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誕生75周年、スクーター「ベスパ」とイタリア人の甘い関係

1946年ベスパ98

翼をもがれた航空機技術者によって生まれたベスパ

イタリアを代表するスクーター「ベスパ」が2021年4月、誕生75周年を迎えた。

それを記念して製造元のピアッジオ社は、特別仕様車「ベスパ75th」シリーズをイタリアで発売した。ボディーカラーは1940年代に流行した黄系の色を再解釈したメタリックで、排気量は標準型の「プリマベーラ」には50、125、150ccが、上級モデルの「GTS」には125cc、300ccが用意される。

ベスパ・プリマベーラ75周年スペシャルエディション
ベスパ・プリマベーラ75周年スペシャルエディション

これを機会に今回は、ベスパの歴史を振り返るとともに、イタリア人にとってベスパとは? を解説しよう。

ピアッジオ社は創業を1884年にさかのぼり、第2次世界大戦中は航空機メーカーとして多くの製品を旧イタリア王国軍に納入していた。しかし1943年、ピサ県ポンテデラの工場はドイツ軍によって占領され、飛行機製造の停止を余儀なくされた。そうしたなか、北部ピエモンテ州ビエラを本拠としていた研究開発陣は、創業家出身の社主エンリコ・ピアッジョのもと、戦後復興を担う民生品を模索し始めた。到達した答えは「スクーター」であった。

主任設計者に指名されたのは、同社で星形エンジンやイタリア初のヘリコプター計画にも参画したコッラディーノ・ダスカーニョ技師(1891-1981)だった。彼はチェーンを介さずエンジンの動力を後輪に伝達するダイレクトドライブ、ペダルではなくハンドルのグリップを回す変速機など、従来の二輪車とはまったく異なる機構を次々と盛り込んだ。さらに、乗員を衣服の汚れや乱れから解放すべく、機構部分全体を覆うモノコック(一体型)ボディーを採用した。

前輪を支える機構にも、通常の二輪車のフロントフォークの代わりに、片持ち式シングルアームを採用することでタイヤ交換を容易にした。

ピアッジオ社ポンテデラ工場における、ベスパの塗装準備工程。1949年
ピアッジオ社ポンテデラ工場における、ベスパの塗装準備工程。1949年

ダスカーニョ技師の娘たちがイタリアのテレビに明かした記録によると、生前の父親の関心はもっぱら飛行機と自動車に向けられ、二輪車には興味がなかったという。筆者が考えるに、だからこそ従来のモーターサイクルにとらわれない、画期的な乗り物が誕生したといっても過言でなかろう。

ネーミングについて記せば、プロトタイプ段階では従業員たちは、ディズニー映画のドナルドダックを示すイタリア語である「パペリーノ」と呼んでいた。ただしエンリコ・ピアッジョがある日、絞られたテールを目にすると同時に、エンジン音を聞いた途端「まるでハチ(vespa)のようだな」と感想をもらしたことから、正式な商品名が即座に決まった。

そしてピアッジオ社は1946年4月23日、「機械部分全体を包括する前後フェンダーを組み合わせたフレームを持つ、部品と要素を合理的に組み合わせた自動二輪車」の名称で特許を出願した。これこそベスパの誕生であった。

トスカーナ州ピティリアーノの商店脇にたたずむベスパ50スペシャル
トスカーナ州ピティリアーノの商店脇にたたずむベスパ50スペシャル

発売当初こそ鳴かず飛ばずの状態だったが、戦後イタリアで公共交通機関が不足や混乱をきたすなか、まもなく軽便な国民の足として大きな人気を博し始めた。

1953年には、ウィリアム・ワイラー監督による映画作品「ローマの休日」のなかで、グレゴリー・ペックとオードリー・ヘプバーンが移動手段として用いたことで、その存在は世界的に有名となった。

モンテプルチャーノにて。祭りの日、町内会館に乗りつけられたベスパたち
モンテプルチャーノにて。祭りの日、町内会館に乗りつけられたベスパたち

以後バリエーションを拡大しながら、今日に至っている。2021年現在、ベスパは83の国と地域で販売されている。生産拠点は3カ所で、発祥の地であるピサ県のポンテデラでは西欧圏および北米向け、ベトナム工場では現地および極東アジア、インド向け、そして2012年に開所したインド工場では同国およびネパール向けが造られている。歴代ベスパ・シリーズの累計生産台数は、1900万台にのぼる。

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