6話のうち、2話分の脚本を書いたのですが、両方とも簡単にコントにスライドできるような構造でしたね。しかも自分が書くからには、ドラマとはいえ、笑いの要素はけっこう入れているので、よりコントっぽい印象を与えるかもしれません。

コントって結局、人間の関わり合いをどう笑いにするかっていうことだと思うんです。このドラマのテーマである“1シチュエーション”というのも、閉じ込められたりして物理的に移動できないっていうことではなく、そこにいる人間同士の関わり合いによって、その場所から“離れない”っていう選択をしている人たちの物語なんですよ。

「脚本は自分が勝負すべき仕事」 岩崎う大、ゼロから生み出す苦難を超えて

――お笑いや演劇では、作・演出と同時に出演もされていますが、脚本家として、台本を仕上げるまで、というパートを担当することについては?

岩崎 本業の脚本家にとっては、脚本を書き上げることがゴールっていうのが当たり前の感覚なんでしょうけど、僕が普段やっている活動では、まず台本を書き上げることがスタートで。そこから実際に演じてもらって、演出をして、やっとゴールが見えてくる。でもドラマでは、現場の演出や編集作業を監督がやってくれるので、いまだに「そこお願いしちゃっていいんですか?」っていう感覚はあります。

ただ、そのぶん「そこはそういう解釈じゃないんだけどな」とか「あそこ笑いのつもりで入れたのに気づかれてないな」みたいなことは、正直よくあります。もちろん、自分が想像していた以上のものが出来上がることもあるんですけどね。『THE LIMIT』でいうと、第5話「切れない電話」では、自分で書いた脚本なのに、後半は見ながらずっと笑っちゃいました。

―― 一方の第3話「ユニットバスの2人」では、ご自身で出演もされています。

岩崎 自分が出演すれば、現場にもいられるので一番いいなとは思ってたんですけど、実際やってみると、監督がやりづらそうだなって思っちゃいました。

「脚本は自分が勝負すべき仕事」 岩崎う大、ゼロから生み出す苦難を超えて

©HJホールディングス

才能のなさを自覚しながら、努力するのはしんどい

――脚本家としてのお仕事が増えていることについては、どう感じていますか?

岩崎 素直にうれしいですよ。でも、脚本にしても、コントの台本にしても、ゼロから生み出すのって、仕事の中で一番つらいんですよ。これは自分で演出をしたり、演者としても出ていたりするからはっきりわかるんですけど。

――舞台と映像作品では、設定ひとつにしても、条件が変わります。たとえば公園であったり、海でも山でも、舞台上で見せるには限界があることも、ドラマや映画なら実際のロケーションで撮影ができます。

岩崎 舞台では、自分が思い描いているイメージをどこまで伝えることができるのか、観客の想像力に頼っている部分が大きいのはたしかです。それが映像では、台本に“公園”と書かれていたら、公園で撮影することができます。できますが、いざ本物の公園を使うとなると、「こういう公園じゃないんだよな」とかって絶対になるんですよ。「もっと人がたくさんいるイメージなのに」とか、そこを考えちゃうときりがない。

「脚本は自分が勝負すべき仕事」 岩崎う大、ゼロから生み出す苦難を超えて

――いろんな制約もあり、すべてが思い通りにはいきませんからね。

岩崎 なのでもう、書いたら丸投げするのがいいのかなと思うようになってきましたね。脚本家としては、そういう手放せる能力も必要なのかもしれません。

――劇作家としては、劇団かもめんたるの上演台本が、2020年と2021年の岸田國士戯曲賞の候補作にノミネートしています。

岩崎 2年連続っていうのがでかいですよね。でも、お笑い芸人が書いているっていう情報は、良い面もあれば、悪い面もあると思うんです。芸人が書いていることで舞台を見にいくきっかけになったりするのが良い面だとしたら、悪い面は、やっぱり笑いに対して敏感になるというか。

演劇に限らず、今回のドラマにしても、まったく同じ内容だとして、芸人ではない脚本家の人が書いていたら、だいぶ印象が違うはず。脚本家の時だけ、たけしさんが映画を撮る時の「ビートたけし」と「北野武」みたいに、名前を変えたらいいんですかね。その正解が知りたいです。

――いまでは作家のお仕事も順調にされていますが、かもめんたるとして2013年に「キングオブコント」で優勝したあとは、テレビ番組に呼ばれるようになったものの、なかなかバラエティーのノリになじめなかった、と公言されていますよね。

岩崎 当時は自分にとっての“正しい場所”にいないんだろうなっていう感覚があったんです。テレビのバラエティー番組は、自分が収まるべき場所じゃないっていう。だったら場所を変えるために、どうにか動かなきゃいけないんだろうなって。劇団かもめんたるをはじめたのも、そういうことです。でも脚本の仕事は、大変ではあるけれど、やりがいはあるというか、勝負をするべき場所なんだなっていうのは感じています。

だってテレビのバラエティーとかは、努力の仕方もわからなかったですからね。それって才能がないってことじゃないですか。たぶん才能ないんだろうなって、自分でもわかっていることをがんばるのって、本当にしんどいだけなんですよ。

「脚本は自分が勝負すべき仕事」 岩崎う大、ゼロから生み出す苦難を超えて

お笑いもジャンル分けが進めばいい

――昨今のお笑いをめぐる状況の変化については、どのように感じていますか? あえて挙げるとすれば、「人を傷つけない笑い」や「お笑い第7世代」といったキーワードが注目されていますが。

岩崎 何にせよ、変化なり動きがあるっていうのは、いいことだとは思います。でも、見る側が、このネタは人を傷つける/傷つけないという物差しを持つようになったことで、お笑いのあり方というか、見方が変わったことはたしかでしょうね。

たとえば、映画でも音楽でも、いろんなジャンルに分かれているじゃないですか。そして、そのジャンルを観客側も共有している。だけど、お笑いはまだジャンル分けがされていないんですよ。どんな種類のお笑いでも、全部ひっくるめて「お笑い」っていう一つのジャンルとして括られてしまう。

――映画なら「ホラー」「SF」「コメディ」など、ジャンルが分かれていることによって、ある意味では多様性が担保されている、とも言えますね。

岩崎 なので、今後はお笑いもどんどんジャンルが分かれていけばいいのに、って思います。これは「人を傷つけない笑い」という、お笑いのジャンルのうちの一つです、っていう。はやりのジャンルがあるのはいいですけど、全員がそのジャンルの笑いをやる必要はないですし、見る側にとっても、好きなジャンルもあれば、苦手だったり嫌いなジャンルもある。そういうふうに分かれていったほうがいいと思います。

「脚本は自分が勝負すべき仕事」 岩崎う大、ゼロから生み出す苦難を超えて

――作品をつくるにあたって、時代性や時事性といったものは、どのくらい意識していますか?

岩崎 そこまで意識的ではないですが、社会の動きはどうしたって反映されるものですよね。人間の進化において、時代ごとのトレンドってすごく重要だと思うんですよ。揺り戻しも含めて。

――SNSでの評価とかも、気にされますか? バズりたい、と思ったりとか。

岩崎 そんなにいちいち気にしたりはしないですけど、バズりたいとは思ってますよ。でも、何でもいいからバズりたいってわけではなくて。僕自身がバズるというよりは、作品が話題になってほしいです。今回の『THE LIMIT』も、ありがたいことに、脚本家として僕の名前がわりと前に出ているので、どうにか話題になってほしいなと思います。

そして、いつか『マイデリケートゾーン』っていう、僕が描いている漫画がバズってほしいですね。僕のことを追いかけていれば、必ずあの漫画にたどり着くはずなんです。あの漫画こそが、自分の作風を全開にして、きっと話題になると思って描いたんですけど、業界の人たちはたくさん買ってくれたのに、一般の人たちには全然広まっていかなかった。僕の作品を見て「う大ワールド」とか言ってくださる人がいますけど、『マイデリケートゾーン』がバズった時こそ、はじめて僕が売れたと言える時であり、う大ワールド誕生の瞬間ですよ。

(構成=おぐらりゅうじ 撮影=南阿沙美)

 

「脚本は自分が勝負すべき仕事」 岩崎う大、ゼロから生み出す苦難を超えて

プロフィール

岩崎う大(いわさき・うだい)
1978年生まれ、東京都出身。早稲田大学のお笑いサークルで出会った槙尾ユウスケと、お笑いコンビかもめんたるを結成。2013年「キングオブコント」優勝。2015年に劇団かもめんたるを旗揚げ、2020年と2021年には上演台本が岸田國士戯曲賞の最終候補にノミネート。漫画家としても活動し、「オモコロ」などで定期的に作品を発表、2018年には『マイデリケートゾーン』(小学館)が単行本化。メールマガジン「週刊かもめんたるワールド」では小説を連載している。

 

番組情報

「脚本は自分が勝負すべき仕事」 岩崎う大、ゼロから生み出す苦難を超えて

Huluオリジナル「THE LIMIT」

玉田真也、岩崎う大、荻上直子――人気脚本家3人が紡ぐ、サスペンス、コメディ、ラブストーリーなど多彩なジャンルにわたる、半径3メートルの人間ドラマ「THE LIMIT」。タクシーや長距離バス、ユニットバスやベランダといった限定された空間・状況において、リアルタイムで進行するストーリーを、一話完結のオムニバス形式で紡いでいく。各物語の最後に待ち受けるのは、視聴者の想像や期待値のリミットを超える結末。登場人物たちの意外な過去に、隠された本音、衝撃の事実、リミット空間に追い込まれたときに表れる“人間の本性”とは――。

【出演】
第1話「ネコと井戸」=伊藤沙莉、堺小春、坂東龍汰
第2話「タクシーの女」=門脇⻨、古川琴音
第3話「ユニットバスの2人」=細田善彦、岩崎う大(かもめんたる)
第4話「ベランダ男」=岡山天音
第5話「切れない電話」=泉澤祐希、岩松了、夏子
第6話「高速夜行バス」=浅香航大、木野花

【放送・配信日】
Huluで毎週金曜、新エピソード独占配信中(全6話)
(※通常配信に加え、4K UHD/HDR/5.1chサラウンドでも配信)

【脚本】玉田真也、岩崎う大、荻上直子
【エグゼクティブプロデューサー】長澤一史
【チーフプロデューサー】茶ノ前香
【プロデューサー】中村好佑 小室秀一
【企画】三浦光博 塚田雅人 賀内健太郎
【監督】賀内健太郎 吉田真也 中嶋駿介
【制作プロダクション】博報堂プロダクツ
【製作著作】HJホールディングス

★公式HP:https://www.hulu.jp/static/thelimit/

 

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