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あの街の素顔
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漫画「進撃の巨人」の聖地へ 作者・諫山創さんの故郷・大分県日田市

みなさんは「進撃の巨人」をご存じでしょうか。電子書籍を含む単行本の累計発行部数が全世界で1億部を超える大人気漫画のことです。この作品の作者、諌山創(いさやま・はじめ)さんの出身地が大分県日田市。掲載誌での連載は2021年4月に終わりましたが、これに先立つ3月にミュージアムがオープンし、人気キャラクターの像も設置されるなど、ファンの聖地が次々に生まれて盛り上がっています。日田市といえば、江戸時代に天領として栄え、古い町並みが残る街。店やカフェを拠点に日田の魅力を新たに発信しようとする人たちもいて、今、新しい風が吹いています。春の陽気にも誘われて、私は日田市を旅しました。
(文・写真、宮﨑健二)

訪れた人が「愛」を贈るオブジェ

JR日田駅にやって来ました。駅前にはモニュメントがありました。「H」「T」「A」……あれれ、「I」が抜けていますよ。

日田駅前のオブジェ。「I」の文字がありません
日田駅前のオブジェ。「I」の文字がありません

「日田には愛がないなあ」などと言ってはいけませんよ。この「I」が入るべき空間に人が立って「HITA」を完成させてもらおうという仕掛けなんです。訪れた人の「愛」が日田をつくる。粋ですねえ。

駅の近くにはこんな大木がありました。葉が青々と繁り、初夏の訪れを告げています。

青空をバックに大木の緑が鮮やかでした
青空をバックに大木の緑が鮮やかでした

風情ある「豆田町」で「日田まぶし」食べる

「進撃の巨人」の聖地に行く前に、駅の北側にある豆田町を歩いてみました。こんな風情のある建物が並んでいます。

豆田町の町並み。いろいろな店をのぞきながらのんびり散策できます
豆田町の町並み。いろいろな店をのぞきながらのんびり散策できます
「日田まぶし 千屋」。うなぎを焼くにおいが店の前にも漂っていました
「日田まぶし 千屋」。うなぎを焼くにおいが店の前にも漂っていました

注文したのは店の名物、「日田まぶし」です。

日田まぶし。写真後方が4種の薬味です。税込み3500円でした
日田まぶし。写真後方が4種の薬味です。税込み3500円でした

テーブルには「日田まぶしの食らひ方」という掟(おきて)が置いてありました。

「まづ、そのまま食らふべし」。はい! うなぎの身をつぶしてご飯にまぜ、口に運びました。うまっ!

「つぎに、薬味を加えて食らふべし」。用意されていたのは、わさび、ねぎ、柚子胡椒(ゆずこしょう)、大根おろしの4種。わさびでピリッ、ねぎでシャキッ、柚子胡椒でヒリッ、大根おろしでジュワッ。おお、すばらしい味変!

「さいごに、茶漬けにて食らふべし」。わさびとねぎを入れて、だし汁を注ぎます。そして、一気に口に流し込む。このうまさ、まるで味変の確率変動です! すっかり満腹になりました。

「生活用品がそろう街」実感 ライフデザインショップ「Areas」

狭い通りに入って、ライフデザインショップ「Areas(エリアス)」を訪ねました。日田杉を使った木工品や地元の小鹿田焼(おんたやき)の器など、職人さんが作った魅力的なオリジナル商品を販売しています。

Areasの店内。木工品や焼き物が並ぶ、落ち着いた空間です
Areasの店内。木工品や焼き物が並ぶ、落ち着いた空間です

店主の仙崎雅彦さん(44)は「日田にはさまざまな分野の職人さんがいて、生活用品がすべてそろう街なんです。家具の生産地でもあるんですよ」と教えてくれました。

仙崎さんは店の向かいの民家を買い取って改装し、3月にレンタルスペース「まめやど」としてオープンしました。もともとは明治時代に建てられた蔵だったそうで、中に入ると、古い民家特有の木の空間が広がっています。そこに仙崎さんは現代の洗練されたデザインの内装を加えました。「日田のものづくりのすばらしさを体感できる場所にしたい」と仙崎さんは意気込んでいます。

「まめやど」にはこんな大きな木のテーブルが。さまざまな交流の場になりそうです
「まめやど」にはこんな大きな木のテーブルが。さまざまな交流の場になりそうです

「進撃の巨人」聖地 大山ダム

さあ、お待たせいたしました。いよいよ聖地巡礼です。まず、豆田町から車で20分ほどの奥日田という地域にある日田市大山町に向かいました。着いたのは大山ダムです。

大山ダム。ここに聖地があるのです
大山ダム。ここに聖地があるのです

大きい声では言えませんが、小さい声では聞こえないので、中くらいの声で話しますが、実は私は最近まで「進撃の巨人」を知りませんでした。「進撃の巨人」と聞いた時、「日本シリーズで2年連続4連敗しているのに『進撃』? そもそも自分はパシフィックリーグ派なので、読売球団のことはまったく知らないんだよなあ」と思ったものです。諌山さんと愛読者の皆さん、自分の無知に恥じ入るばかりです。深く反省して日田市にやってまいりました。

坂道を歩き、大山ダムに近づきました。すると、作品に出てくるエレン、ミカサ、アルミンの少年期の像が。

アルミン、エレン、ミカサの像。漫画から飛び出してきたかのようです
アルミン、エレン、ミカサの像。漫画から飛び出してきたかのようです

3人ともカッと目を見開いています。物語の序盤で、出現した巨人を3人が見上げて驚いているシーンを再現しているのです。像を後ろから見ると、このシーンがよりわかりやすくなります。

3人の像と大山ダム。もし巨人が出現したら……と想像力がはたらきます
3人の像と大山ダム。もし巨人が出現したら……と想像力がはたらきます

「進撃の巨人」は、人類が住む地域に突然侵入してきた巨人に対して、エレンらが力を合わせて人類の危機を救うために戦う物語です。作品に出てくるシーンには、諌山さんの故郷である日田市の風景が反映されている、ともいわれます。このダムも諫山さんの原風景の一つで、像はクラウドファンディングによって集まった資金で建立され、2020年11月に披露されました。ダムに向かってARアプリ、つまり拡張現実(現実に仮想を融合させる)アプリを入れたスマートフォンをかざすと、画面の中に巨人が姿を現すようになっています。

平日の午後でしたが、愛読者と思われる人たちが次々にやって来て、写真を撮ったり、スマホをかざしたりしていました。

移動式「野良CAFE」で一息

見学を終えて、ダムの駐車場に行くと、キッチンカーが止まっていました。「野良CAFE」という移動式カフェです。

キッチンカーの野良CAFE。常連さんもいるそうです
キッチンカーの野良CAFE。常連さんもいるそうです

営業しているのは草野亜李砂さん(32)。福岡県から日田市に移住して「地域おこし協力隊」のメンバーとして活動した後、野良CAFEを2020年6月から始めました。草野さんはこのカフェのかたわら、2021年4月までの任期で「水郷ひたキャンペーンレディ」も務めています。

さっそく税込み500円のアイスコーヒーを注文しました。コクがあっておいしい! ダムまでの往復で渇いたのどを潤すことができました。

草野亜李砂さん。夫は猟師で、シカ、イノシシなどの肉の加工所を運営。狩猟免許を持つ草野さんも手伝っているそうです
草野亜李砂さん。夫は猟師で、シカ、イノシシなどの肉の加工所を運営。狩猟免許を持つ草野さんも手伝っているそうです

野良CAFEのコーヒーは自家焙煎。ミルクは地元の牧場から取り寄せた絞りたてのものを使っています。草野さんはカフェについて「奥日田の良さを伝えられる場所にしたいですね」と話していました。野良CAFEの営業場所は大山ダムだけではありません。営業場所のスケジュールはインスタグラムで告知しているそうです。

道の駅に「進撃の巨人 in HITA ミュージアム」

「進撃の巨人」の聖地巡礼に戻りましょう。同じ大山町にある「道の駅 水辺の郷おおやま」に移動しました。ここに2021年3月にオープンしたのが「進撃の巨人 in HITA ミュージアム」です。中に入ると、いきなり巨人が。

巨人のオブジェ。襲いかかってきそうですね
巨人のオブジェ。襲いかかってきそうですね

ここには作品の名場面や、諌山さんの歩みを示す品々が多数展示されています。

名場面の数々がパネルで展示されています
名場面の数々がパネルで展示されています

掲載誌と単行本が収められた本棚もありましたよ。

掲載誌と単行本を収めた本棚
掲載誌と単行本を収めた本棚

私はふだんからトヨタのCMに出てくるトヨタイムズ編集長の香川照之を一方的にライバル視しています。豊田章男社長らに鼻息を荒くして取材している彼に対抗して、私はミュージアムを運営する「おおやま夢工房」道の駅事業部の森繁基副店長を直撃しました。

「ここでは、下描きや試し描きを通して漫画が完成するまでの過程を見ることができます。また、諌山さんが日田時代に描いていたものも展示しています」と森さん。そして、「この日田から世界的な漫画家が出たことに夢を感じますね」と話してくれました。

ミュージアムはなんと入場無料。週末には一日に1000人以上が入場しているそうです。

日田駅前にも「聖地」 リヴァイ兵士長像

日田駅前に戻りました。ここにも2021年3月に聖地ができました。リヴァイ兵士長像。「人類最強の兵士」と呼ばれる人気キャラクターです。

リヴァイ兵士長像。絶え間なく人が来て、写真を撮っていました
リヴァイ兵士長像。絶え間なく人が来て、写真を撮っていました

夜に再び駅前に出向くと、なんと暗闇の中に巨人が! 飲食店のビルの窓からこちらを見る巨人の顔です。

闇に浮かび上がる巨人。こんなに大きい顔を見るとびっくりしてしまいます
闇に浮かび上がる巨人。こんなに大きい顔を見るとびっくりしてしまいます

日田は今、街じゅうが「進撃の巨人」に染まっているかのようです。

駅の近くを流れる中城川ぞいに八重桜が咲いていると聞いて、行ってみました。そこにはライトアップされた八重桜が。散策しながら「一人夜桜」を楽しみました。

光に照らされる八重桜。幻想的です
光に照らされる八重桜。幻想的です

翌朝、再び中城川に行くと、今度は朝日に照らされた八重桜を見ることができました。満開は過ぎていましたが、それでもけっこう花が残っています。散った花びらが川を流れていき、その川からはせせらぎの音が聞こえてきました。前夜に続いて「一人花見」を楽しみました。

きれいなピンク色の八重桜。散っていく花びらに過ぎゆく春を感じました
きれいなピンク色の八重桜。散っていく花びらに過ぎゆく春を感じました

濃厚な梅酒を堪能 梅酒蔵おおやま

日田の旅も終わりに近づきました。日田には、名物の酒もあります。大山町にある「梅酒蔵おおやま」を紹介しましょう。

梅酒蔵おおやま。無料で見学ができます
梅酒蔵おおやま。無料で見学ができます

大山町では梅の栽培が盛んです。この地元産の梅を原料に、さまざまな梅酒がここでつくられています。
特別に許可を得て、梅酒を熟成させている樽(たる)が並ぶ部屋を見学させていただきました。地元農家から直接仕入れた新鮮な鶯宿梅(おうしゅくばい)を原料に3年かけて熟成させた梅酒を、この樽でさらにもう2年熟成させるそうです。

樽が並ぶ部屋。ここでおいしい梅酒が生まれます
樽が並ぶ部屋。ここでおいしい梅酒が生まれます

こうして出来上がるのが、「樽仕込高級梅酒ゆめひびき」。買って帰って自宅で飲んでみると、すごく濃厚。これまで味わったことのない力強い味で、ロックでおいしくいただました。

「樽仕込高級梅酒ゆめひびき」は税込み3667円。瓶(左)もおしゃれで、風呂敷に包んで販売されています
「樽仕込高級梅酒ゆめひびき」は税込み3667円。瓶(左)もおしゃれで、風呂敷に包んで販売されています

パリっとシャキシャキ ソウルフード「日田やきそば」

日田に来たからには食べなければ後悔する食べ物もあります。「日田やきそば」です。私は地元の人に薦められた店「三久(さんきゅう)」へ。今回の旅で「進撃の巨人」におおいに感化された私は、「進撃の個人」となって勢いよくのれんをくぐりました。

日田やきそばの店「三久」
日田やきそばの店「三久」

店主の田中修さん(52)によると、市内で「日田やきそば」で知られる店は、もともとラーメンとやきそばの二本立てで営業していたといいます。そして、やきそばは出前をとって食べる人の方が多かったそうです。その後、やきそばの評判が観光客にも広まり、ご当地グルメの代表になりました。モヤシ、豚バラ、ネギの3種類の具が入っているのが特徴。焼き具合や秘伝のソースによる味付けで各店は個性を出しています。田中さんは「うちの麺は自家製麺です。やきそばとともに居心地のいい店の空間も楽しんでいただきたいですね」。

さあ、注文したやきそばが出てきましたよ。いただきまーす。

モヤシがたっぷりのやきそば。ラーメンスープ付きで税込み750円でした
モヤシがたっぷりのやきそば。ラーメンスープ付きで税込み750円でした

麺はしっかり焼かれていて、パリッとしています。モヤシのシャキシャキ感もたまりません。秘伝のソースにもコクがあり、絶妙のおいしさ。「三久」で日田のソウルフードに舌鼓を打ちました。

えっ、私に質問ですか。「三久」は誰から薦められたのか、ですって? すみませんが、それは明かせません。こう見えても旅ライターの私はジャーナリストの端くれ。日田やきそばの店と同じですよ。ソースは秘密。

■日田市観光協会
https://www.oidehita.com

■日田まぶし 千屋
http://www.hita-yoroduya.com/

■Areas
http://www.hi-count.net/areas.html

■進撃の巨人in HITA
https://shingeki-hita.com/index.html

■梅酒蔵おおやま
https://www.umehibiki.jp/umesyugura/

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