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花のない花屋
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限界だった母の気持ち。コロナ禍で姉と夫を立て続けに失って

読者のみなさまから寄せられたエピソードの中から、毎週ひとつの「物語」を、フラワーアーティストの東信さんが花束で表現する連載です。
新型コロナウイルスで大きな影響を受けた花の生産者を支援している全国農業協同組合連合会(全農)に、その活動の一環として連載にご協力いただいています。
あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら

〈依頼人プロフィール〉
赤松真知子さん(仮名) 50歳 女性
パート
東京都在住

    ◇

この半年、80歳の母には悲しいできごとが一度に降りかかりました。

母より二つ年上の父は、以前からレビー小体型認知症を患っていたものの、通院しながら母と2人で何とか生活していました。ところがコロナ以降は外出も減ったうえ、私も実家に帰ることを自粛。母以外と接しなくなった父の病状は急激に進んでしまい、母のことすら認識できない日も増えていきました。

ヘルパーさんと勘違いして「ご苦労様でした」と帰そうとする父に、母は話を合わせ、そのまま外で時間を潰すようなこともしばしば。我が家の緊急事態ですから、私も実家へ帰り、地域包括支援センターの方のお力を借りつつ、父の今後について考えました。

母からは「施設に預けたい」という話もでましたが、私は介護サービスを利用しながらできるだけ今まで通りの生活をさせてあげたいと望みました。長年寄り添った妻の存在をも忘れてしまう父との生活……。その時すでに母は限界を感じていたのに、私は気付けなかったのです。

父の自宅での生活を続けていくため、私はしばらく実家に泊まり込むようになりました。母には仲良しの姉、つまり私の伯母の家で骨休みをしてもらうことに。ところが、コロナ禍でしばらくぶりに会った伯母にも認知症を疑う症状が出始めており、さらに体調も悪くなっていました。母と私がいくらすすめても、伯母はなかなか病院へ行こうとせず、さらに増えてしまった心配事が母を苦しめました。

同じ頃、父が外出したまま迷子になりました。ショートステイを使うことにしたものの、混乱して暴れてしまい、結局それをきっかけに入院。自宅へ戻ってきた母が、電気も点(つ)いていない真っ暗な部屋で「どうしよう、どうしよう」とつぶやきながら、泣いていた姿が忘れられません。改めて一気に押し寄せたつらいできごとに直面し、押しつぶされそうになっている母に気が付きました。その後、病院で重度のうつ病と診断され、母も入院となりました。

まもなく伯母も入院し、亡くなりました。四十九日が過ぎた頃、父が入院していた病棟でコロナの集団感染が発生。父もコロナに感染し、そのまま1週間後に亡くなりました。あっという間の出来事でした。

いろいろなことを相談し、頼れる存在だった姉と夫を立て続けに失ってしまった母の悲しみは、まだ癒えていません。治療のおかげで落ち着いてきたため退院できた母に寄り添って、私は引き続き実家で過ごしています。最期に家族と会うこともかなわず、帰ってきた父の遺骨。父がいつも見守ってくれていると思いながら、何とか2人で毎日を送っています。

「見て!お花が咲いてきたよ」

「何もしていないのに、花って強いね」

最近も母と庭を眺め、父が育てていた花が春の訪れとともに咲いてきたのを見つけて、そんな話をしたばかり。今の目標は、介護サービスの手を借りた、母の一人暮らしです。穏やかな日々をすこしずつ取り戻していきたいと思っています。暗闇の中を手探りで進むような毎日でしたが、ほんのすこしだけ光が差してきたところかな。力をくれるようなお花を母に贈っていただけたらうれしいです。

限界だった母の気持ち。コロナ禍で姉と夫を立て続けに失って
≪花材≫マトリカリア、ブバルディア、スプレーカーネーション、アゲラタム、フロックス、セダム、アルケミラモリス、ソリダコ、イチゴ、ポリシャス 

花束をつくった東さんのコメント

短い期間で大切なご家族をお二人も亡くされたお母様へ、心安らぐ和風のガーデン風アレンジメントです。亡くなった投稿者様のお父様が花を育てていたというご実家のお庭をイメージして、カラフルですが鮮やかすぎない、やさしいトーンでまとめています。

小さいマーガレットのようなマトリカリアや、星のような形をした「星咲」と呼ばれる新しい品種のスプレーカーネーションなど、レトロな雰囲気がある小さなお花を中心にちりばめて、楚々(そそ)としたアレンジメントに仕上げました。お花市場で見つけたイチゴの実の自然なグラデーションも、アレンジメント全体の雰囲気によく合っています。

たくさんの種類のお花が入っていて、中には長い期間楽しめるお花があることもメリット。傷心のお母様を、すこしでも癒やすことができますように。

限界だった母の気持ち。コロナ禍で姉と夫を立て続けに失って
限界だった母の気持ち。コロナ禍で姉と夫を立て続けに失って
限界だった母の気持ち。コロナ禍で姉と夫を立て続けに失って
限界だった母の気持ち。コロナ禍で姉と夫を立て続けに失って

(文・福光恵 写真・椎木俊介)

読者のみなさまから「物語」を募集しています。

こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。

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