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シネマコンシェルの部屋
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街を歩いているとき、亡くなった親友を探してしまいます(コンシェルジュ:FROGMAN)

読者の皆さまから寄せられた相談やお悩みに、映画を愛する様々な分野の方々が寄り添い、最適の作品を紹介する隔週連載。

コンシェルジュは映画コメンテーター/タレントのLiLiCoさん、CGクリエーター/映画監督のFROGMANさん、Base Ball Bear・小出祐介さんの3人です。今回のコンシェルジュはFROGMANさんです。

<01> 疎遠になってしまった友人とあの頃のような関係に戻るには<01> 疎遠になってしまった友人とあの頃のような関係に戻るには

#02 中年になっても終わらぬ自分探しの「旅」(コンシェルジュ:FROGMAN)

FROGMAN

映像クリエイター、声優、監督。長年、実写映画・ドラマの世界に身を置く。2006年DLE入社。07年9月より取締役就任(現任)。06年に「秘密結社 鷹の爪」を地上波で発表した後、07年には劇場公開。その後、テレビ・映画シリーズを次々と公開。その他「古墳ギャルのコフィー」や「土管くん」などオリジナルIPを多数創出。独自の世界観とプロデュース手法が人気を呼び、「島耕作」シリーズ、「天才バカボン」等の有名原作のパロディー化によるリプロデュースにも従事。08年度ニューヨーク国際インディペンデント映画祭にて、「アニメーション部門 最優秀作品賞」「国際アニメーション最優秀監督賞」をダブル受賞。12年4月、しまねコンテンツ産業振興アドバイザー(しまねだんだん★メディアアドバイザー)就任。13年11月、松江市観光大使就任。

◇◆◇

〈相談者プロフィール〉
青春ゾンビ(仮名)女性 29歳
埼玉県在住

先日高校生のころからの付き合いの友人を亡くしました。死因はご遺族の方も話されていなかったのでわかりません。

彼とは20代前半ごろまでとても親しくしていて、お互いの悩みや将来の夢について夜遅くまで語り合う、同志のような存在でした。最近では疎遠になっていたのですが、亡くなったという知らせを聞いて徐々に忘れかけていた彼との思い出がよみがえり、今は昔に戻ったかのように彼の存在を近くに感じています。

お互い違う道に進んだという意識もあり、連絡をとらなくても相手は元気に過ごしているだろうと思っていたので、普段から人との付き合いを避けがちだった自分を今では後悔しています。

私の悩みは、街で歩いている時などふとした瞬間に彼のことを探してしまうということです。もしかしたら亡くなったのは現実じゃなくて、どこかで元気に過ごしているのではないかと、式に参列して事実を確認してもなおそう思ってしまいます。

彼の生きた証(あかし)でもある現実を受け入れず、こんな風に、ずっと彼の存在を探し続けてもいいのでしょうか。正直とても寂しい気持ちでいっぱいで、自分でもどうしていいかわかりません。何かいいアイデアや作品があれば教えていただきたいです。

死者は、残された人たちが幸せで楽しい人生を送ることを願っている

今回は、いや今回もなかなか重いご相談で、私なんかがお答えしていいものか戸惑います。私自身も両親ともに数年前に亡くし、愛犬も1年前に亡くしたので、親しい誰かを“亡くす”という心の痛みはわかります。

ベタに『ゴースト』をご紹介してもいいのかなと思いつつ、希代のへそ曲がりの私はここで、スピルバーグ監督の数少ない駄作と呼ばれた『オールウェイズ』(1989)をお勧めします。

いや、駄作じゃないですから。

物語の主人公は、森林火災消火隊のパイロット、ピート(リチャード・ドレイファス)と、恋人で管制官のドリンダ(ホリー・ハンター)。

腕はいいけど命知らずのピートは、出動の度に周囲をハラハラさせ、殊に恋人のドリンダは生きた心地がしない。いつか事故で命を落とすんじゃないかとピートに度々、訓練学校の講師になるよう勧めます。ピートもドリンダの願いに折れ、ついに引退して講師になると宣言しますが、そこで再び山火事で出動。その際に事故で亡くなってしまいます。

天国に行ったピートは、そこで天使(オードリー・ヘプバーン)と出会い、若いパイロットのテッドの守護霊になることを依頼されて地上に戻りました。テッドは自分が抜けた後釜のパイロットとなる男で、ピートは成長を見守っていきます。しかしテッドはピートの恋人、ドリンダにほれてしまうというラブコメ展開に。そしてドリンダも、ハンサムな上にタフで優しいテッドに、少しずつ惹(ひ)かれていくのでした。心穏やかじゃないのはピート。幽霊になってしまった彼にはどうすることも出来ません。嫉妬の炎に身を焦がして狂わんばかり。

そんな中、消防隊員が山火事の中で孤立したとの連絡が。

テッドはすぐさま出動の準備に取り掛かりますが、ドリンダはテッドが乗るべき飛行機に飛び乗ると、無謀にも自分が消火活動に飛び立ちます。ほとんど自殺行為と思える行動に、ピートはドリンダに霊感を与え続け、見事、消防隊員の救出に成功。しかしドリンダの飛行機は消火活動の中で故障してしまい、川に不時着。沈みゆく飛行機の中でドリンダは、生きるべきか死ぬべきかに悩みます。ドリンダはピートへの思いが断ち切れず、この1年は次の一歩に踏み出せずにいました。そこでテッドのようなナイスガイが現れ、自分も好意を寄せていることを自覚している。そしてそれがピートへの裏切りのように思え、そして自分だけが幸せになっていいものかという罪悪感を覚えていたのでした。ピートはそんなドリンダの苦しい思いを察し、彼女に生きるよう導きます。

ピートのお陰で九死に一生を得たドリンダには、もはや迷いはありませんでした。

徒歩で飛行場に戻り、新しい人生に向かって歩み始める……といった内容です。

なんとなく『ゴースト』のパクリか?とお思いでしょうけど、実際はわずかにこの作品が先に公開され、さらにオードリー・ヘプバーンの遺作ともなった作品でしたが、なにせ『ゴースト』の方が世界的に大ヒットしたものですから、完全に陰に隠れてしまいました。

映画をご覧になればわかるように、愛するもの、親しきものを失った後、残された人々はいつまでも引きずります。人によっては日常生活に支障をきたすくらいにダメージを受けますね。

でもそれって普通のことじゃないですか?

現代は死と向き合う機会がめっきり減り、私たち自身が死をどう捉えたらいいのか分からなくなっているとよく言われますよね。

私が島根に移住して強烈に感じたのが、島根の人たちの死と生の垣根の低さというか、霊や神が、現世とひと続きの地平に存在するかのような感覚です。

古事記や日本書紀、出雲風土記といった千年以上前の書物に、今と変わらぬ山や川に囲まれた、今と同じ地名で暮らす人々の様子が描かれていると、千年という時間の隔たりを感じなくなるのではないでしょうか。(島根って神話時代の地名が今も当たり前に使われてるんですよ!)

死者が現世と関わりを持つのは不思議じゃないし、時々、そういう死者の面影を雑踏の中で見るのは、むしろ当たり前な感覚なんじゃないかと。

死者は常に身近にいて、その気になれば話しかけたり声を聞くことが出来る。だからこそ、死者を忘れず畏怖(いふ)の心を持ち、与えられた生を謳歌(おうか)して人生をまっとうする。

劇中でドリンダは、ピートとの思い出のドレスを身に着け、思い出の曲でダンスを一人踊ります。

これってお盆やお彼岸にごちそうをお供えし、もてなすセレモニーと変わりませんよね。そして生者は、こちらはみんな楽しく幸せにやってますと報告し、亡くなった人たちを安心させるのです。

死者は、残された人たちが幸せで楽しい人生を送ることを願っているものなんですよ。

FROGMANさん推薦作品

オールウェイズ

監督:スティーブン・スピルバーグ

     ◇◆◇

「シネマコンシェルの部屋」は今回で終わります。ご愛読ありがとうございました。

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