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発祥地の碑、見つけるコツは深呼吸? 東京再発見2

旅行作家・下川裕治さんが、独自の切り口で東京を巡るシリーズ。今回は「発祥地」の碑を訪ねます。見つけにくい碑を探したら、予想外に大変な散歩に……。(写真:中田浩資)

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと、相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

発祥地の碑を訪ね歩く旅・前編

江戸時代に入り、日本の中心になった江戸、いや東京。日本の文化や事業、産業は、この街を発祥地にするものが多い。それをしるす碑が東京には多く建てられているという。書籍やネット情報を頼りに、散歩感覚で訪ねてみることにした。

しかし甘かった。

理由? 碑や表記が控えめなのだ。植え込みのなか。ビルの壁。電柱の側面……。「このへんにあるはずなんだけどなぁ」と行ったり来たり。これまで何回となく通っている道にそんな碑があったとは……という場合もある。紛れるように建つ碑を2日間にわけて探索したが、歩いた距離は20キロを超えるというハード散歩に。今回はその前編。

発祥地には諸説があり、認定が難しいものもある。この旅は、「発祥地」「元祖」といった碑や看板表記を軸に訪ね歩いています。

短編動画

牛丼の吉野家の碑がある築地の波除(なみよけ)神社。場外市場を進み、境内に。築地の神社らしい碑が並ぶなかから、「吉野家」を探す。「あったッ」。碑はこんな感じでみつかっていきます。

今回の旅のデータ

前編は東京の東側エリア。上野公園や銀座の東側の発祥地碑を。電車、バスを駆使してまわることになる。しかし、碑は駅近くにはなく、かなり歩くことも。バス路線を正確に調べれば、効率は少しアップするかもしれない。碑の探し方のコツは、グーグルマップなどで近くまでいったら、深呼吸。焦らず、ゆっくりと周囲に目を凝らすこと。植え込みや看板などに隠れてしまっていることも多い。丁寧に探すことを心がけてほしい。

発祥地の碑を訪ね歩く 「旅のフォト物語」

Scene01

築地

築地市場の場内市場は移転したが、場外市場は店も多い。その前の道を進むと、見えてきたのが波除神社。境内に牛丼の吉野家の碑があるはずなのだが。敷地は広くない。そこに「海老塚」、「すし塚」……など築地の神社らしい碑がぎっしり。しかし吉野家の碑はなかなかみつからない……。

Scene02

石碑

ありました。入り口を入ってすぐ右手。見逃していました。碑文には、「1899(明治32)年日本橋の魚市場のなかで吉野家は誕生。関東大震災後の市場移転で築地に。戦後、築地で屋台からはじめ、1959(昭和34)年に築地に吉野家一号店を開店」といった内容が。一号店は場内市場にあった。チェーン発祥の地ということか?

Scene03

碑

地下鉄東西線、東陽町駅の南側に、「伝統の一戦(巨人・阪神)誕生の地」の碑。洲崎球場跡だ。ビル街の道を行ったり来たりして、やっとみつけた。この球場は1936年完成。巨人と大阪タイガース(いまの阪神)の日本一決定戦がその年に行われた。沢村栄治投手の三連投が有名だ。当時は海に近く、海水が流れ込み水没コールドゲームもあったとか。

Scene04

碑

JR錦糸町駅と亀戸駅の中間あたりに、「ドラム缶発祥の地」の碑。ビルの裏側の敷地内にこんなモニュメントがあった。碑文には、「合資会社日本ドラム罐製作所を設立し、この地に我が国初のドラム缶製造専門工場を建設し、商業生産を開始した。」と記されていた。1932年のことだ。気持ちはわかるが、当方、ドラム缶というものに縁がなく、ここが発祥地といわれても……。

Scene05

看板

「与兵衛鮨(ずし)発祥の地」をめざしてJR両国駅で下車。発祥の地は区役所も力を入れているようで、周辺地図に明記されたり、案内板が設置されたりしていることが多い。近くまでは迷わずに行けるのだが、碑があるというあたりで足が止まる。みつからない。碑が控えめなのだ。はたして、「与兵衛鮨発祥の地」は……。

Scene06

看板

これが碑でした。反対側の歩道を歩いていたため、碑の裏しか見えず、分別ごみ表示板かと思った。「与兵衛鮨」は、江戸時代の後期、江戸で大ヒットしたすし屋。小泉与兵衛が考案した「江戸握り鮨」を出した店で、にぎりずしの元祖だとか。店は「横丁の左手」と碑文に書かれていた。探してみたが、住宅があるだけでした。

Scene07

ラーメン

場所は変わって浅草の仲見世に交差する道を少し入ったところにある「与ろゐ屋」というラーメン店。店頭看板に、「しょうゆらーめん発祥の地」の文字。しょうゆラーメンのルーツは浅草の「来々軒」といわれる。いまその店はなく、しょうゆラーメンは「与ろゐ屋」で。和風だしのしょうゆラーメン、800円。ゆずの味がアクセントになっていました。

Scene08

碑

浅草から上野に出ると、「喫茶店発祥の地」の碑がローソンの前に。碑文には、「明治21年(1888年)4月13日、日本人による初めての喫茶店が、鄭永慶(別名・西村鶴吉)によりこの地に設立された」。店名は可否茶館(かひさかん)。コーヒーの値段は、1銭5厘から2銭とそばの倍以上。この高さに、客は二の足を踏んだのか、1892年には閉店してしまった。

Scene09

碑

上野の不忍池。その湖畔に「駅伝の歴史ここに始まる」の碑。日本最初の駅伝は1917(大正6)年の東海道駅伝徒歩競走とか。京都の三条大橋がスタートで、ゴールがここだった。3日かかったという。昼も夜も走り続けた過酷なレースだったらしい。この駅伝がきっかけで箱根駅伝が生まれたという。

Scene10

隅田公園少年野球場

発祥の地の碑。その大多数は、その跡地にぽつんと建っている。なんとか現役はないものだろうか。ネットや資料のなかから発見したのが、「日本で最初の少年野球場」である「隅田公園少年野球場」だった。隅田公園のなかにあるはず……と浅草から歩いたのだが、これが遠い。30分近く歩いてこのアーチが見えた。

Scene11

スカイツリー

アーチの脇に碑があった。1949(昭和24)年にできた「日本で最初の少年野球場」と書かれていた。碑文によると、王貞治氏もここで試合をしたという。アーチに刻まれたレリーフは王貞治氏? こぢんまりとした球場だが、応援スタンドも完備。東京スカイツリーめがけて打席でバットを振る感じです。

Scene12

看板

食べ物の発祥地や元祖は諸説あるものが多い。カレーパンもしかり。有力説の店をめざして地下鉄の森下駅で下車。A7出口の階段をのぼりはじめるとカレーの香り。そのにおいに導かれていくと……ありました。「カトレア」。看板には、「元祖カレーパン」。ご主人から、焼きたてを食べてください、といわれていた。いま午後3時……。

Scene13

カレーパン

列に並んで焼きたてゲット。1個220円。話は1927(昭和2)年にさかのぼる。「カトレア」は当時、「名花堂」という店名だった。そこで売り出された洋食パン。これが元祖……。近くの公園のベンチに座って食べてみた。たっぷりのカレーの具に、つい笑顔。帰り際、店の前を通ると列は3倍ほどの長さにのびていた。

Scene14

碑

下町を離れて銀座へ。「自動電話交換発祥之地」の碑を探す。1926(大正15)年当時、電話の自動交換は画期的なことだったらしい。かつて京橋電話局があった場所に立つホテルの壁にあるというのだが……。ホテルがない? オフィスビルになっていました。しかし碑はちゃんと残されて壁に。碑は大切に扱われていました。

Scene15

街灯

街灯探しに苦労した。「日本最初の電気街灯建設の地」という碑が、銀座2丁目の街灯に埋め込まれているという。しかし歩道脇には薄緑色の街灯がずらりと並び、いったいどれに碑が? 目を凝らして歩くと、前方にこげ茶色のやけに背が高い街灯が1本。これでした。当時の街灯を復元しているという。でも、通る人は誰も気づかない様子でした。

※取材期間:4月19日~4月20日

※価格等はすべて取材時のものです。

【次号予告】次回は東京の発祥地巡りの旅の後編。

発祥地の碑、見つけるコツは深呼吸? 東京再発見2

2019年に連載された台湾の秘境温泉の旅が本になりました。

台湾の秘湯迷走旅(双葉文庫)

温泉大国の台湾。日本人観光客にも人気が高い有名温泉のほか、地元の人でにぎわうローカル温泉、河原の野渓温泉、冷泉など種類も豊か。さらに超のつくような秘湯が谷底や山奥に隠れるようにある。著者は、水先案内人である台湾在住の温泉通と、日本から同行したカメラマンとともに、車で超秘湯をめざすことに。ところがそれは想像以上に過酷な温泉旅だった……。台湾の秘湯を巡る男三人の迷走旅、果たしてどうなるのか。体験紀行とともに、温泉案内「台湾百迷湯」収録。

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