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このパンがすごい!
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パリの日常を吉祥寺で。「100年先もそこにあるような」普遍性の価値/リベルテ・パティスリー・ブーランジェリー

パリに住むように吉祥寺で暮らす。チーズを買って、少し高めのバターを買って、お総菜だけはちょっとだけ手間をかけラタトゥイユでも作って。あとはリベルテのパンがあれば、フランスさながらの食卓が実現する。

なぜそうなのか? リベルテのハード・セミハード系のパンを食べると、無性にチーズが食べたくなる。特に、ブリーやロックフォールのような芳醇(ほうじゅん)なチーズが。フランスで食べるパンと寸分たがわない、ミネラル感のあるフランス産小麦の風味が、マリアージュを呼ぶのだ。

パリの日常を吉祥寺で。「100年先もそこにあるような」普遍性の価値/リベルテ・パティスリー・ブーランジェリー
パン リベルテ

スペシャリテである「パン リベルテ」。フランスから輸入されるムーランブルジョワ社の小麦、ライ麦粉の力は圧倒的だ。むちっとした濃密な生地を噛(か)み締める。少しだけ入れられたはちみつと相まって甘い風味。それは、パン・デピスのように神秘的で、抹茶のような香りさえあふれだす。皮には、はちみつの甘さ。その濃厚さは、ルヴァンのかすかな酸味で見事に引き算され、後味をクリアに。毎日食べるパンだけに、食べはじめから終わりまでの起承転結、食事とのペアリングが計算し尽くされている。

リベルテのバゲットは、ワンカットの中にさえ、息をのむ瞬間が幾度もある。クリスピーで、シリアルな甘さのある皮の上辺。一方、底は歯がめり込むような食感で、香りには鼻腔(びこう)への広がりがある。ぷにゅんと沈む中身の食感のエロチックなこと。みずみずしい小麦の甘さのあと、ミネラル感のある風味が何度も押し寄せ高まっていく。

日本の細やかな製粉と異なり、フランスの製粉は、粒子が粗めで風味は濃厚。その代わり、水を吸いにくく、グルテンがつながりにくい。バゲットなどハード系はあまりこねないという日本の常識とは逆に、しっかりこねる。本店さながらの製法が取り入れられているのだ。

パリの日常を吉祥寺で。「100年先もそこにあるような」普遍性の価値/リベルテ・パティスリー・ブーランジェリー
(左上から反時計回りに)パン リベルテ、パン ペイザン、バゲット

パリ10区、サンマルタン運河沿いの本店をできる限りそのまま、吉祥寺へ持ってきた。大理石のカウンターやタイルといったインテリア、パンの製法のみならず、精神まで。「パン リベルテ」は、パリは5キロ、日本でも2.5キロという大きなサイズで焼かれる(1/4、1/8で販売)。大きく焼いたパンには水分が残る。いたずらに変えないことも、「パン リベルテ」のおいしさに貢献している。パリでは、この巨大な塊を常連さんが抱えて持って帰る風景が日常だという。それもうなずけるほど、このパンは家族でぺろりとたいらげてしまえるのだ。

クロワッサンもまた、本場の衝撃を追体験できるクオリティー。向こうが透けるような飴(あめ)色の皮が、かさこそと割れ、砕け散るはかなさ。中身は無上のなめらかさで舌を撫(な)でる。口当たりは軽く、一方でバターの風味は明るく華やかでありながらもたれない。さすがは、あらゆるクロワッサンを極上のものにしてしまうフランスAOPバター「レスキュール」。これもパリの本店と同じ食材だ。

「リベルテ」はフランス語で自由を意味する。たったひとりのオーナーシェフが君臨するわけではない。パティシエ(菓子職人)、ブーランジェ(パン職人)、スタッフ全員がおいしいもののために垣根を越え、切磋琢磨(せっさたくま)して作品を作るコンセプトが店名に込められている。

クロワッサン リンツァー
クロワッサン リンツァー

それを象徴するのが、「クロワッサン リンツァー」。フランボワーズを練り込んだ部分、プレーンな部分が重なり合う、話題のバイカラークロワッサン。かりっかりの表面が崩れ落ちると中身のふわっふわがきて、バターの風味がじゅわりあふれだす。さらには、底に忍ばせた、パティシエによって自家製されたフランボワーズのコンフィチュールの風味が爆発、官能の針は振り切れる。

店内に満ちている、伝統的であり、モダンであり、というリベルテならではの空気感。先端的でありつつも「100年間ずっとそこにあるような」という普遍性を志向するコンセプトによってもたらされる。華やかなおやつパンも、食事パンも。目先の流行だけに左右されないことが、吉祥寺に上質な日常を生みだしている。

リベルテ・パティスリー・ブーランジェリー 東京本店
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-14-3
0422-27-6593
10:00~19:30(土日祝 9:00~。2Fでのイートインは11:00まで、11:00以降はカフェとして営業)
無休

フォトギャラリーへ(写真をクリックすると、くわしくご覧いただけます)
「このパンがすごい!」紹介店舗マップ(店舗情報は記事公開時のものです)

池田さんからのお知らせ

『Hanako特別編集 池田浩明責任編集 僕が一生付き合っていきたいパン屋さん。』(マガジンハウス)が発売されました。149軒のパン屋について愛を込めて書きつづっています。うつくしい写真も豊富に掲載した大判のムックです。ぜひご覧ください。

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