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嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

一転嵐に、転覆寸前のカヌーに流木迫る!

嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

午後になると天気が崩れ、黒い雲が空一面を覆った。風も急に強まり、波は高く、気付けば嵐のよう。

ここまでの強風は初めて。この旅一番の試練かもしれない……。
揺すられるがままのカヌーはいつ転覆してもおかしくない。
荒波が中に入ってきそうでヒヤヒヤし、早く収まってと祈ることしかできない。
かぶっていた帽子は風で飛ばされてしまった。

追い討ちをかけるように、目の前に大きな流木が見えた。
身長の倍くらいありそうな根っこに、カヌーはどんどん近づいていく。
前を行く友人の2隻が避けようと左右に分かれた。
荒波に気力を奪われていた私は、どっちに進めばいいか判断がつかない。

「ぶつかる!」 

とっさに立ち上がり、両手でパドルを握り根を突いた。
ありったけの力を込めて、かろうじてバランスを保つ。
やがてカヌーは無事根から離れ、ほっと一安心した。

まるでスローモーションのようだった。
体が勝手に動き、頭は冷静そのもの。人はピンチになると底力が出るのだろうか。
自分がたくましく思えた。でも、手はずっと震えたまま。
いつもの自分に戻るにつれ、頭の中が恐怖でいっぱいになっていく。

今日はもう漕ぎたくない。一番近いキャンプ地に停泊してもらうことになった。

嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

明日はゴールのカーマックスに泊まる予定なので、これがおそらく川下り中最後のキャンプ。
気持ちも徐々に落ち着いてきた。
最後の夜を満喫するかのようにゆっくりと過ごす。

嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

ここまでの日々が長いようで短くて、この景色も見納めだと思うと、とても寂しい。

筏で川下りする人たちに遭遇

嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

最終日の7日目。筏(いかだ)で川を下っている人たちに遭遇した。

カヌー経験のない私は、ユーコン川下りに誘われたとき、正直ピンとこなかった。
キャンプは好きだし、アウトドアも好き。
だけど、熊は出るし、トイレもシャワーもないという。
ハードな1週間、仲間の足を引っ張るんじゃないかと迷っていた。

そんな時に勧められたのが、野田知佑さんの『ユーコン川を筏で下る』という紀行本。
面白くて一気に読み、読み終わった時には心は決まっていた。
そして野田さんと同じように、筏で下っている人たちに出会えたのだ。

嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

聞けば、ホワイトホースで木を切るところから始め、カーマックスのさらに先にあるドーソンへ向かうという。
カヌーに2人、筏に3人。いろんな国から集まったワイルドな人たち。
ドイツ人のおじいちゃん(一番左)は日本が好きだと言い、別れ際に「上を向いて歩こう」を歌ってくれた。
最終日に訪れたとても素敵な出会いだった。

嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

山の間に道路が見え、車の音が聞こえるようになってきた。
鉄塔や電線が一気に現実世界を思わせる。
街が近い。ゴールも近い。

終着の地・カーマックスに到着して

嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

18時、ゴールのカーマックスに到着した。
漕ぎきった達成感、終わってしまう寂しさ。もう熊におびえなくていいという安心感、いろんな感情が押し寄せてくる。

嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

カーマックスのキャンプ場は、キレイな水が使えて、トイレもある。1週間ぶりにシャワーも浴びた。
当たり前のことにいちいち感動する。

嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

アイスクリームにハンバーガー。Wi-Fiも使える。

嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

ハイウェーに面したキャンプ場は、ドライブ中の人たちの休憩場所にもなっていた。
大きなキャンピングカーも多く、乗り物は違えど、長い旅をしている者同士、仲間のような気持ちになる。

キャンプ場には途中で会った人たちが集まり、お互いをねぎらったり、たたえあったり、温かい空気が流れていた。

筏の人たちにも再会し、途中で釣ったというグレーリング(カワヒメマス)をいただく。ニジマスやヒメマスに近い味で、ふっくらしてとてもおいしかった。

嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)
嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

レンタサイクルでカーマックスの街を散策したら、ユーコン川を見下ろせる橋があった。
漕いでいる時は実感がなかったが、こんなにも広い川だったんだ。
さっきまでいた場所がとても大きな存在だったと、改めて気付いた。

嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

7日間の川下りを終え、ここからバスでホワイトホースまで戻る。
こんなに長い時間をかけて漕いできたのに、帰りはたったの3時間。おかしくて笑ってしまう。

想像以上に大変な旅だった。熊は怖いし、向かい風も怖い。
もう帰りたいと思うこともあった。
だけど、当たり前のことが当たり前じゃない生活はそれなりに楽しかった。
ここでしか見られない景色や話せないこと、味わえないものがたくさんあった。
何ものにも代えがたい特別な時間を過ごしたように思う。

嵐で流木にぶつかる! カヌーでユーコン川下り(3)

いろんな経験をさせてくれたユーコン。
私にとって、初めての“冒険”だったのかもしれない。

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