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花のない花屋
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誕生日プレゼントには、いつもアメリカから洋服を。おしゃれが好きだった母へ

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。
新型コロナウイルスで大きな影響を受けた花の生産者を支援している全国農業協同組合連合会(全農)に、その活動の一環として連載にご協力いただいています。
あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉

小林奈々さん(仮名) 48歳 女性
学生
アメリカ在住

    ◇

24歳で結婚、数年後に子どもが生まれ、専業主婦として子育てに専念してきました。とはいえ学生時代から持っていた留学の夢を諦めきれず、娘が8歳の時に母子2人で米国カリフォルニア州に移り住みました。

娘を現地の学校に通わせながら私も語学学校へ通い、エステやレストランで働いたり、実家に援助してもらったりしながら娘を育て、その娘は今年20歳の大学生になりました。

何年か前までは、日本にいる両親とは、カリフォルニアに来てもらったり、ハワイで落ち合ったりして会える機会がありました。最後に両親に会ったのも、2年前のハワイです。久しぶりに会うと、おしゃれだったはずの母の服がなぜかシミだらけ。そう、認知症になっていたのでした。

そのとき、母は86歳。10歳年下の父が何かと面倒をみていましたが、父は父で緑内障が進み、すでにほとんど目が見えない状態。母の服のシミにも気がつかなかったようです。

「今日も料理を失敗してしまってね。今まで焦がしたことなんてなかったのに……」

ハワイから帰国してからも、いろんなことができなくなってしまった自分にいらだち、落ち込む母から電話がよくかかってきました。

現在の母はさらに認知症が進み、旅行すらむずかしくなりました。父がセットしてくれたテレビ電話でときどきおしゃべりするのですが、私のことはかろうじてわかるものの、アメリカに住んでいることは忘れてしまっていることも多いです。話しかければ返事をしますが、母から話しかけてくることはほとんどありません。

私の小さい頃のアルバムには、帽子からブラウス、スカートまで、母の手作りしてくれた服を着てポーズをとる私の写真がたくさんあります。母自身も、若い頃からおしゃれが大好き。アメリカに来てからは、毎年母の誕生日に、母の好きなモノトーンや、ワインカラー、パープルなどシックなブラウスやカーディガンなどを見つけては贈り、母もそれをとても楽しみにしてくれていました。今では自分で服を選ぶこともできなくなり、目の悪い父が手探りで選んだ服を着せているそうです。

おしゃれの楽しみだけでなく、自分の誕生日も、服を手作りしたことや旅行に行ったこと、何もかも忘れてしまった母。悲しいことですが、当初の自身の病気に苦しむ時期は過ぎ、穏やかな毎日を過ごしていることを救いと思うようにしています。

最近は父から「もうお母さんの服は贈らないでいいよ」と言われてしまい、考えた末に昨年のクリスマスにはお花を贈りました。すると、母は大喜び。テレビ電話で、久しぶりに母のうれしそうな顔を見られました。すぐに忘れてしまっても、すぐにわからなくなってしまってもいいのです。うれしい思いだけは、たくさんさせてあげたいと思っています。 コロナで次にいつ会えるかもわからない私に、今できることは何かしら。そんなことを、いつも考えながら暮らしています。明るく楽しくなるようなお花を贈っていただけませんでしょうか?

誕生日プレゼントには、いつもアメリカから洋服を。おしゃれが好きだった母へ
≪花材≫バラ、ダリア、アンスリウム、カラー、パフィオペディラム、スティングレイ(葉もの)

花束をつくった東さんのコメント

シックな色がお好きというおしゃれなお母様のために、華やかだけれど品のあるブーケを作りました。真ん中に置いたのは、手のひらほどのサイズの大きなダリア。さらにアンスリウムやランの一種であるパフィオペディラムなど、ワインカラーや同系色の花を集めて、落ち着いたイメージでまとめました。
ここに黒などの濃い色を使うとさらにシックなイメージになりますが、今回はユニークな形の葉、スティングレイのグリーンを加えることで、春らしい明るさもプラスしています。ちなみにこのパフィオペディラムの花弁の一部は袋状になっていて、ここに「福が集まる」と言われているとも聞いたことがあります。
なかなかご実家に戻ることができず、つらい思いをしていらっしゃるアメリカ在住の投稿者様のお気持ちが、お花と一緒にすこしでも届きますように。また花を見たお母様が、つかの間でも明るい気持ちになってくだされば、うれしいです。

誕生日プレゼントには、いつもアメリカから洋服を。おしゃれが好きだった母へ
誕生日プレゼントには、いつもアメリカから洋服を。おしゃれが好きだった母へ
誕生日プレゼントには、いつもアメリカから洋服を。おしゃれが好きだった母へ
誕生日プレゼントには、いつもアメリカから洋服を。おしゃれが好きだった母へ

(文・福光恵 写真・椎木俊介)

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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