&Travel

楽園ビーチ探訪
連載をフォローする

奇岩「馬ロック」は南洋から運ばれた地球の奇跡 西伊豆・黄金崎

伊豆半島・西海岸のほぼ中央に位置する西伊豆・黄金崎(静岡県西伊豆町)。深い青をたたえた駿河湾と、日によっては海の向こうに望む富士山、そして赤褐色(せきかっしょく)の断崖が織りなす名勝として知られています。特に夕暮れ時は、断崖があかね色の光に照らされ、美しさも倍増。サンセットの名所になっています。(トップ写真:夕映えに染まる黄金崎の馬ロック。中央部は木々が馬のたてがみのようで、目をつぶって海中へ顔を向け、エサをはんでいるようにも見える。右後方に富士山 ©西伊豆町観光協会)

 

■連載「楽園ビーチ探訪」は、リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信するビーチライターの古関千恵子さんが訪れた、世界各地の美しいビーチや、海のある街や島を紹介いたします。

この岬一帯は黄金崎公園として整備され、夏になると海水浴客やダイバー、釣り師、クルーザー客、キャンパーなど、アウトドア好きが集まります。そして「伊豆半島ジオパーク」の一部でもあり、私はこれまでたびたび訪れてきました。

国道136号から脇道へ入り、この小さなトンネルを抜けると、アウトドア好きのパラダイス、黄金崎公園へ

国道136号から脇道へ入り、この小さなトンネルを抜けると、アウトドア好きのパラダイス、黄金崎公園へ

ジオパークは、地球の一大イベントのたまもの

黄金崎は絶景ばかりでなく、地質の特殊性も大きな魅力でしょう。草木が生えない断崖の岩肌、その独特な色。この断崖は、気の遠くなるような地球の一大イベントによって誕生しました。その壮大なストーリーを、伊豆半島ジオガイド協会の会長・仲田慶枝さんにうかがいました。

伊豆半島ジオガイド協会会長の仲田慶枝さん。わかりやすく、黄金崎の成り立ちについてお話しいただけました

伊豆半島ジオガイド協会会長の仲田慶枝さん。わかりやすく、黄金崎の成り立ちについてお話しいただけました

そもそも伊豆半島は、2000万年~1000万年前ははるか南洋の、海深くにあった海底火山群でした。それがプレートの動きに伴って移動、本州に近づくにつれて隆起、ついに100~60万年前、本州と衝突して合体したものです。

 黄金崎にある「こがねすと」の床には、急峻(きゅうしゅん)具合を赤から白のグラデーションで示す赤色立体地図が。険しい地形の伊豆半島南西部が、かつての海底火山群を示しています

黄金崎にある「こがねすと」の床には、急峻(きゅうしゅん)具合を赤から白のグラデーションで示す赤色立体地図が。険しい地形の伊豆半島南西部が、かつての海底火山群を示しています

かつて海底に堆積(たいせき)した火山灰などからなる、海底火山だった黄金崎。本州と海底火山群が衝突した前後に、黄金崎の周囲の陸上火山が次々に噴火したことで、地下は猛烈に熱を帯びた状態が長く続きました。やがて海底火山にしみ込んだ海水や雨水が、その高温と高圧によって地下深くで「熱水」となり、やがて上昇・循環を始めました。

この熱水には、高熱と高圧によって、海底火山の地層から溶け出した金属成分が含まれていました。それが地表に向かって上昇するにつれて温度や圧力が下がり、熱水の中の金属成分が結合を解いて沈殿し、結晶化(鉱床)。中に含まれていた金属成分(硫化鉄)が、空気に触れ、さびた色に変色したのが、黄金崎です。形成されてすぐは黄褐色、時を経て酸化が進んでいくと、赤みが増していくそうです。

海水浴やダイビング、釣りなど、緩やかにすみ分けがされています

海水浴やダイビング、釣りなど、緩やかにすみ分けがされています

黄金崎周辺は、もともとは火山灰なので、崩れやすいもろい地層。そのため風雨に浸食されやすく、黄金色の断崖に木々が生えたと思うと、地表が崩れることも。その上、酸化した土壌なので植物には向かない。だから、岩肌を露出した部分が多いそう。

浸食で変わる「馬の顔」 競馬ファン訪れ願掛けも

また、競馬ファンが幸運を願いに訪れるという、馬の頭のような形をした岬の「馬ロック」。こちらも崩れやすい地層でできているため、数年前まではロバのような丸みのある顔立ちだったのが、ある日突然、浸食が進み、鼻筋がスッと通った今の姿になりました。黄金崎の風景は日々変わっているそうです。

水面下にも、海のジオサイト。浸食が進みやすい地質ゆえ、海中から入れる洞窟があります。洞窟の奥にはエアドームが ©黄金崎ダイブセンター

水面下にも、海のジオサイト。浸食が進みやすい地質ゆえ、海中から入れる洞窟があります。洞窟の奥にはエアドームが ©黄金崎ダイブセンター

あの断崖の色は、もとの地層が海底火山であったことと、陸上火山の相次ぐ噴火、この二つの要因が重なって起きた「熱水変質」によるもの。この熱水変質は、土肥の金山や宇久須の珪石(けいせき=ガラスの素)も、生み出すことになりました。南洋からもたらされた、地球の奇跡です。

複合施設「ロクワット」オープン、面白くなる西伊豆

ところで、電車が通っていない西伊豆は、東伊豆に比べて観光地ならではの華やぎに欠けるイメージがありました。それがこの春、様子が変わってきたようです。

築100年以上を経た地元名士の建物を複合施設「ロクワット」に

築100年以上を経た地元名士の建物を複合施設「ロクワット」に

黄金崎近くの土肥に、注目の複合施設「ロクワット」が今年オープン。300年の歴史をもつ屋敷「旧鈴木二平邸」を丁寧に改装し、母屋をイタリアン・レストラン&ジェラテリアやベーカリーに、また、二つの蔵を2棟のヴィラとして、ゲストを迎え入れます。

西伊豆の食材を使ったフレーバーのジェラートも取りそろえている

西伊豆の食材を使ったフレーバーのジェラートも取りそろえている

2月に開業したイタリアン・レストランでは、北鎌倉の「タケル・クインディチ」が監修し、西伊豆の食材を生かしたメニューを考案。ジェラテリアも、井田(沼津市)の塩ミルクや修善寺(伊豆市)の卵を使った「カタラーナ」など、地元の食材をフィーチャー。西伊豆にはありそうでなかった、地元食材を前面に押し出したラインナップになっています。

蔵を改装した2棟のみのヴィラも、土肥(伊豆市)や西伊豆にまつわるこだわりがたっぷり。しかもデッキテラスには源泉かけ流しの露天風呂付きです。宿泊料にはアルコールを含む飲食やスパ・トリートメント(顔やボディーのケア)、ミニバーなどの料金が込み。お値打ちです。

のどかさは変わらないけれど、新しい風が吹く土肥。少しずつ日々、変容している黄金崎。西伊豆の動きから目が離せません。

【取材協力】
黄金崎ダイブセンターhttps://arari.co.jp/
西伊豆町観光協会 https://www.nishiizu-kankou.com/
ロクワット https://loquat-nishiizu.jp/#

>> 連載一覧へ

REACTION

LIKE
COMMENT
0
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル

    *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら