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THE ONE I LOVE
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エアロスミス、安全地帯、井上陽水―― 澤野弘之を感動させた「愛」の名曲

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか──。実力派アーティストが“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。

今回は、3月3日にSawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキヌジーク)名義での4thアルバム『iv(イヴ)』をリリースした澤野弘之がセレクトした5曲を紹介する。劇伴作家として多数のアニメ音楽などを手がけてきた澤野が提示したラブソング・プレイリストは、彼自身のひねりの効いた作風とは一見ミスマッチにも思える、王道ナンバーがずらりと並ぶものとなった。

〈セレクト曲〉
01. Andrea Bocelli & Matteo Bocelli「Fall On Me」
02. Aerosmith「I Don’t Want to Miss a Thing」
03. 井上陽水「恋の予感」
04. 安全地帯「ワインレッドの心」
05. SawanoHiroyuki[nZk]:優里「Till I」

■Andrea Bocelli & Matteo Bocelli「Fall On Me」

ディズニー映画『くるみ割り人形と秘密の王国』(ラッセ・ハルストレム&ジョー・ジョンストン監督/2018年)のエンドソングで、ここ数年で聴いたものの中でとくに感銘を受けた1曲です。今でも毎日のように聴いています。歌詞の内容まできちんと把握しているわけではないんですけど、映画が親子愛を描いた物語で、歌っている2人も親子なんですよね。そういう愛の歌として選びました。メロディーはシンプルなんだけど、終わりのほうへ向かうにつれてどんどん壮大になっていくんです。同じメロディーをアレンジの力でよりドラマチックに聴かせる技術がすごいなと。

良質な映画ですし十分楽しめましたけど、正直に言ってしまうと、ものすごく感情移入したわけではなかったんです。そういう状態でエンドロールに差しかかったときに、「なんだ、この曲は!」となって。映画音楽やアニメ音楽など、エンターテインメントの作品に付随する音楽って、音楽単体で評価されない傾向があると思うんです 。仮に好きな劇中歌があったとしても、そこには好きな映画やアニメを思い起こさせてくれることへの好意が交じっているというか。でもこの曲は、そういうバイアスではなく、単体で素晴らしい音楽だと感じられた。だからより印象深かったんだと思います。自分が作る音楽もそうでありたいなって。

■Aerosmith「I Don’t Want to Miss a Thing」

映画『アルマゲドン』(マイケル・ベイ監督/1998年)の曲ですが、こちらは「Fall On Me」とは逆に、映像と音楽がリンクすることで特別なものになる体験をした曲として選びました。中学3年生くらいのときにエアロスミスで洋楽ロックに目覚めて、その後もずっと好きで聴いています。この曲は映画とともに大ヒットしましたが、そんな世間の評価をよそに、僕は正直「エアロスミスはほかにもっといいバラード曲がたくさんあるのにな」と思っていました(笑)。でも映画を見たとき、エンドロールの余韻に影響されて「めっちゃいい曲じゃん」と感じるようになった。先ほどは「音楽単体としても評価してほしい」という話をしましたけど、「映像とともにあることで音楽の魅力がより増幅する」というのも、総合芸術のひとつの醍醐味ですよね。両面あるんです。

ちなみに、僕が今やっている音楽はどちらかというとデジタルサウンドのイメージが強いかもしれませんが、ドラムやギターの音作りにはハードロック好きな一面も垣間見えると思います。スネアに関してはバシーンと激しく鳴っていないと気が済まないタイプですし、それこそエアロスミスの「Eat The Rich」のイントロでのドラムの鳴り方をある種の理想としていて。あと、小室哲哉さんも僕の重要なルーツの1人で、TM NETWORKがテクノサウンドの中で松本孝弘さんのギターなどロックな要素を取り入れていたことからの影響も大きいと思います。

■井上陽水「恋の予感」

母親が井上陽水さんと安全地帯の大ファンで、子どもの頃から車の中では常に彼らの曲が流れていました。これは、そこで耳にしていた中で子どもながらにいいなと感じていた曲です。安全地帯が歌ってヒットした曲なので、世間的には“安全地帯の曲”というイメージだとは思うんですけど、僕の中では「恋の予感」といえば陽水さんの曲なんですよね。もちろん僕もあとから安全地帯バージョンも知るんですけど、これに関しては陽水さん版のほうがシンプルでいいなと思っていて。当時たしか小学3年生くらいでしたけど、よく口ずさんでいましたね。この大人の恋愛ソングを(笑)。

陽水さんと安全地帯以外では、普通にテレビアニメの主題歌や、ウッチャンナンチャンのバラエティー番組で流れてくるマモー・ミモーの曲とかを受動的に聴いているくらいでした。その後、小4くらいで自発的に音楽を聴くようになるのがCHAGE and ASKAから。初めて買ったCDは「ドラゴンクエスト」のオーケストラアルバムが最初でした。当時ドラクエをやっていたわけではないんですが、曲は知ってましたし、たしか知り合いの家でたまたまCDを聴かせてもらって興味を持ったんだったと思います。中学生になってからも格闘ゲームのサントラを好んで買ったりしていたので、当時から劇伴とかBGM的なものが好きだったんでしょうね。

■安全地帯「ワインレッドの心」

これは完全に「恋の予感」とセットの選曲です。どちらの曲も陽水さんが歌ったバージョンと安全地帯バージョンがあって、作詞が陽水さん、作曲が玉置浩二さんというのも共通していて。「恋の予感」は陽水さん版が好きなんですけど、「ワインレッドの心」は安全地帯のほうが好きなんですよね。陽水さんバージョンはちょっと子どもには大人っぽすぎたのかな。ただ、こういうセンシティブな曲に幼少期から触れていたことで、のちにCHAGE and ASKAを好きになる素地が育まれたのかもしれないなとも思っています。

同じ楽曲を、別のシンガーが歌うことで生じる違いの楽しみ方を皮膚感覚で知ることができた、という側面ももしかしたらあるのかもしれない。たとえばカバー曲を聴くときに「オリジナルシンガー以外は違和感しかない」みたいに言う人もいますけど、僕はあまりそういうふうに感じたことはなくて。普通に楽しく聴けちゃうし、それぞれのいいところをフラットな目線で見つけたりできるのも楽しいです。それがもし幼少期の体験のおかげなんだとしたら、母親に感謝ですね。

■SawanoHiroyuki[nZk]:優里「Till I」

今回の新曲の中では一番ラブソング的なバラード曲ということで、これを選びました。シンガーソングライターの優里さんをボーカリストに迎えた1曲です。彼の歌声を最初に聴いたのは、たしか去年の6月くらいだったかな。日本人ボーカリストには珍しい、海外のシンガーっぽい“がなり方”を持っている人で、めちゃくちゃカッコいいなと。ただ力強いだけじゃなくて、がなった声でもどこか澄んでいるというか、独特の声質が魅力だと思います。

どうしてこんなに僕の感覚にフィットするのかなと思って本人と話してみたんですけど、どうやら彼もボン・ジョヴィやMR.BIGといったハードロックが好きらしくて。僕も優里さんも今やっている音楽でその側面を前面には出していないんですけど、音楽的な嗜好が共通していて、裏では通じ合っていたんだなと(笑)。なるほどなと思ったし、不思議な巡り合わせだとも思いましたね。

エアロスミス、安全地帯、井上陽水―― 澤野弘之を感動させた「愛」の名曲

曲自体は彼に合わせて作ったものではなく、もともと作っていたものの中から合いそうな曲を選んだ感じです。優里さんに限らず、だいたいいつもそういう作り方ですね。特定のシンガーに当て書きするように作ることはめったにないです。レコーディングでも、ディレクションなどで細かいことはほとんど要求しません。そのシンガーのアプローチをセッション的に楽しみたい気持ちが強いんですよね。もちろん、サウンド的に最低限必要なことは伝えますが、本当に単純な話にとどめています。「この曲はこういうふうに歌ってほしい」とあまり要求しすぎてしまうと、その人とコラボする意味がなくなってしまうので。

(取材・文/ナカニシキュウ、撮影/久場祐愛〈たしざん〉、企画制作/西本心〈たしざん〉)


★他のアーティストのインタビューはこちら

 

■SawanoHiroyuki[nZk]セレクト「THE ONE I LOVE」プレイリスト

■SawanoHiroyuki[nZk]『iv』

エアロスミス、安全地帯、井上陽水―― 澤野弘之を感動させた「愛」の名曲

■Profile
澤野弘之(さわのひろゆき)
1980年生まれの作曲家。個人名義では主にアニメの劇伴作家として知られ、『進撃の巨人』『機動戦士ガンダムUC』『キルラキル』『青の祓魔師』『七つの大罪』などヒット作の音楽を多数手がける。2014年からはアーティスト活動として、楽曲ごとにさまざまなシンガーを招いてボーカル楽曲を発表するプロジェクト・SawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキヌジーク)を始動。同名義においても、多数のアニメ作品の主題歌などに起用されている。

【関連リンク】
SawanoHiroyuki[nZk] 4th Album「iv」特設サイト
https://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/hiroyukisawano/iv/

SawanoHiroyuki[nZk] | ソニーミュージックオフィシャルサイト
https://www.sh-nzk.net/

澤野弘之 [nZk] (@sawano_nZk) ・Twitter
https://twitter.com/sawano_nZk

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