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キネマの誘惑
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若葉竜也「人間のにおいがするものに心が動くし、共感する」 映画『街の上で』

簡単に泣く、映画の登場人物に違和感「人間のにおいがするものに心が動く」

『愛がなんだ』、今年2月に公開された『あの頃。』、そして本作『街の上で』。今泉力哉監督の作品を通じて、若葉さんの存在を知った人も少なくはないはず。若葉さんにとって、監督はどんな存在だろうか。

「例えば『愛がなんだ』でナカハラが演じたコンビニ前のシーンでいえば、ストレートにやるとボロボロ号泣しながらっていうアプローチができたと思うんです。でも、それを昔からやりたくなくて。もうちょっと人間の深い部分を見せたい。いききっちゃったり、涙を流したりは簡単なんです。人前で泣ける人って、僕には強く見えるんですよね。人前で簡単に怒れる人も同じで強く見える。弱い人って、人前じゃ必死に涙をこらえるし、怒りたくても怒り方が分からないという人が大半なんですよね。

でも映画の登場人物は、簡単に泣いたり、怒って叫んだり、人と触れ合ったりしていて。僕は映画館でそれを見れば見るほど、冷めていってたタイプでした。10代の時からずっと、そんな直線的ではないことをやりたいと思っていたんですけど、『もっと分かりやすく』と演出が入ったこともあって。分かるんです、ストレートにやった方が分かりやすいし、監督が言うんだったらそれが正しいとも思う。でも、僕自身はずっと違和感がありました。そこを今泉さんは『そうだよね、そんな簡単に人って泣けないよね』と、すくい取ってくれて。

『愛がなんだ』がたくさんの人に受け入れてもらえたこと、心が動いたと言ってもらえたことが、僕自身にとって大きかったし、すごくうれしかったんです。人間のにおいがするものの方が心が動くし、共感する。それを理解してくれた人なので、大きな出会いだったと思っています。今泉さんはどう思っているか分からないけれど、僕にとってこの『街の上で』は、集大成のような映画です」

(C)「街の上で」フィルムパートナーズ
(C)「街の上で」フィルムパートナーズ

「ダメな仕事をしたら仕事がなくなる」俳優としての覚悟

柔らかい物腰と優しいしゃべり口。それに反して強く感じるのが、俳優としての揺るぎない覚悟だ。

「僕は、俳優を部活みたいにやっていなくて、趣味とか、ただ好きだからやっているという意識は全くありません。それ以上のところでやっていたいんです。そうしないと飯が食えなくなって死んじゃうから(笑)。ダメな仕事したら、仕事がなくなる意識は常にあります。切実ですよ。例えば現場で、あまり何も言わないですけど、監督に何かを言ったり、例えばそれで喧嘩(けんか)になったりする時には、『この人の作品にもう呼ばれない』と思って言っています。『この前はこんなこと言ったけど、また仲良く一緒にやろうよ』っていう感覚は全くなくて。言うからには、二度と出られない、嫌われてもいいやと思って言っています。それぐらいの思いをもって監督に訴える時はありますね」

ヘアメイク・FUJIU JIMI/スタイリング・小宮山芽以/カットソー・フィルメランジェ/ニットカーディガン・古着屋 深緑/パンツ・BASE MARK
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現在31歳の若葉さん。話題作への出演も増え、30代を迎えた今、どんな心境で俳優という仕事に向かっているのか。

「抱負とか、こんな俳優になりたいというのもないし、俳優としてトップランナーになりたいという意識も全くないです。今まで通り、ちゃんとご飯を食べられるように仕事ができたらいいなと、そこが一番のテーマでもあります。ただ、コロナで世界中がこんな状況になり、エンタメや娯楽映画、それらを含めた芸術のあり方が様変わりしているなと感じています。映画が淘汰(とうた)されても困らない人がいて、もっときつい状況にある人がいると思います。だからこそ、映画が余裕を作るための娯楽になっていかなくてはいけない。『毎日きついな』とか、日常が嫌になった人が逃げ込める、最後の場所になってほしいという意識はあります。これは上から目線ではなくて、僕の切実な思いです。今一度立ち返って、娯楽のあり方について、日本の俳優、これから俳優を目指す人も含めて、考えなくてはいけないと思っています」

(文・武田由紀子/写真・和田咲子/動画・高橋敦)

『街の上で』

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