「やってみなはれではなく、やって当然」 サントリーがeスポーツ支援にこめた思い

2010年代後期に国内メディアで頻繁に目にするようになった“eスポーツ”という言葉。言葉自体は知っているけれども、今どのように盛り上がりを見せ、どんな課題を抱えているのか。日本のゲーム文化とeスポーツを取り巻く実態はどのようにつながっているのか。果たしてeスポーツとはなんなのか——。本連載はそのような疑問を解決する糸口を探るべく、プロゲーマー、教育者、企業など、eスポーツに関わる方々にお話をうかがっていきます。ナビゲーターにはゲーム好きでeスポーツの普及を目指す十束おとはさん(フィロソフィーのダンス)をお迎えします。

第3回の対談相手として登場していただくのは、サントリー食品インターナショナルのコミュニケーション本部コミュニケーションデザイン部長の三好健二さんです。

大手企業が「eスポーツ」のスポンサーになる動きが加速しています。サントリーは2018年に「日本eスポーツ連合(JeSU)」のオフィシャルスポンサーになった、eスポーツ支援の草分け的な存在です。ウェルプレイドが運営する、eスポーツに特化した大会「ウェルプレイドリーグ」、福岡に本拠地を置くプロeスポーツチーム「Sengoku Gaming」のスポンサーとして支援を行っています。

創業者、鳥井信治郎氏の言葉、「やってみなはれ」に象徴される挑戦心あふれる気風のあるサントリーは、なぜ、eスポーツへの支援をスタートさせたのか。若者が熱中するeスポーツの魅力などについて、十束おとはさん(以下、十束)が、JeSU発足当初から支援を担当している三好健二さん(以下、三好)にうかがいます。

「やってみなはれではなく、やって当然」 サントリーがeスポーツ支援にこめた思い「やってみなはれではなく、やって当然」 サントリーがeスポーツ支援にこめた思い

「やってみなはれではなく、やって当然」 サントリーがeスポーツ支援にこめた思い

三好健二(みよし・けんじ)

香川県生まれ。1991年サントリー入社。原料輸入、営業、秘書を経て、2001年宣伝事業部へ。清涼飲料、酒類の宣伝企画に長く携わり、2014年食品宣伝部長。2015年から現職。

【動画】サントリー食品インターナショナル宣伝部長の三好健二さんと十束おとはさんの対談動画。テキストでは掲載しきれなかったことについても話しています。

「ウォーターブレイク」で支援

十束:なぜeスポーツの支援を始めたのでしょうか。きっかけを教えてください。

三好:清涼飲料でお客様の心を潤したいと考えている弊社には、未来ある若者から支持してもらう、という目標があります。その実現のためにeスポーツへの支援が有効だと考えました。そこで2018年の「日本eスポーツ連合(JeSU)」の発足時に協賛と、JeSUが選出する日本代表への支援を決めました。

十束:実際にどんな形でeスポーツの支援をしているのでしょうか。

三好:まず、JeSUの協賛では、試合と試合の合間に水分補給をする「ウォーターブレイク」を設け、弊社の「サントリー天然水」を飲むことを推奨するなど飲料提供を行っています。また、日本代表選手に対しては1年間、飲料支援を行っています。

次に、ウェルプレイドリーグへの協賛。コロナの影響によりリアルで開催される試合は減っていますが、引き続き継続して支援をしていきたいと思っています。

そしてSengoku Gamingへの協賛。飲料提供などを通して、チームを支援しています。このチームは、韓国の有力選手やコーチを入れるなど、戦力強化を熱心にやっています。

十束:日本におけるeスポーツの市場は拡大する傾向にあるといわれていますが、韓国、ヨーロッパと比べると、まだまだ盛り上がりの余地はあるかな、と私自身は思っています。現在、ステージ的にどの程度に盛り上がってきているのでしょうか。

三好:まだまだ、黎明(れいめい)期じゃないでしょうか。様々なチーム、リーグ、大会を主催する団体が複数にわたって存在している「群雄割拠」ともいえる状況です。大会で勝った選手の賞金も、それほど大きな額になっていません。

対して、米国や韓国の優勝賞金を見ると、eスポーツだけで生計を立てている選手がたくさんいて、日本はまだまだ成長の余地があると思っています。そのような状況のなか、高校の部活動でeスポーツ部が創設され始めている状況と聞いています。これから高校総体のような場で競技として認められ、日本一を決める大会が行われるようになり、日本代表選手が世界に行って、世界大会で活躍する。そんな機会がもっと増えれば、米国、韓国に追いつけるのではないでしょうか。

十束:2018年に比べると、リーグ自体は盛り上がってきていると感じます。

「やってみなはれではなく、やって当然」 サントリーがeスポーツ支援にこめた思い

三好:黎明期のなかでも少しずつ広がっていると感じます。コロナの影響でリアルの大会の開催は難しいですが、もともとオンラインで戦えるというのがeスポーツの強み。逆にそれで成長が速まったといえるのかもしれません。

十束:現在のeスポーツの担い手は10~20代を中心に広がっていると感じます。今後は、幅広い世代に広がっていくとお考えですか。

三好:急に30~40代に広がるわけではなく、今の10~20代が年齢を重ねて、20~30代が増えるという形で広がっていくと考えています。そして今後は若年層のエントリーが増えていく、いま活躍している10代、20代の選手たちの子どもを、世界で活躍する選手として育てるようになってくるのではないでしょうか。

十束:eスポーツは、10~20代の若年層にアクセスしやすいというお考えですか。

三好:まさに、10代、20代の方にリーチするものだと考えています。デジタルネイティブ世代の心をつかむには、10代、20代が高い関心を持っているeスポーツ支援に参入し、弊社の製品を知ってもらい、試してもらうというのがリーチする近道だと思っています。

挑戦心の気風とeスポーツ

十束:サントリーに伝わる「やってみなはれ」という言葉は、eスポーツのような新しい分野に挑戦する若者を支援する精神に重なり合いますか。

三好:清涼飲料の宣伝広告に身を置くものとしては、10~20代にリーチするというのはとても重要ですが、eスポーツが将来メジャーなスポーツになるのはほぼ見えています。失敗を恐れずにやるというほどでもない。リスクはローリスクです。「やってみなはれ」というよりも、やって当然だと思っています。

一方で、日本でまだ認められているとはいえないeスポーツを誰もが認めるスポーツにしようとして努力している選手や関係者に対しては、その挑戦心に対して熱いメッセージを送り、時間を共有したいという思いがあります。やってみなはれ、を幅広く挑戦心ととらえるのであれば、重なり合う部分はあると思います。

2014年~17年に放映したペプシの「桃太郎」のCMのキャッチコピーは、「フォーエバーチャレンジ」でした。強い競合グローバルブランドへの挑戦です。やってみなはれの精神を挑戦心といいかえるのであれば、ペプシのようなブランドが体現しているといえると思います。お酒でいうと、大手のビール会社に挑む、サントリービールの「ザ・プレミアム・モルツ」。そして清涼飲料ではペプシと、サントリー天然水がそれに当たると思います。

サントリー天然水のライバルは「水は無料という常識」でした。発売されたのは1991年。それが今や売れに売れて、「水は買うものだ」という飲料文化が定着しました。挑戦心の結果として清涼飲料市場でナンバーワンブランドになれたと思います。

十束:コロナによる巣ごもりをきっかけにeスポーツは拡大していくとお考えですか。

三好:大きく捉えるとイエスだと思います。コロナによって巣ごもりが習慣化していきました。プレーをする人も、観戦している人も、家で気軽にできる。それがeスポーツの成長を速めていると思っています。

十束:コロナの影響がなくてもゲームを会場に見に行くことの難しさ、ハードルの高さがあります。どうしたらゲーム会場に足を運んでもらえるのでしょうか。

三好:eスポーツの有名選手の活躍を見たい、この目で見たいというところまでいかないといけない。そのためには、ヒーロー選手がでてこないといけないと思います。その人が実際にゲームをしている姿を見たいという人が出てくる。それを待つしかないと思います。

集中力を維持するために大切な「水」

十束:若者たちはなぜ、eスポーツに熱中するとお考えですか。

三好:そこにゲームがあるから、だと思います。

十束:この質問をしていて、私もそこにゲームがあるから、と思いました。

三好:なぜ、山に登るのかというのと同じじゃないでしょうか。自然と目の前にあって、スポーツとして認められることは、お子さんにとっても若年層にとっても、素晴らしいこと。自然とやってしまうと思います。

十束:ゲームの大会に足を運ばれた際、どのような思いを抱かれましたか。

三好:みなさん、真剣に戦っていらっしゃり、ストイックだなあという印象を受けました。試合の合間の「ウォーターブレイク」を推奨していると申しあげましたが、そこで飲んでいるのは、エナジードリンクや炭酸飲料ではなくて、水を飲んでいる人が多いことに気づきました。弊社でいうところの「サントリー天然水」を飲んでいる人が多い。

コロナ禍前の2019年12月に日本代表選手が出場する世界大会がソウルで行われ、私も日本代表選手の応援をしてきました。各国代表選手それぞれが自国の旗を背負って誇りをもって戦う光景は、一般のスポーツと全く変わりません。力の限りをつくしている様子を間近で見ると、手に汗を握るし、胸に熱いものがこみ上げてきます。

そして、観戦しているとのどがかわくんですよ。フィジカルにもかわくし、心もかわいてくる。そんなときにサントリーはお役に立てると思いました。

十束:確かに試合を応援しているときに、すごく水を飲みます。集中しているというのもあると思うんですが、のどがかわくんです。

三好:選手にとっては水が一番いいのかもしれません。ただ、観戦している人は浸透圧が低い「グリーン ダ・カ・ラ」や「やさしい麦茶」も結構あうのではないかと思います。

十束:ゲームをやるときは水分補給を忘れがちになり、集中し過ぎて一度脱水症状になったことがあります。それ以来、気をつけてお水を飲み、見るときも必ず500ミリリットルのお水を手元に置いています。

三好:見るときも水を飲むというのは、理由があるのでしょうか。

十束:味がすると集中しにくいと感じます。リーグ・オブ・レジェンド(※5人1組で仲間と協力して相手の本拠地を崩すゲーム)というゲームがとても好きなんですけれども、10人分の選手の動きを集中して見たいときはジュースではなくて、お水を飲みます。普段アイドル活動をしていて、ダンスの練習のときにグリーン ダ・カ・ラを飲んでいます。

ところで、他のサッカーや野球などの既存のスポーツと共通するeスポーツの魅力とは、逆に全く違うところはどんな点でしょうか。

三好:共通点はあるけれど、違う点はないと思っています。それぞれのチームで鍛錬して、大会に出る選手を選抜する。試合ではベストを尽くして、チーム戦のときは、喜びも悲しみもわかちあう。そういうところはどのスポーツとも変わらない。部活動でeスポーツに取り組むとなると体力だけではなく、人間力を養うことにもなると思います。

部活であればテクニックやスキルの差によって試合に出られる人、出られない人が出てくる。スキルがそこまでいかない選手は、強い選手たちを支えながら、自らの目標を持って成長を積み重ねていく。強い選手は弱い人への思いやりを持つ。そんな意味で人間力が向上すると思います。

若者の心に刺さる燦鳥ノム

eスポーツ支援などで活躍しているのが、サントリーの公式キャラクターである燦鳥(さんとり)ノム。歌ったり、踊ったりが得意なサントリー公式バーチャルYouTuberだ。

十束:私自身以前からノムちゃんの動画を見ており、まわりの友達もノムちゃんの存在を知っています。そういった意味で10代、20代にとても刺さっているなと思いました。

三好:ノムちゃんはがんばっています。サントリーの創業年に生まれた122歳なので結構、年はいっています。

十束:ノムちゃんの存在はeスポーツと関係なく大人気でしたが、さらに、「eスポーツアンバサダー」に就任したりと、いろんな方に愛されているキャラクターだなと思っています。そもそもなぜ、ノムちゃんが生まれたのでしょうか。

三好:SNSや動画メディアの普及にともなって、お客様も興味、関心、接点が非常に多様化してきています。これまでお客様との絆構築の手段として、SNSの企業公式アカウントの運用に取り組んできました。そのなかで新たな手法としてキャラクターを主体としたコミュニケーションを行うことで、お客様にサントリーや製品をより身近に感じていただけるのではないかと考えて開発しました。

十束:ノムちゃんは歌手デビューなど幅広い活動をしていますが、当初と比べてどんな広がりが出てきましたか。

三好:歌うだけでなくて、「eスポーツアンバサダー」になってからは、熱心にゲームをやってくれています。ライブや、ほかのVチューバーさんとのコラボも。またサントリーの工場見学にも参加するなど、ノムちゃんを通してサントリーや製品の情報を伝える役割を果たしてくれています。

十束:ノムちゃんが自分のやりたいことを日々楽しみながらやっている感じがとても好きです。ノムちゃんの楽しんでいる様子が私たちVチューバー好きの層に刺さっている感じがするので、ノムちゃんにぜひ、そのままでいてください、とお伝えください。

三好:年齢は122歳ですけど、齢を重ねてもそのままでいてほしいですね。

十束:ノムちゃんの今後の展望についてお聞かせください。

三好:ノムちゃんはどんどん人気があがってきているので、そのキャラクターを生かして情報発信を続けてもらいたいと思っています。また昨年から新たにバーチャル社員、山鳥水生(やまとりみずき)くんが、インスタに登場しています。

水生くんも社員の立場で様々なことをやっていくので、ノムちゃんとふたりでお客様に寄り添い続けて、絆をこれまで以上に深めていきたいと考えています。

十束:実は2018年にJeSUにサントリーさんが入ると聞いたときに少し驚き、どういう意図で参入し活動されるのか興味がありました。実際にウェルプレイドリーグを楽しく見ていて、ゲーム業界を盛り上げてくださったという感謝の気持ちがあります。小さいころから好きな飲み物を販売している企業というイメージだけではなく、私のなかではeスポーツにアツい企業。お金だけでなくて、熱を持って盛り上げてくださる企業という気合を感じます。

三好:なぜJeSUへの協賛が意外だと感じられたのでしょうか。

十束:当時は、eスポーツと飲料があまり結びつかず、そのような感想をいだきました。ですが今回お話をさせていただき、意外性は消えました。確かに私はゲーム中にいつも水を飲んでいるし、ウォーターブレイクもしています。ノムちゃんも私の生活の一部です。

三好:ありがとうございます。十束さん、アイドル活動もがんばってください。

十束:ありがとうございます。ノムちゃんによろしくお伝えください。

(取材・構成:古屋聡一、写真・動画:林紗記、動画:佐瀬醇)

REACTION

LIKE
COMMENT
0

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら