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つながる、ということ
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世界中、同じことに動かされているまれな時代 作家・赤坂真理さん

近所はワンダーランド

近所で旅気分を味わうことです。近所って、知らないことがいっぱいあるワンダーランド。自転車置き場の後ろに道があった、とか、保育園の横は通れるんだ、とか。草の生えた場所や苔(こけ)の上を裸足で歩くと、すんごく気持ちいい、とか。もともとは、蟻(あり)をずーっと見ていたいとかいう子どもだった。でもいつしか忙しく通り過ぎるだけになっていたのですね。いつも移動で通り抜けるだけだった場所を、どこへ行くともなく歩いてみることで、発見すること、満たされることがたくさんある。

作家の赤坂真理さん

経済活動のもろさ露呈

――コロナ禍以降、「つながり」について何を感じましたか。

共同体も家族も変わっていく気がします。家族の場合、もともとうまくいっている家族はよりうまくいっている感があるけれど、不和や緊張を抱えた家族はつらいですよね。もう少し家族や地域の概念を広くとらえないと、本当につらい人がいるんじゃないか。

恋愛をベースに、結婚し子をなし、働きながら両親か親族で子育てをする、というのがよくある家族観。これは、実はとてもむずかしい。「現代の一般的強迫観念」といってもいいと思う。努力してもできないこともあります。これに多くの人が追い詰められている。『愛と性と存在のはなし』を書く過程でも、そのことを痛感しました。なんてむずかしいことを人間は成り立たせようとしているんだろう、というほどに。愛とセックスでさえ、両立がむずかしかったりするのに。

あらかじめ心が折れてしまう人がたくさん出る。でも、本当は大多数の人間が、親密なつながりは、ほしいのです。

こんな話を聞きました。ある事情で傷ついた人たちが、一緒に暮らしている。その中で誰か弱ると、その間その人は休んで、他の人たちが働き、面倒を見てくれる。それを聞いたときに思いました、こういった友情的な結びつきの「家族」も、家族の概念に入れたら多くの人が楽になると。「人生という旅の仲間」としての家族。結婚という愛情関係は、結びつきやすいけれど、危うい。それで子どもも危うさを受けることがあります。血縁のすばらしさもあるけれど、家族の概念を広げるときが来ているように思う。それを知らせるきっかけのひとつが、コロナだととらえています。このように病が身近な時代には、より広く助け合わなければ生きていけないだろうし。

作家の赤坂真理さん

――愛情も友情も昔からありました。コロナ禍で内実が変わったということですか。

これまでは、愛情や友情よりも経済活動が優先、稼げる人が偉い、という風潮があった気がします。けれど、コロナ禍のような状況に経済活動はものすごく弱いとわかった。だから、経済活動と同時に、ベーシックな生活の中での人と人の間のつながりを保っておかないと、生きるのがものすごく難しくなっている感じです。ごはんつくって、食べてお話をして、という普通の暮らしを大事にしていかないと。

オンラインで時差がリアルに

――価値観や物の見方に変化はありましたか。

コロナ下では、世界中が同じことに動かされている、という風景を、生まれて初めて見ました。世界大戦でも世界恐慌でも、こういうふうに同じ方向は向かないだろうと。コロナは、戦争でもできない形で人を駆動させる。

人と人との触れ方やコミュニケーションの仕方が変わり、人と一定の距離をとるリテラシーが行き渡りすぎて、コロナ禍がなかった時には戻れないだろうな、と思います。一方で、あれほど進まなかった在宅勤務がこんなに進むんだ!――という驚きもある。

Zoomなどを使ってオンラインで話すことが増え、時差をリアルに感じるようになりましたね。さまざまな国の人と集まると、いろんな時間帯の人がいるでしょう。こちらは夜で、あの人のいる場所は明るい。地球上の場所と太陽の位置関係でこうなる、という、シンプルなリアルさ。居ながらにして旅をしている感じというか。こういう状況下は、物語的なところもあり、今までとは別の想像力が育つ気がします。

作家の赤坂真理さん

人間関係ランダムシャッフル状態

――2月には、都内でご自身がパフォーマーとして出演される舞台を企画しましたね。コントラバス、打楽器、琵琶の奏者と共演して。

ある意味コロナのたまものです。コロナ下で、文化庁が、文化芸術活動の活動支援事業をしています。自治体が行っていることもあります。わかりにくいのですが、こういう時だからこそ、垣根を越えて情報を共有し合ったり、助け合ったりすると、アクセスできます。そこは情報があるかないかだけで、キモは、むずかしいことより「助け合い」。情報まで到達しにくいけど、行ってみると、案外ひらかれたものです。申請も面倒くさいのですが、人と人が、付き合いの長さなどを超えて助け合えるきっかけとなり、仲良くもなれます。じっさいこの公演で、仲良くなれた人たちとの関係は、わたしの宝物です。ふだんはありえない人間関係ランダムシャッフル状態。こういうことがなければ、異業種のすばらしいミュージシャンに共演を申し込む勇気なんかは出なかった。コロナで大打撃を受けている人や領域があることはわかり、胸が痛みます。同じ芸術領域でも、場が大事なパフォーミングアーツ系は大打撃です。が、わたしはコロナの、必ずしも「禍」とだけ言い切れない部分も肌で感じています。

舞台に立つこと自体は数年前からしていて、晩年におつきあい下さった作家の石牟礼道子さんの影響が大きいです。石牟礼さんの作品には「芸能」という要素が色濃くあるのです。石牟礼さんの新作能をプロデュースした演出家と一緒に訪ねたことがあったのですが、その演出家が、旅芸人について書いた石牟礼さんの作品をご本人に読み聞かせながら嗚咽(おえつ)しはじめた。「ここには芸能民としての僕のルーツがあるんだ」と。その姿を見ながら、こんなにも人を動かす芸能って何?と感じたのが始まりで。文字を目で読んで黙って書いていただけだった私が、自他の作品を身体的に読んでみるとか、それを自分で演(や)ってみるとかするようになったんです。演劇と朗読とパフォーマンスの間、みたいな感じで。

――表現のスタイルや内容が変わってきたということですか。

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