&w

つながる、ということ
連載をフォローする

パリ進出、原点はバングラデシュ 山口絵理子さんの挑戦

撮影:山田秀隆

私は、バングラデシュでの買いたたきや大量生産の現場を見ていて、そこの問題意識からスタートしています。SDGsとかエシカルの動きは正しいけれども、お客様の気持ちからすると、正しさ以上に競争力のあるモノを、モノとして気に入っていただけるかどうかという本筋の競争のほうがより一層、難易度が高いと思います。

正しいからと言って、モノの競争がなくなるわけでもないし、正しいからと言って品質が多少悪くても許されることは絶対ないです。当たり前に生産者情報は必要だし、当たり前に素材情報は開示すべきです。綿の産地、中国・新疆ウイグル自治区で、ウイグル族が強制労働させられていると指摘されている問題もそうですが、生産に関する情報公開をしないと安心して買ってもらえません。そんなのは大前提だと思っているんです。その大前提を踏まえた上で、プロダクトの競争をしている状態がヘルシーなわけで、なんでそこの前提を取り上げるのかな、と思います。

―食にも進出されました。なぜですか?

コロナ禍で、もう少しみなさんが気軽に途上国に触れられるきっかけがあったほうがいいよね、と社員と話していて、インドネシアでカカオの栽培からチョコレートの製造・販売までされている会社の社長さんと一緒に、チョコレートを作ることになりました。華やかなグラデーションの「イロドリチョコレート」は、SNS経由でも、バッグを買ってくださるお客様以外に確実に広がっています。

ファッションだと、特定のテイストになってしまいます。食だといろんな方が楽しめるのかなと。贈りやすいですし。

職人と日本のお客様をつなぐ

―コロナ禍以前は、バングラデシュの工場にお客様を連れて行くツアーをされていましたね。

途上国と先進国は、イメージよりも経済的・文化的に壁があるなと思っています。そこを壊して乗り越えて、人と人がつながった時に、好循環が生まれると思うんです。商品を段ボールに入れて、出荷したら終わりという感覚があると、どうしてもそれ以上の品質に到達できないんですよね。でも、ツアーでお客様が工場に来てくれて、「この人たちのために作っている」という意識が芽生えた時にすごく品質が変わりました。

いまでも、職人たちがお客様とフェイスブックでやりとりするなど、コミュニケーションがすごく活発で。工場のみんなが「品質を上げよう」と会議をしたり、「お客様のために」と言ったりするようになりました。逆にお客様も「生で見ると技術がすごい」「バングラデシュのイメージが変わりました」と、私たちが本当に望んでいたイメージ転換ができました。リアルなコミュニケーションの力のおかげです。

以前は1年に1~2回開催していましたが、コロナ禍では年に1回、10カ国をオンラインでつないでお客様感謝イベントを開催していて、1000人以上のお客様が参加してくれました。

―現場主義で、モノ作りにこだわられていますね。なぜですか?

言葉より形で証明していくほうが説得力あるな、とずっと思っています。「可能性」と一言で言っても解釈の仕方が違います。プロダクトにしてしまうと国を越えられるし、確かな「モノ」としてみなさんの目に触れます。マーケティングの言葉なしでも伝わるプロダクトって強いなと思います。形=事実だから。プロダクトあっての経営だし、販売戦略だから、私はずっとデザインをやっていますね。

毎年、私の中の経営とデザインの割合について悩みますが、どっちか選べって言われたら、モノ作りを選びたいです。糸がどうだ、皮がどうだってディスカッションをしながら作品を作り上げるという行為自体が、私はすごく好きだから。

―これからやりたいことは何ですか?

バングラデシュの新しい工場作りが大きな課題であり夢です。2022年に完成する予定だったのですが、コロナの影響で2~3年、後ろ倒しになりそうです。いまは250人ですが、1000人が働ける工場になる予定で、職業訓練もできる学校やメディカルセンターも作れるといいなと思っています。

革のなめしなどを内製化することができる、本当に夢の工場なんですよね。働くことを強制されている人が多いので、働くのが楽しい、モノを作るのが楽しいと思えるような、途上国で新たな価値観を提案できたらいいなと思っています。

バングラデシュは、ロールモデルがいると「自分たちもできるかも」という気持ちが大きい国だと思うんですね。「隣の工場ができるなら、うちもできる」って思いがちな人が多い国です。まねしてくれる工場が多いといいな、と思います。

写真:山田秀隆

PROFILE
山口絵理子

やまぐち・えりこ 1981年生まれ。マザーハウス代表取締役兼チーフデザイナー。大学で開発学を学んだ後、米国際機関のインターンを経て、バングラデシュに渡る。2006年に起業。

REACTION

LIKE
COMMENT
0
連載をフォローする

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル

    *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら