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小川フミオのモーターカー
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品のいいスタイリングの快適セダン ランチア・プリズマ

まとまりがよく品のいいスタイリングが特徴的

イタリア車を好きな人の中では、最も評価が高いブランドの一つが「ランチア」だ。「ストラトス」とか「デルタHFインテグラーレ」といったド派手で、超高性能なスポーツモデルを手がける一方、堅実なセダンで定評があった。そのうちの1台が、1982年に発表した「プリズマ」だ。

ランチア・プリズマは、全長4180ミリと、今の水準からすると、かなりコンパクトなボディーサイズの4ドアセダン。「VWゴルフ」の成功をみて開発されたハッチバック「ランチア・デルタ」をベースに、独立したトランクを持つセダンとして作られた。

デザインを担当したのは、ゴルフもデルタも担当したイタルデザインを率いるジョルジェット・ジュジャーロ(※)。そもそもゴルフから5年後に登場したデルタ(79年)には、ゴルフでやれなかったこと、あるいは改良したいと思っていたことが盛り込まれていた。

(※日本では「ジウジアーロ」と書かれることが多いが、本連載ではジュジャーロと記載する)

ランチア伝統の2分割のグリル。デザインはフィアット社内デザインチームが手がけた
ランチア伝統の2分割のグリル。デザインはフィアット社内デザインチームが手がけた

代表的なものは、パッケージングだ。ゴルフより全長を伸ばして室内空間の拡充にあてられた。そのデルタのドライブトレイン、ウィンドシールド、ボンネット、フロントフェンダー、ルーフなどを使う前提でデザインされたのがこのプリズマである。デルタよりさらに約300ミリ全長が長い。

プリズマの特徴をごく簡単にいうと、品のよさだ。デルタでも、ランチアの伝統ともされた質感の高さを生かしたインテリアが特長だった。プリズマもそれを引き継いでいる。例えば、イタリアはミラノ郊外に本社を置くエルメネジルド・ゼニアに注文したシート生地を使っていたモデルもあった。

当時のアウディ80といいイタルデザインは機能主義とエレガンスとスポーティーさをうまくまとめている
当時のアウディ80といいイタルデザインは機能主義とエレガンスとスポーティーさをうまくまとめている

ルイヴィトンの「ダミエ」柄を思わせる市松模様で、同系色の組み合わせによる色使いの趣味のよさと、手ざわり、そして独特の、シートフレームに横方向に伸縮する吊床式クッション材を渡した構造によるソフトな座り心地にも寄与していた。私は80年代にその乗り心地の快適さにいたく感動したものだ。

89年までのモデルライフの中で、エンジンは色々用意されている。欧州では、1.3リッター、1.5リッター、それに1.6リッターDOHCエンジンを搭載して登場。86年にマイナーチェンジがあり、1.6リッターに燃料噴射装置が備わりパワーアップするとともに、フルタイム4WD「プリズマi.e.4WD」が追加設定された。ちなみに「i.e.」は燃料噴射エンジンを意味している。

プリズマi.e.4WDは、87年には車名を「プリズマ・インテグラーレ」と改名。当時人気が高かった、デルタ・インテグラーレにならったものだ。ただし、4WDシステムはデルタのように高性能を追求したものではない。

ダッシュボード下は棚になっていて便利だった
ダッシュボード下は棚になっていて便利だった

日本でも気持ちのいいドライブを体験させてくれた。1.6リッターエンジンは適度にトルクがあって、力不足は感じない。最も優れているのは、よく出来た設定のサスペンションがもたらす操縦性。かつ、リアサスペンションは長いアーム長を備えていて、乗り心地も快適だった。

ランチアは、1906年にレーシングドライバーだったビンチェンツォ・ランチアが創業したブランドで、1920年代には早くも、モノコックボディー、前輪独立懸架、SOHCエンジンなどを採用。この「ラムダ」は今でもクラシックカーのファンの間で人気が高い。

1960年代は、フロントが軽くなる狭角V型4気筒という独自の設計のエンジンと前輪駆動の組み合わせを持つミドルサイズのスポーツクーペを多く手がけ、ラリーでも活躍した。一方、V6の後輪駆動のエレガントなスポーティークーペを富裕層向けに製作。名声を確立したのだ。

写真だと全長4.1メートルとは思えないほど堂々として見える
写真だと全長4.1メートルとは思えないほど堂々として見える

ただし経営難により、69年にフィアットに吸収された。ストラトスやデルタインテグラーレは、フィアットが中心になって開発されたため、正直なところ、ブランドがランチアでなくても成立した。むしろプリズマに接すると、ランチアの伝統が感じられた。

たとえコンパクトサイズでも、ここで書いてきたように、乗り心地や室内の作りや品のいい外観などから、ランチアといえば質の高いセダンを期待する声に応えようというフィアットの思惑が感じられたからだ。アッパークラスのセダンの分野で、ランチアブランドの復活を望む声は、私のまわりに多い。私も同感なのだ。

【スペックス】
車名 ランチア・プリズマ1500
全長×全幅×全高 4180x1620x1385mm
1498cc直列4気筒 前輪駆動
最高出力 85ps@5800rpm
最大トルク 12.5kgm@3500rpm

(写真=FCA提供)

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