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一眼気分
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【最終回】これまでの写真と生き方を振り返り、「今年の桜、東京の夜桜を撮りたい!」

新型コロナウイルスが騒がれ出して1年以上が経過した。世界的にはワクチン投与が始まり、過去の疫病のようにパンデミック状態は収まるかもしれない。だが、緊急事態宣言が解除になったからと浮かれるのは早すぎるだろう。筆者は「気を緩めるのはまだ早い」と思っているので、相変わらずの自粛生活を維持している。

移動の制限は写真家にとって手枷(かせ)足枷のようなものだ。新たに写真を撮り歩くこともままならず、日々悶々(もんもん)とした時間を送ってきた。それならばこんな時間を利用して過去のデータの整理や見直しをしようと思いたち、年初からハードディスクやDVDなどを見返して、まるでサルベージ作業のようなことを続けている(笑)。もともと過去を懐かしんだり、振り返ったりすることはあまり好きではないのだが、この作業によって思わぬ気づきや発見があるのも事実だ。

得意なジャンル、苦手なジャンル。好きなアングルやライティングなど、自ら気がついていない傾向を知る。中には、こんなシーンを撮っていたか? そう思うような、本人が全く忘れているようなカットもあったりする。

【最終回】これまでの写真と生き方を振り返り、「今年の桜、東京の夜桜を撮りたい!」

そんな作業をしていると、ふと思うことがある。

20代、自分の趣味だったオーディオや車を処分し、作ったお金で追いかけたF1やオートバイの世界GP。6カ月間、車の中で寝泊まりしてパンとチーズを主食に暮らしていた。

30代、フランスに住み、取材で走り回ったヨーロッパ大陸や北米、南米。1年の半分以上を日本以外で過ごし、世界中をどれだけ旅してきたか。車を壊されたり、パリで警官に拘束されそうになったり、機材全てを盗まれたこともあった。今となっては笑えるような話もあるが、当時は必死だった。

でもそれらの出来事はつらいことではなく、どちらかといえば僕はその時間を楽しんでいた。日本にいてはできない数多くの体験、それらは確実に僕の財産になっていると、今改めて感じる。

【最終回】これまでの写真と生き方を振り返り、「今年の桜、東京の夜桜を撮りたい!」

こんな経験をしてくると、日本での暮らしは便利だし、世界のどの国よりもはるかに安全だと感じる。だが、暮らし続けていると不満を感じる場面も多く、窮屈に思うこともある。

そんな時、自分自身のメンタリティーや発想が日本的ではないのかな、と思うこともあるが、その是非は別にして、20代後半から世界で生きていく過程で身についた発想や習慣はそう簡単には変えられないし、今の僕はあえて変えようとも思わない。開き直るつもりはないが、人生の多感な青年期、多くの時間を日本から離れて海外で過ごしていたのだから、自分自身がスタンダードだと思うしかないだろう。

【最終回】これまでの写真と生き方を振り返り、「今年の桜、東京の夜桜を撮りたい!」

写真を通して世界中の人たちと交流を続けてきて、自分の世界観を全く異なる文化や慣習の人たちが認めてくれる。これは写真家冥利(みょうり)に尽きることだ。だが、僕はここでとどまるつもりはなく、まだ自分自身が進化できると信じて疑わない。

この先、何ができるか? 後ろ向きになるのではく、前進するために力を貯(た)める。どうせならそんな時間の過ごし方がいいと思う。そして僕の場合は、今まで撮ってきた膨大な写真の中にそのヒントがあるような気がしている。

【最終回】これまでの写真と生き方を振り返り、「今年の桜、東京の夜桜を撮りたい!」

新しい発見のために今日もサルベージ作業を続け、過去の桜の写真を見ていると「今年の桜を撮りたい!」そんな思いが強く湧いてきた。

しかし、緊急事態宣言が解除されたとはいえ、コロナ対策を考えると日中の人混みは避けたい。そこで、人の少なそうな時間帯を選び、あえて東京の夜桜を撮り歩くことにした。

桜を撮るにはやはり昼間の青空が似合うと思うし、桜の淡さや微妙な色合いは夜の撮影では望めないのだが、それでも東京と日本を代表する花である桜のコラボレーションは面白かった。来年は桜をちゃんと撮りたい。だからこそ今が我慢の時だろう。

【最終回】これまでの写真と生き方を振り返り、「今年の桜、東京の夜桜を撮りたい!」

>>フォトギャラリーで【もっと写真を見る】

   ◇

読者の皆様へ
「一眼気分」は今回で連載を終了します。3年間お付き合いくださり、ありがとうございました。残念ながら最後の1年は新型コロナの影響で思うような活動ができず、自分自身満足のいく終わり方ではありませんでした。その思いを胸に、またいつかどこかでお会いできる日を楽しみにしています。

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