&M

いしわたり淳治のWORD HUNT
連載をフォローする

BEYOOOOONDS『激辛LOVE』から連想 「ニッチなシーンのテーマ曲」考察

音楽バラエティー番組『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で披露するロジカルな歌詞解説が話題の作詞家いしわたり淳治。この連載ではいしわたりが、歌詞、本、テレビ番組、映画、広告コピーなどから気になるフレーズを毎月ピックアップし、論評していく。今月は次の6本。

 1 “激辛LOVE 痺れちゃったでしょ?”(BEYOOOOONDS『激辛LOVE』歌詞(作詞=Barry Blue/Paul Greedus 日本語詞=星部ショウ) )
 2 “これ余談なんですけど・・・”(朝日放送のバラエティー番組名)
 3 “ワンマイルウェア”
 4 “よんじゅーぜろ”(4歳の次男)
 5 “家に族と書いて家族”(UQモバイル「UQ学割」のCM)
 6 “棒球になってしまう”(ブラックマヨネーズ・吉田敬)

日々の雑感をつづった末尾のコラムも楽しんでほしい。

■関連記事
クールな言葉が躍る時代の反動? Ado『うっせぇわ』の快進撃
「ブッダのような死に方」とは? イメージしづらい言葉で注意を引く技あり歌詞
女子中高生間で流行「きゅんです」 TikTokが取り戻す音楽の娯楽性
直接的な表現が奏功 りりあ。『浮気されたけどまだ好きって曲。』
森七菜『スマイル』 作詞家いしわたり淳治がうらやむ技あり歌詞

BEYOOOOONDS『激辛LOVE』から連想 「ニッチなシーンのテーマ曲」考察

今から20年くらい前、当時私が組んでいたSUPERCARの『YUMEGIWA LASTBOY』という曲が映画『ピンポン』の主題歌になった。光栄なことに、今でもその曲が世界卓球のニュースやバラエティー番組で卓球をやるシーンなどのBGMで流れることがある。

BEYOOOOONDSの新曲『激辛LOVE』を聴いた時、これまでに「恋」と「スパイス(刺激)」みたいなものを掛け合わせた歌はたくさんあったけれど、「恋」と「激辛」を掛け合わせた歌はあまりなかったことに気がついた。と同時に、テレビで激辛料理を食べる企画は番組でよく見かけるのに、「激辛」をテーマにした歌に代表曲がまだなかったことにも気がついた。日本テレビの『有吉ゼミ』の激辛企画では、終盤に映画『アルマゲドン』のテーマ曲であるエアロスミスの『ミス・ア・シング』がいつも流れるけれど、あれは激辛というよりは感動の方にフォーカスした選曲という感じである。

きっと激辛に限らず、こういった「今までありそうでなかったニッチなテーマの曲」はまだまだあるのだろうと思う。それを見つけて歌にすることは、この先に長くテレビなどで使われて視聴者の頭に刷り込まれていく可能性も大いにあるので、曲を作る時の大事な視点のひとつかもしれない。

ニッチなテーマの代表曲として個人的に思いつくのは、テレビ東京『モヤモヤさまぁ〜ず2』で、精肉店に入ったり肉料理を食べたりするシーンでいつも流れるハル&チッチ歌族の『お肉食べようのうた』である。肉料理を食べる前には陽気に口ずさむことすらある。

BEYOOOOONDS『激辛LOVE』から連想 「ニッチなシーンのテーマ曲」考察

ABCで放送中のかまいたちの番組『これ余談なんですけど・・・』。毎週、番組でピックアップした三つのニュースをきっかけにして、かまいたちの2人とゲストが「これ余談なんですけど……」と言いながら話を広げていくトーク番組。見ているうちに、この「これ余談なんですけど……」という言葉は魔法の言葉なんじゃないかと思えてくる。

誰かと話していて、自分がまるで興味のない話題やあまり参加したくないうわさ話や愚痴みたいなものに巻き込まれることがある。出来ることなら早めに話題を変えたいけれど、「そんなことよりさあ……」などと強引に話を変えても場もしらけてしまうだけなので、苦笑いしながら付き合うくらいしか出来ないものである。

そんな時、「これ余談なんだけど……」と前置きをしてから、その場の話題と近そうで遠い話にそっとすり替えるのはすてきな一手である。仮にもし自分の余談の後、また元の苦手な話題に戻ってしまったとしても、こちらとしてはそもそも余談として話したのだから何も問題はないし、話題をすり替えることに成功したらもうけものである。このトライはものすごくローリスク、ハイリターンに他ならない。

そして、余談だけれどこの番組のオープニングテーマになっているchelmicoの『エネルギー』という曲。このサビの歌詞「余ってるエネルギー 今夜君と使いたい」はものすごく秀逸なパンチラインだなあと思う。そんなメッセージの歌、今までに聴いたことがないもの。

BEYOOOOONDS『激辛LOVE』から連想 「ニッチなシーンのテーマ曲」考察

リモートワークやオンライン授業が増えたことも手伝ってか、いつからか「ワンマイルウェア」という言葉をよく目にするようになった。自宅から1マイル(=約1.6km)くらいの範囲で着る、ホームウェアとタウンウェアの中間のような服という意味合いらしい。

私は以前から自宅で仕事をしているので、基本的な行動範囲はワンマイル程度のものである。というわけで、あらためて自分のクローゼットを見てみると、なるほど、ワンマイルウェアと呼べそうな服がほとんどだった。今まで私はワンマイルウェアばかり買っていたのか、という衝撃。

それにしても世の中の皆さんは服を「距離」で分けていたなんて、知らなんだ。コロナは色々な新しい発見をくれる。

BEYOOOOONDS『激辛LOVE』から連想 「ニッチなシーンのテーマ曲」考察

先日、4歳の次男と車に乗っていた時のこと。「おとーさん、また、よんじゅーぜろ。よんじゅーぜろって、なぁに?」と何度も聞いてくる。すぐにそれが道路脇の「時速40キロ制限」の交通標識の数字を指しているのだと気がついた。

たしかに、41は「よんじゅういち」だし、42は「よんじゅうに」と読むのだから40は「よんじゅうぜろ」と読むのが自然なことかもしれない。彼なりに一生懸命考えたそのいびつな読み方がいとおしい。

どうしてそれだと間違いなのかを説明する言葉を私は持っていなかったので、考え方とアイデアを心から褒めたたえた上で、もしかしたら君は世の中の方がおかしいと思うかもしれない、でも世の中には従わなければならないルールもあるのだ、という世の中の厳しさをついでに教えてあげた。

BEYOOOOONDS『激辛LOVE』から連想 「ニッチなシーンのテーマ曲」考察

UQモバイルのサービス「UQ学割」のCM。最後に深田恭子さんが「家に族と書いて家族」と唐突に言い、それに対して永野芽郁さんが「何それ」と返したところでスパッと終わる。

古くは太陽族だの竹の子族だのロカビリー族だのという言葉があったように、「〜族」には同じ仲間みたいな意味がある。なるほど、「家族」という言葉をじっと見つめていると、「いえぞく」と読めなくもなくて、そうなると不思議と別の意味が立ち上がってくる感じがする。家で過ごすことを大切にしている人種というか、なんというか。

私自身、仕事も大半が家での作業だし、休みの日も家族とわいわいやっている方が好きなので、間違いなく「いえぞく」のタイプだと思う。

大人になると色々と肩書が付く。会社員であれば名刺の名前の上に所属部署や役職などが何かしら書かれているし、私であれば作詞家・音楽プロデューサー・作家などと書かれている。でも、どんなに自分の肩書が変わろうと増えようと、心の中のいちばんの役職は“父親”でありたいと思っている。出来ることなら良い父親でありたいけれど、やさしさと厳しさのバランスは難しいし、子供の性格は一緒じゃないから育て方にこれが正解なんてものもなさそうだし、いつまで経っても相変わらず手探りの毎日である。でも、せめて家族のことをいつも心のどこかで気に掛けて暮らしていたいと思う。

コロナで日常が様変わりして一年が過ぎた。「いえぞく」の本領発揮の一年だったなと、UQモバイルのCMを見ながら、子供と遊ぶ手を止めてぼんやり思った。

BEYOOOOONDS『激辛LOVE』から連想 「ニッチなシーンのテーマ曲」考察

関西テレビ『村上マヨネーズのツッコませて頂きます!』でのこと。視聴者からの「小杉さん、そろそろ新ギャグを考えませんか?」というメールに、実は3〜4年前からこれどうかなっていうのがあると小杉さんが言い、驚いた時などに使うギャグと説明した上で、カメラ目線で「ギャース!」と叫んだ。それを見た吉田さんが、小馬鹿にしたようにニヤニヤして、「いいねー。考えてきた感あるねー。ヒーハーのような勢いが欲しいけど、ヒーハーになりすぎたくない、ちょっとしたヒネリも欲しいという考えが、結局、棒球になってしまう、という……」と言い、「誰が棒球やねん!」と小杉さんが笑ってツッコんだ。

棒球というのは野球で言うところの打者にとって打ちごろの球、威力のない投球のことである。「棒球になってしまう」という表現は、野球経験者の私にはものすごくピンとくるものがあった。

というのも、例えば歌詞を書いているときなどに、そこまで悪くもないのだけれど、どこか突き抜けない歌詞が出来てしまうことが時にはあって、そのゾーンに一度入ってしまうと、もう微調整程度では良いものには絶対にならないので、潔くゼロから考え直す必要が出てくる。あの時のどうにもならない感じは吉田さんが言うところの、「考えた感」なのだなと思った。

よく考えることは大切である。でも、よく考えたからいいというわけではない。大切なのは「考え過ぎずに、考えなさ過ぎずに、それでもよく考えること」である。

……とか何とか書いているこの連載は、よく人から「考えすぎ」と言われるのだけれど、これは考えすぎることを楽しむコラムなので、その辺はご愛嬌(あいきょう)。

<Mini Column>
はじめまして。新人ですが、黒帯です。

去年、普段は作曲・編曲・プロデュースなどの裏方の仕事をやっている仲のいいミュージシャンに声を掛けて3人組のユニットを組んで音楽を作り始めた。それが、あれよあれよという間に話が進んで、この度2021年3月19日に第一弾シングル『ビー・マイ・フレンド』という曲で、デビューすることになった。

ありがたいことに、作詞家として私はこれまでにたくさんの作詞の機会を頂いてきたけれど、出来上がっているメロディーに後から歌詞を乗せる、いわゆる曲先という形がほとんどだった。その反動というわけではないけれど、歌詞から作る音楽がもっとあってもいいのではと心のどこかでは思っていた。そうすることで、より「歌」にフォーカスした曲が作ることを出来る気がしていたのである。

メンバーは決まった。詞先で曲を作るというコンセプトも決まった。あとはユニット名である。が、40歳を超えて自分たちで何かを名乗るというのは考え出すとなかなか照れ臭いものである。格好いい言葉を並べるのは超絶気恥ずかしいし、かといって肩の力を抜いてしまうとお遊びグループのように見えてしまう。SUPERCARは我ながらいいバンド名だったと思うけれど、すっかりおじさんになった今、もうそんなポップな名前は名乗れない。そういう目で、あらためて世の中のバンド名やお笑いのコンビ名を見直してみると、そこには大なり小なり“若気の至り”みたいなものが見え隠れしているなと思った。

あれこれ考えて、普段は黒衣的な仕事をしている音楽業界の裏方の人間なのだから、変に格好つけずに『THE BLACKBAND』くらいがいいのではないかと思った。それぞれにキャリアのあるその道のプロたちなので、黒帯=BLACKBANDみたいなダブルミーニング的な言葉遊びもいいなと思った。略してブラバン。ブラバンといえばブラスバンド部のことではなく、これからはTHE BLACKBANDのこと、となるように頑張ります。年内は2カ月ごとにシングルを配信予定なので、まずは1stシングル『ビー・マイ・フレンド』を、どうぞよろしゅう。

■関連記事
クールな言葉が躍る時代の反動? Ado『うっせぇわ』の快進撃
「ブッダのような死に方」とは? イメージしづらい言葉で注意を引く技あり歌詞
女子中高生間で流行「きゅんです」 TikTokが取り戻す音楽の娯楽性
直接的な表現が奏功 りりあ。『浮気されたけどまだ好きって曲。』
森七菜『スマイル』 作詞家いしわたり淳治がうらやむ技あり歌詞

REACTION

LIKE
COMMENT
0
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル

    *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら