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上間常正 @モード
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ファストファッションの新たな展開、H&Mのブランド「COS」に注目

競泳女子の池江璃花子選手が日本選手権の100メートルバタフライ決勝を制して東京五輪代表に内定し、続いて100メートル自由形でも五輪代表入りしたのは、久しぶりの明るいニュースだった。新型コロナウイルスの第4波ともされる感染拡大への対策として、まん延防止措置が大阪や兵庫などの計6市で5日から適用された。出口の見えない自粛要請に、多くの人々の不安も広がっている。池江さんは2019年2月に白血病と診断され、およそ10カ月の入院生活で治療のため髪が抜け落ち、何度も嘔吐(おうと)するような苦しみを経て競技に復活した。

そんな苦しみから抜け出せたのは、病気には負けたくない、努力は必ず報われる、と信じて立ち向かったからだろう。それと比べると、新型コロナへの対応は、現場での医療関係者の努力は別として、コロナへの私たちの向き合い方には、多くの場合、安易な思い込みや消極的な逃げの姿勢があるのではないか。ひたすら家に閉じこもったり、安全性がまだ十分には確かめられていないワクチンの接種を待ち望んだりすることで、新型コロナを克服できるのだろうか?

新型コロナのパンデミックは、地球環境の資源からすると、大量生産・大量消費の現代産業社会が限界に来ていることを露呈してしまったといわれている。すでに多くの産業分野が深刻な経営不振に陥っているが、シーズンごとに新トレンドを打ち出して消費をあおってきたファッションはその代表的分野で、老舗のトップブランド企業からセレクトショップ(専門店)系のブランドからアパレル系の中間のブランド、量販系やストリート系のブランドまでが、自滅を前になんとか活路を見いだす必要に迫られている。

ファッションは元々、時代の変化を最も敏感に示してきた。大量生産・消費への不安は、コロナのまん延より前から始まっていたからだ。そして、まん延による人々の生活意識の変化は、今回のコロナ禍が何らかの形で収まったとしても、もう決して元には戻らないほどの歴史を画す大きな変化に違いない。

サステイナビリティーを重視した服

英国のロンドンを拠点とするブランド「COS(コス)」は、そうした状況に対する試みの例の一つといえるだろう。COSはCollection of Style(コレクション・オブ・スタイル)の頭文字をつないだ名称で、2007年に設立。顧客層は都会的なライフスタイルでアートや環境への関心が高い男女だという。都会的というのは、必ずしも都会に住んでいる必要はないとのこと。サステイナビリティー(持続可能性)を重視し、一過性のトレンドではなく、ワードローブに長く置いて他のブランドなどと組み合わせて着られるような、ベーシックでシンプルな形になっている。

ファストファッションの新たな展開、H&Mのブランド「COS」に注目

COS 2021年春夏コレクション

服の素材には遺伝子組み換えでない自然素材や、独自のリサイクル合成繊維を使い、サステイナビリティーに関する独自の目標を設定している。今年はその86%を達成したというが、あくまで100%を目指すそうだ。そしてビジネスとしての倫理基準とその達成度を公表して、常に点検できるようにする。また、製品を作る地域(現在は主に東ヨーロッパ各国)の人々やコミュニティーへの関わりを企業が果たすべき社会的責任として重視している。

日本への進出は、2014年11月に東京・青山、16年に横浜、17年に東京・銀座のマロニエ通りに直轄店をオープン。それに加えてオンライン販売のための仮想店舗がある。新作はプレスリリースで公開している。

ファストファッションの新たな展開、H&Mのブランド「COS」に注目

COS 2021年春夏コレクション

最新作の2021年春夏コレクションは、撮影に新進気鋭の写真家カリム・サドリを起用。モデルは、モデルの公平な扱いを強く主張しているイギリス人のエディ・キャンベルや、映画作家・ライター・編集者としても活躍しているアメリカ人モデル、アデスワ・アイゲウィらがキャンペーンビジュアルに参加している。

これらのビジュアルは、アラブ首長国連邦の首長国シャルジャの海と砂漠が美しい沿岸の秘島で撮影。すっきりしたラインと軽やかな素材の服と、荒涼としているが強い生命力の息吹も感じさせる風景との対比がとても効果的で、写真家サドリが込めた深いメッセージが感じ取れる。

ファストファッションの新たな展開、H&Mのブランド「COS」に注目

COS 2021年春夏コレクション

COSのデザイン・ディレクター、カリン・グスタフソンはウェブメディアの取材に対し、「今シーズンは、世界的に未曾有(みぞう)の事態となったこの1年を経た私たちが、より良い未来に対する希望を胸に、暗闇の中に光を見いだしていくことをテーマにした」と述べている。そして「今回のコレクションでは定番アイテムに新鮮なエッセンスを少し加えることで付加価値を付けたり、あるいはワードローブの定番というものを再定義したりすることで、環境の変化について私たちがどのように対応しているかを表現してみた」と説明している。

実はCOSは、スウェーデンのストックホルム発のH&Mが新たに立ち上げたブランドだ。H&Mは、ユニクロやスペイン発のZARAと並ぶファストファッションの代表的ブランドとされている。その中でH&Mは、多数の専属デザイナーがトレンドをいち早く独自デザインでカジュアルに表現することで人気を得てきた。デザイン性のわりには驚くほど低価格なことで結果的に巨大な大量生産ブランドとなったが、COSの設立はそうした服作りが破たんするとの強い危機感を表したものと言えるだろう。

COSの平均的な価格は、ジャケット1万~2万円、ドレス8千~2万円、パンツ8千~2万円、コート1万5千~3万円で、メンズとレディースはほぼ同じ。本体のH&Mよりかなり高い。といってもやはり安めなため、ファッションの業界人でも隠れたファンも少なくなはない。しかしそれはあくまでも室内着、または自宅の周り用の日常着としてで、仕事着としては使えないという。だがコロナによる自粛生活の影響で、仕事着・外出着のあり方が急速に日常着に近くなっている。COSのような服を着てかまわない公式場面が、今後はもっと広がる可能性もある。

ファストファッションの新たな展開、H&Mのブランド「COS」に注目

COS 2021年春夏コレクション

H&Mの低価格志向は、権力に抗し、誰でも自由に政治に参加できる、というスウェーデンの民主主義に基づいていたことも事実だ。私がかつてストックホルムでH&Mへの取材をした時にも、スタッフやデザイナーらがスウェーデン式民主主義という言葉をよく口にしていたことを覚えている。コロナへの対応の中で、民主主義が危機に陥っているとの指摘もある。その意味でもCOSの今後の展開に注目したいと思う。

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